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2017年6月28日 (水)

【古文】おくのほそ道 1 旅立(ど素人古典答案)

・・・本当は中世の文章を読みたいところなのですが、都合でしばらく「おくのほそ道」でまいります。
誤りはご指導下さいませ!
見出しは岩波文庫によります。


序章(発端)の部分は(最終的に全部やれるようだったら)最後に回します。
テキストがたくさん出回っているので、読み仮名は基本的に省きます。
仮名遣いは岩波文庫に従います(底本は素竜清書本)が、傍注での修正は記しません。


(旅立)
 弥生も末の七日、明ぼのの空朧朧として、月は在明にて光おさまれる物から、不二の峰幽にみえて、上野谷中の花の梢、又いつかはと心ぼそし。むつましきかぎりは宵よりつどひて、舟に乗て送る。千じゆと云所にて船をあがれば、前途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻のちまたに離別の泪をそそぐ。

 行春や鳥啼魚の目は泪

 是を矢立の初として、行道なをすすまず。人々は途中に立ならびて、後かげのみゆる迄はと、見送なるべし。


【現代語訳】
三月も二十七日になって、日の出前の空がぼんやりかすみ、月は朝まだ残っていても光が失せているものだから、富士山がかすかに見えて、上野や谷中の桜は今度はいつ眺められるだろうかと心細い。親しい人はみんな前日の日暮がたから集まって、船に乗って隅田川を遡って送ってくれた。千住という所で船を降りて上陸したのだが、前途三千里のはるけさを思って胸がふさがり、どうせ虚仮の世間だとは言っても離別は悲しく涙がこぼれる。

 行春や鳥啼魚の目は泪

この句を旅の詠み初めに書き記したものの、足はさっぱり先に進まない。人々は途中に立ち並んで、後ろ姿が見える限りは、と、見送ってくれているようだ。


【語彙】
[(脚)=岩波文庫版脚注]
[(菅)=菅菰抄(岩波文庫板のp.153以下に収録)]
[(角)=角川文庫版脚注]

弥生も末の七日:(菅)三月廿七日なり。
明ぼの:日の出前の、空が明るくなった頃
朧朧:ぼんやりかすんでいるさま。薄明るいさま。(漢和辞典による。)
在明にて:月がまだ没しないまま夜が明けること+断定の助動詞「なり」またはナリ活用形容動詞連用形+接続助詞「て」、前者の場合「・・・という状態で。(院政期以後は、イコール「で」)」
光おさまれる物から:光+「をさまる(自動詞ラ変四段活用)」連体形(消える、なくなる) ご指導があり、「おさまれる」は四段の已然形(命令形説の人もいる)「おさまれ」に完了「り」(特殊な接続をする)の連体形+(近世の擬古文で誤って)「・・・ものだから」
不二の峰:富士山
幽に:かすかに。はっきり見えない様。ナリ活用形容動詞。
上野谷中の花の梢:(菅)此両処ニハ、分テ花木多ク遊覧ノ地ナリ。
又いつかは:「もう一度」+「いつ時分」+は(係助詞)、述語が省略されていると読みます。
心ぼそし:ク活用形容詞「心配だ、頼りない、心細い」終止形。
むつましき:シク活用形容詞「親しい、親密だ」連体形
かぎり:名詞。ものごとの範囲を示す。全部、すべて。
宵:よひ。名詞。日が暮れてからまだ間もないころ。初更。
より:格助詞。動作・作用の時間的空間的起点を示す。「・・・から」。
つどひて:つどふ(自動詞ハ行四段活用、集まる、寄り合う)連用形+接助詞(完了の助動詞「つ」の連用形の助詞化、「(・・・した)うえで」。
送る:他動詞ラ行四段活用「時を過ごす」終止形。〜角川文庫では「見送る」意味に取っている。
千じゆと云所:千住。現足立区。(菅)奥州往還最初ノ駅宿ナリ。
にて:格助詞。動作・作用の行なわれる場所を示す。
あがれば:自動詞ラ行四段活用「あがる(上陸する)」已然形+接助詞「ば(順接の確定条件)」
前途三千里のおもひ:(菅)此五字ハ、必ズ詩文中ノ一句ナルベシ。出書未考。(角)「李陵が胡に入りし三千里の道の思ひ」(東関紀行)など。前途は節用集にセンド。
幻のちまた:(菅)人生ノハカナキヲ喩フ。
そそぐ:古くは「そそく」。他動詞カ行四段活用「注ぎかける」終止形
行春や鳥啼魚の目は泪:(句の解釈は省きます。)
矢立の初:(脚)旅行吟の詠み初め。(角)に「旅行記のつけ初め」とあるのは、原文に馴染まないと思います。矢立=道中携帯の筆記用具。
行道:ゆくみち
なを:なほ。副詞。「依然として」
迄:副助詞「まで(至り及ぶ限度)」
なるべし:助動詞ラ変型「なり(推定)」+助動詞ク型「べし(推量)」・・・「なり」には断定を表すナリ型の助動詞もありますが、こちらは体言などにつくのであり、ここでは動詞「みおくる」の終止形についているので、推定伝聞の助動詞ととりました。


【テキスト】萩原恭男校注『おくのほそ道」岩波文庫 1979年
【参考本文】潁原・尾形訳注『おくのほそ道』角川ソフィア文庫 平成15年
【辞  典】佐藤謙三・山田俊雄編『角川最新古語辞典』1995年増補版60版

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