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2018年4月

2018年4月15日 (日)

【読書・鑑賞案内】バロックのビッグバンド〜合奏協奏曲〜レパートリーを広げるヒント(4)

現役生の皆様、ご入学ご進級はご無事に果たせましたでしょうか? 4年生は就活順調ですか?

なんか考えていたより小難しくなってしまったこともあり、今回の場合、そもそもコンチェルトって何なのよ、で躓いちゃったこともあり、あいだがだいぶ空きました。

盛りだくさんになりますが、YouTubeからいろいろ埋め込んでおきますので、下手な文章は無視して楽しんでもらえたら嬉しいです。

さて。

シンフォニーだのコンチェルトだのソナタだの、って、ルネサンスからバロックの時代に頻繁に使われるようになった言葉で、しかも今は器楽だと思っているこれらが、最初に歴史に現われた頃はみんな声楽だった(ソナタは違いますけど)、っていうのが、もう、涙なくしては語れない事実です。

結局、上の全部の言葉の由来や歴史に明快な答えを与えてくれるのは、1月13日に紹介した金沢正剛(まさかた)さんのご著書くらいでした。音楽史の本って、時代順に書くことが使命だったり、ある時代からあとしか詳しく書いてなかったり、ですから、おおきな視野を手っ取り早く得たいときには困るんですよね。
金澤さんの『新版 古楽のすすめ』(音楽之友社 オルフェ・ライブラリー 2,400円+消費税)は、18世紀までについてではありますけれど、もし古いヨーロッパ音楽の全体像をつかみたいと思っているのでしたら、いちばん良い本です。文庫本ではないので迷っていますが、外せない気がしますので、いずれ紹介します。

で、余計な前ふりをしてしまいましたけれど、今日のお題は「コンチェルト」だけです。
ただし、ピアノコンチェルトとかヴァイオリンコンチェルトみたいな、ソロコンチェルトの話はしません(なので、ヴィヴァルディはとりあげません)。歴史的な話も深入りしないようにしておきましょうね。

弦楽合奏にはロマン派の弦楽セレナーデなどにとても良い作品も豊富にあります(Oさんが大好きなチャイコフスキーのものもそうですね)が、私たちアマチュアのでは、初歩で演奏する教材に近い作品を除くと、バロック期の「合奏協奏曲 コンチェルト・グロッソ」と呼ばれるものが主なレパートリーになる傾向があります。
けれども案外、選ばれる作曲家はコレルリに限られるのではないでしょうか。しかも、コレルリの12曲ある合奏協奏曲のなかから、8作目のクリスマス・コンチェルトが演奏される以外、あと数作品が選ばれる程度で、全部やった、なんて人は、もしかしたらいないんじゃないか、と思います。

そもそもコンチェルトと呼ばれている曲種は、元は声楽と器楽が一緒になった合奏曲を指していたのだそうです。耳にしやすいものとしては、ガブリエリやモンテヴェルディに師事したドイツの大音楽家、ハインリヒ・シュッツによる「クライネ・ガイストリヒ・コンチェルト」があります。
シュッツの作品なども、器楽の、言ってみれば伴奏に対して、歌が華やかに活躍するのを聴き取れます。想像に過ぎませんが、コンチェルトで活躍する独奏は、そうした華やかな歌を引き継いだものだった気がします。ただ、シュッツの作品では2声の歌が掛け合ったり歩み寄ったりはしますが、歌と器楽の交代のようなものは特にないかと思います。

こうしたものをヴァイオリン2丁と鍵盤楽器でやってみるのも面白そうですね・・・合奏にならないか。

こういう掛け合いが、器楽同士の中で行われるようになり、それが「コンチェルト」という曲種になったのは、(先駆者はいて・・・合奏協奏曲の創始者はストラデッラだった、というのが通説です)コレルリのおかげです。そして、コレルリが書いたもので、出版されて残ったのは、「コンチェルト・グロッソ 合奏協奏曲」です。
元は歌の役割だった(?)華やかさは、コレルリのコンチェルトの中では、きらきらと現れるソロ(コンチェルティーノと呼ばれています)が果しています。それでもコレルリのコンチェルトの中でのソロは基本的に合奏(リピエーノと呼ばれています)と対等で、かつ独りだけではなかったりするので、私たちがコンチェルトの名前でイメージしがちな、独奏が主役、みたいなところはありません。ジャズのビッグバンドでサックスが、次にはトランペットが、と、スタンドプレイが繰り広げられる感触に似ているところがあります。
もう少し発展的ではありますが、デューク・エリントン “It don’t mean a thing” を聴いてみて下さい。

で、コレルリ。12番は、知ってます?
これ、途中で切れちゃうんですけど。

どうです?
え? 違いますか(笑)
シュッツの作品のほうが近いかな(笑)(笑)

名人のソロが入ってビックリ、みたいなのもいいんですけど、音楽でのコミュニケーションの点では、スタンドプレイが決してみんなから逸れていかないコンチェルト・グロッソのほうが、僕なんかは面白いと思っています。

それで、せっかくなので、コレルリ以外の作者にも興味を持ってもらえたらいいなあ、と願ってもいます。

有名な、といっても、古典音楽に触れ始めたばっかりの人ではまだ知らないかな、と思いますが、アレッサンドロ・スカルラッティという人にも素敵な合奏協奏曲があります。「六つの合奏協奏曲集」の最初のヘ短調などは、是非知っておいてもらいたい作品です。

コレルリが亡くなる3年前に生まれたジェミニアーニという人には、コレルリの有名なヴァイオリンソナタ「ラ・フォリア」をコンチェルト・グロッソに仕立てなおした作品もあります。

僕らが学生の頃には、ペルゴレージの合奏協奏曲と伝えられています、という面白い作品群もやったのでしたが、いまはそのほとんどがニセモノだと判明して、さてどんな作品だったか、楽譜も録音も見当たらず、分からなくなってしまいました。

その他に、今回探したら、ジュセッペ・サンマルティーニという人のコンチェルト・グロッソなんかも出てきました。有名なほうのサンマルティーニはジョヴァンニ・バティスタ・サンマルティーニさんで、ジュセッペさんはそのお兄さんだそうです。

有名な作者だとヘンデルにもコンチェルト・グロッソがありますが、ヘンデルは若い頃イタリアでも活躍していました。コンチェルト・グロッソは、イタリアが生んだ、かつイタリアを出なかったジャンルなのかなあ。

コンチェルト・グロッソではなく、弦楽のためのソナタなのですが、ストラヴィンスキーのバレー音楽『プルチネルラ』は伝ペルゴレージの作品を編曲したもので構成されています。そのオリジナル、これが実はペルゴレージの作品ではないものがほとんどなのですが、ドメニコ・ガロによるそのオリジナルなども、大変に良い曲です。(ただしヴィオラが含まれません。)

こちらが、ストラヴィンスキーによる編曲。ストラヴィンスキーの指揮した映像も残っているのですが、YouTubeでは見つけ損ねました。

いわゆる無名子の作品にも、こうした面白いものが豊富にあるはずです。
まずは作品を、それが気に入ったら楽譜を、どうぞ探してみて下さい。

ではでは、コンチェルトについては、こんなところで。

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