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2018年1月15日 (月)

(ルーナ・キアーラ オペラ公演)プッチーニ三部作

Trittico_2 昨日(2018年1月14日)、誘われて、日暮里サニーホールへプッチーニ三部作の公演を観劇に伺いました。

喜劇の『ジャンニ・スキッキ』以外は、プッチーニならではの、どろどろの悲劇で、プッチーニ苦手な私は
「席についたらずっと目をつぶってるぞ」
と心に決めていたのでしたが・・・
ホールに入って、まあそうだろうとは予想していたものの、シンプルな舞台装置に思いがけず惹かれました。
上手に縄一本の洗濯干し場、下手に背もたれのないベンチ、そして手前にささやかな花壇がしつらえてあって、奥は三段ばかりの簡素なひな壇・・・客席が暗転してからは、このシンプルな装置で、あのどろどろ劇がどう演じられるのか、夢中で見ることになりました。
最初はこの装置で『外套』。
次に物干し場が消え、中央に十字架が浮き上がり、花が増えて『修道女アンジェリカ』。
最後が手前にベッド(ご存知の死体が横たわる)、奥中央に祭壇で『ジャンニ・スキッキ』。
最初の二つは、お芝居としてはインパクトが全般に薄かったけれど、装置が活きる良い演出でした。『ジャンニ・スキッキ』ご出演のかたたちが、演技はいちばんこなれていて、プッチーニ唯一のドタバタ喜劇を見事に演じていらっしゃいました。

主役級をなさった方々は専門家さんでしたが、ご出演の皆さんのプロフィールを見て驚いたのは、この公演をまとめた古河範子さん(『外套』と『アンジェリカ』でプリマドンナもなさいました)が立ち上げた団体「ルーナ・キアーラ」や、指揮をなさった澤木和彦さんのもとで、おそらくはプライヴェートに声楽を勉強なさっている、これまたおそらくは非専門の人たちが出演者の半分弱を占めていらして、しかも皆さんたいへん堂々とした歌いぶりだったことです。

出演者が40+2(指揮者とピアノのかた)名、それにスタッフさん(10人前後?)での運営なのでしょうね。おそらくは限られた予算のなかで、皆さんで力を合わせて作り上げた舞台、500名程度収容のホールを8割は埋めた集客は見事でしたが、1日きりの公演なのがもったいないなあ、仕方ないことなのかなあ、と思いながら時を過ごすこととなりました。

オペラは外国語で上演されるハンデもあり、いわゆる定小屋もなく、上演意欲があっても、この2つが主な理由で、継続上演は難しいものなのかも知れません。
伴奏もピアノ1台。今回の上演でのピアノはたいへんにダイナミックで技術も素晴らしかったのですけれど、せめてこれに弦楽五重奏くらいが加わったら、それだけで彩りが増すだろうになあ、とも思いました。ただしプッチーニの三部作は元のオーケストレーションが基本の二管編成にトロンボーンはバスまで含め4本、5種類の打楽器にハープ他5種の特殊楽器。これをピアノと弦楽五重奏にアレンジするのは至難の業です。

ひとつには、大編成ではない、たとえば『アルルの女』が舞台で演じられたときのビゼーがとった編成くらい(*)が、オーケストラとはいわないまでも、バンドで入るようだったら、音響面での舞台装置が出来るようにも思うのです。ますはそういう小編成で済む作品が、近代以降のものにはない。せめて歌舞伎のような題材でないとお客の関心も引きにくいでしょうから、これがまずネックかな。

そしてもうひとつには言葉。聴くときに耳を惹き付けて離さない響きを、となると、やはり翻訳ではダメだと思うのです。ベアトリ姐ちゃん(*)では続かない。

なにか、オペラも連続興行としてやれる背景作りというものを、作曲家さんでも舞台屋さん(変な言いかた!)でも、やってみられるくらいの面白い人が出て来ないかしら。。。

・・・と、拝聴しつつ頭を駆け巡った夢想はひたすら脱線方向に走ったのでした。

そうだ、私は後ろの方の席にいたのでしたが、右前方に映写されていた字幕が、殆ど読み取れませんでした。4行ずつにまとめられていて、ああ、とても気を使って作り上げたのだなあ、と思いはしたのでしたが、2行くらいの大きな字にして下さったら嬉しかったかも知れません。でも制作のお手間とコストがかなり大きくなるかもなあ。

なんかなんか、いろいろいろいろ胸が膨らんでしまったので、駄弁が長くなりました。

各作品で心に残った歌手の皆さん。
『外套』〜ミケーレをなさったイタリア人のカリオラ・グイードさんは、イタリア人ってやっぱりイタリアンよね、を存分に味合わせてくれました。親方を歌った横山広泰さん、最後は凄みが利いていました。
『修道女アンジェリカ』〜公爵夫人をなさった高橋未来子(みきこ)さん、立ち居振る舞いも歌も堂々となさっていて、あとでロビーで「あの人ホントは若いのよ」「えぇ? そうなの?」と喋り合ってるおばちゃんたちがいたのが愉快でした。
『ジャンニ・スキッキ』は、まずシモーネの藤原啓さんが「老人になった(水戸黄門の家来の)格さん」みたいで好きでした(どういう喩え?)。女性陣も素晴らしかったですが、ツィータをなさった米谷朋子さんの活動的な歌と動きがとりわけ印象深く思いました。
ジャンニ・スキッキをなさった別府真也さんの貫禄が圧倒的でした。
どういうかたなんだろう、と、帰宅してから思わず調べてしまいました。
こちらでページを作られていました。

https://beppushinya.jimdo.com/

ご活躍が楽しみなかたのおひとりになりました。

私が印象に残ったかたは他にも何人もいらっしゃるのですが、ますます駄弁が尽きなくなりますので、これくらいにします。

ご出演・一緒に舞台を作られた皆様が、これからますます豊かな活動を繰り広げて下さることを祈念しております。

*ドーデの戯曲『アルルの女』の舞台音楽でビゼーのとった編成は、フルート1、オーボエ1、クラリネット1、サキソフォーン1、ファゴット1、ホルン1、トランペット1、トロンボーン1、ティンパニ、打楽器持ち替え、弦五部にハープ。最小人数で16人だから・・・ちょっと人数が多いかなあ。

*ベアトリ姐ちゃん関連
https://youtu.be/jJwc2pWOn9w (日本語)
https://youtu.be/uIcpDyqPQgQ  (ドイツ語)

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