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2018年2月19日 (月)

楽しかった『初恋』フェスティバル

Hatsukoi 10月にお話しした、素敵なカンツォーネをお歌いになる青木純さん(http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/103bar-9422.html)、じつは日本歌曲を代表する作曲家、越谷達之助の直弟子です。
その作品を紹介する「越谷達之助記念会」主催の演奏会が今年2月18日に4回目を迎える、ということで、拝聴のご縁を得ました。

「『初恋』フェスティバル」と銘打ったこの会、青木さんを中心に、やはり越谷さんの薫陶をお受けになったという山季布枝さんがピアノをお弾きになって、豊富なキャリアを持つ素晴らしいお声のソプラノの新南田(しなだ)ゆりさん、高音域ばかりでなく低い声まで豊かなテノールの今福充さんが、後半に越谷歌曲の見事な歌唱を聴かせて下さる、充実したものでした。

そしてまた、『初恋」で埋められた前半が、また面白く楽しいものでした。
一般オーディションによって参加した3人が、それぞれご自分の初恋を打ち明けさせられたあとで、それぞれの思いを込めて『初恋』を歌ったのでした。
が、実はプログラムに『初恋』の楽譜が挟み込まれていて、個々のかたが歌う前に、お客全員で『初恋」を歌う、というビックリが、開幕早々用意されていたのでした。
素人であるお客向けに、ということではありましたが、全員で斉唱する準備として、越谷さんの直弟子である青木さんが、「越谷さんは、こう思って・考えて・歌う人に感じて欲しくて『初恋』の楽譜を書いたのだ」と、みんなに練習させる合間合間に曲のレクチャーをして下さったのでした。

これが、目から鱗でした!

その話を、少し綴ります。自分の言葉になっているのはお許し下さい。
間違いは多分あとからちゃんと指摘して頂けます。

『初恋』は、ご存知のように、石川啄木の短歌

  砂山の砂に腹這い初恋のいたみを遠く思い出づる日
  (仮名遣いと行替えがオリジナルでなくてすみません)

に付けられた歌曲です。

冒頭のピアノは、まず3小節が4分の5拍子で書かれています。
「これは、波が浜に寄せて来て、くだけるのを表わしている」
のだ、とのご説明。なので、記譜を正直に5拍子等拍で弾くのではないそうなのです。各小節の最後の付点四分音符は、波がくだけてひろがっていく余韻にならなければならない、という寸法。・・・でもまだここは歌ではありません。

歌にはいくつも四分休符がありますが、これがまた西洋的なものではない。
等拍の息継ぎ箇所ではなくて、言葉と言葉の間(あいだ)の、ちょっと観想的な「間(ま)」なのだ、とのこと。ですので、次の言葉の歌い出しまで、歌う人自身にとっては思いを溜めるだけ若干長い感触があることになります。

中間の部分は、これまた叙唱とも言うべきもので、表記は3拍子ですが、お話を受けて歌ってみると、やや自由に、ゆったり歌う感じです。
そして、これがいちばんのポイントでした。
「おもいいづるひ」は普通、ブレスなく一気に歌う方が多く、そういう録音も少なくないようです。
ところが、楽譜には「おもい」と「いづるひ」の間に、はっきり、息継ぎのマークが書かれています。
すなわち、「おもい」でブレスして、「いづるひ」は回想をこめて静かにゆるゆると消えていく歌い方になる、とのことなのです。これは越谷先生が名言なさっていた由。

歌の音型のここかしこに、なにを込めつつ歌うかのヒントがきちんとあって、そこは音型からハッキリわかる、そのままの自然さで歌えば良いことも、青木さんのお話からよくわかりました。

後半最初に、即興の巧みな作曲家、安藤由布樹さんのピアノで、今福さんはイタリア民謡〜オペラ風に、新南田さんはウィーン〜パリ風に、と、『初恋」を愉快なスタイルでお歌いになったのでしたが、しめくくりの青木さんは謡曲〜長唄〜演歌スタイルで面白可笑しくお歌いになりました。面白可笑しい中にも、この日最初にみんなにレクチャーなさったことが、さりげなく盛り込まれていて、笑いながらも納得しました。

前半も青木さんご指導の練習をしたあと会場全員で「初恋』を歌い、会の終わりにもまた全員で『初恋』を歌い、会場引き揚げギリギリまで時間を割いた最後にあがったアンコールになんとか答えて安藤さんと青木さんがまた『初恋』の締めくくりをお歌いになる、『初恋』づくしの充実した会でした。

駄文失礼。

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