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2017年6月 9日 (金)

【古文】『古本説話集』上 十八 樵夫事(ど素人古典答案)

間違いをお見つけの際はご指導下さい!


 今は昔、木こり、山守に斧(よき)をとられて、「わびし、心憂し」と思ひて、頬杖(つらつゑ)うちつきてをり。山守見て、「さるべき事を申せ。とらせむ」といひければ、

  あしきだになきはわりなき世の中によきをとられて我いかにせん

と詠みたりければ、山守、「返しせむ」と思ひて、「うう、うう」とうめきけれど、えせざりけり。さて、斧返しとらせてければ、うれしと思ひけりとぞ。
 人はただ歌をかまへて詠むべし、と見えたり。


【現代語訳】
 その昔、小さい斧を「ヨキ」と言ったのだったが、樵夫が、山の番人にそのヨキをとりあげられて、「がっかりだなあ、つらいなあ」と思って頬杖をついていた。山の番人がそれを見て、「それ相応なことをお言いなさいよ。そうしたら返してやるよ」と言ったところ、樵夫が

  悪しきことでさえ なければ割り切れない世の中なのに 
  良きヨキをとられちゃって どうすりゃいいのさこの私

と詠んだので、山の番人、返歌をしようと思って「うー、うー」と唸ったのだけど、出来ないでしまった。それでヨキを返してやったので、樵夫は喜ばしくありがたく思ったということだ。
 人はとにかく歌を心の準備をした上で詠むといいよ、と思われる話だ。


【語彙】
山守:山の番人
斧(よき):小型の斧
わび・し:形容詞シク活用(「侘ぶ」の形容詞化)終止形「がっかりする。やるせない。」
心憂し:形容詞ク活用 終止形 「つらい。心苦しい。」
うち:接頭語 「ちょっと、軽く
つき・て:自動詞カ行四段活用「つく」(現代語の「つく」とほぼ同じ意味)連用形 + 接助詞「て」(完了の助動詞「つ」の連用形の助詞化 。連用修飾で「・・・のありさまで」)
をり:自動詞ラ変(いる。ある。)
さるべき:然(さる)るべき(「然り」連体形+助動詞「べし」連体形)「相応な」「適当な」
申せ:他動詞サ変四段活用「まう・す」命令形 「言ふ」の丁寧語? 蔑む感じはないのかな?
けれ:けり(助動詞ラ変型 動詞の連用形につく 中世期には過去の事柄を示す)已然形 
ば:接助詞 (已然形につくときは順接の確定条件を示す。原因、理由、契機)
あしき:形容詞シク活用「あし」(「よし」の対義語、悪い。よくない。好ましくない。)連体形
だに:副助詞 ・・・でさえ(程度の軽い事柄をあげ、他にもっと重い事柄があることを暗示)
なき:形容詞ク活用(現代語の「ない」とほぼ同じ意)連体形
は:係助詞(上につく語をとりたてて示し、述語に関係づける。強調、対比など)
わりなき:形容詞ク活用 わりなし 連体形 どうにもならない。つらい。やむをえない。
いかに:形容動詞「いかなり」連用形の副詞的用法 
せ・ん:助動詞下二段型「す」(使役)連用形 +ん=む:助動詞四段型「む」終止形(推量、意志、願望。ここでは意志)
たり:助動詞ラ変型「たり」連用形 動作・作用が終わってその結果が存在・継続している意を表わす。
けれ・ば:(既出)
返(かへ)し:返事。返事の歌(返歌)。
と:格助詞 下にある動詞「言ふ」「思ふ」などの内容を表わす。
思ひ・て:他動詞四段活用「思ふ」連用形 + 接助詞「て」(既出)
うめき・けれ・ど:自動詞カ行四段活用「うめく」(ため息をつく。「う」は擬声語)連用形+けれ(既出)+ど(接助詞、逆接確定条件)
え・せ・ざり・けり:副詞「え」(下の打消の表現と呼応して不可能の意を表わす)+助動詞下二段型「す」連用形(既出)+助動詞特殊活用「ず」(打消の意)連用形+「けり」(既出)
さて:副詞(そのままで、その後) 接続詞(それから、そうして、それだから)
返し・とら・せ・て:他動詞サ行四段活用「かへす」(返却する)連用形 + 他動詞ラ行四段活用「とる」(手にする)未然形 + 助動詞下二段型「す」(使役)連用形 + て(既出)
けれ・ば:(既出)
うれし:形容詞シク活用(楽しく喜ばしい、ありがたい、かたじけない)終止形
とぞ:格助詞「と」+係助詞「ぞ」(・・・ということだ。)
ただ:副詞(とにかく、迷うことなく)
かまへ・て:他動詞ハ行下二段活用(準備する、用意する、前もって心構えをする、注意する、身構える)連用形 + 「て」(既出)
べし:助動詞ク型(そうするのがよい、そうなさい)終止形
と・見え:「と」(既出)+自動詞ヤ行下二段活用「見ゆ」(・・・と思われる)連用形
たり:(既出)


【テキスト】新日本古典文学大系42
【辞典】佐藤謙三・山田俊雄編『角川最新古語辞典』1995年増補版60版

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コメント

SNS経由で見て下さった日本古典の先生から、次のご指導をいただきました。

「『申せ』は明らかに謙譲語で、謙譲語の命令形は広い意味での自敬表現なので、(敬意は自分から自分で)明らかに身分の差を見せつける言葉です。」

疑問が解けました!
ありがとうございました!

投稿: | 2017年6月12日 (月) 23時00分

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