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2018年1月20日 (土)

【読書・鑑賞案内】「ルネサンス宗教曲集」ウェストミンスター大聖堂聖歌隊

Miserere_2 さて、中世〜バロックの音楽作品から、いくつかご紹介して行きたいと思います。

皆川さんの『バロック音楽』には、それまでの音楽が、18世紀以降の和声主体の音楽とは違って、旋律(というより線)主体であったことを示す模式図がありました(p.58をもう一度めくって下さいね)。

ほんとうにそうなのか、耳で確かめるには、中世〜バロック期の作品をまとめて聴けると効率がいいんじゃないかな、と思いました。
が、世の中に出回っている「バロック音楽名曲集」の類いだと、みんなに知られ過ぎている曲ばかりが多くて、初めてではない人には刺激が少ないんですよね。
じゃあ、ちょっとは刺激になるものを、と探すと、どうしても個別の作者や楽派や、狭い時期のものばかりになってしまいます。

どうしようかな、と悩んでいたら、これを見つけました。

『アレグリ:ミゼレーレ/ルネサンス宗教曲集』
(ウェストミンスター大聖堂聖歌隊 DECCA PROC-1352  1,200円+消費税)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00RWA9BQU/
http://tower.jp/item/3326225/

価格も安く、収録曲の作曲者が幅広い。作曲者と曲名(日本語訳、CD通り)を列挙しますと、

パレストリーナ     (1525頃〜1594)
   「神に歓喜せよ」・「罪を犯す我」・「汝はペテロなり」
ヴィクトリア      (1548〜1611)
   「十字架につけられ」
ジョヴァンニ・ガブリエリ(1557〜1612)
   「シオンよ、賛えよ」
モンテヴェルディ    (1567〜1643)
   「おんみを崇めん、キリストよ」・「主に向かいて新しき歌を歌え」
アレグリ        (1582〜1652)
   「ミゼレーレ(我を憐れみたまえ)」
カヴァッリ       (1602〜1676)
   「サルヴェ・レジーナ」・・・なんでこれだけ日本語訳じゃないんだ?(笑)
    対訳では「ようこそ女王」となっています。
    ごきげんよう聖母マリア様、というニュアンスです。
ロッティ        (1667〜1740)
   「神に歓呼せよ」

タイトルには「ルネサンス」とあるのですけれど、実はルネサンス末期からバロックほぼ全時期の、イタリアの重要作曲家(ヴィクトリアはスペインですけれど)を網羅しています。
(ルネサンスとされる時期の作品は次回ご紹介します。)

宗教曲を聴く便利さは、言葉と音楽の関係に耳を傾けたいとき、ラテン語を知ってさえいれば済むところにあります。・・・でもラテン語って難しい!
このCDなら、日本での発行なので、歌詞対訳がついています。
まずは、ラテン語の雰囲気だけでも味わって下さればよいです。・・・これ、たとえばフランス語のバロックのシャンソンとかだと、ずいぶん雰囲気が違うのです。

でも、まずは、収録された曲の作られた、ほぼ200年の幅の中で、音楽がどう変わって行ったか・・・カトリックの式典用のものに限られてはいますが・・・、耳ではっきり確かめ、新鮮に感じてもらえれば、嬉しいです。

すべて、イタリアバロックの重要作曲家ですが・・・
二人だけはこの機会にぜひ名前を覚えて下さい。
パレストリーナと、モンテヴェルディです。

ルネッサンス最末期とされるパレストリーナですが、初めて聴くと、音楽の線がとてもすっきりしていて、言葉がわかりやすく聞こえるのに驚きます。でも、「和声の音楽」ではないところが、パレストリーナの名匠たるゆえんです。

パレストリーナに関係しては、次のような伝説があります(史実ではありません)。
強硬な聖職者たちから、複雑なポリフォニー音楽はたいへん分かりにくい、それでは意味がないから、今後一切教会から追放すべきだ、聖歌はひとつのメロディーだけでシンプルに歌われるべきだ、との意見が出されました。音楽好きの枢機卿たちはこの意見に困ってしまって、パレストリーナに「なんとかならないか」と頼み込みました。パレストリーナは粉骨砕身、ひとつのミサ曲を作り上げ、提出しました。その演奏を聴いた強硬派は、ポリフォニーであっても分かりやすく、しかも深い信仰心を呼び起こす、立派な作品が出来るものなのだ、と、以後は納得したそうな。

収録作品のうちの、「汝はペテロなり」は、次のリンクでYouTubeで聞くことが出来ます(演奏者は違います)ので、興味があったらクリックしてみて下さい。聴くときに、最初の方で、Tu es Petrus(トゥ エス ペトルス)という言葉がどれだけはっきり聞こえるかに、ぜひ耳を傾けて頂ければと思います。
tu=You
es=are
だと思って下されば、意味も分かりますよね。

https://youtu.be/H69CQqh6d5A

モンテヴェルディはバロックの最初の花を咲かせた人と言っても良いと思います。オペラに名作を残しただけあって(「オルフェオ」・「ウリッセの帰還」・「ポッペーアの戴冠」)、本CDに収められた掌編も、たいへんにドラマチックです。
モンテヴェルディは可能ならまた別にとりあげてご紹介したいと思っています。

今回はこれ以上細かいことは言いませんので、まず触れてみて下さったら嬉しいです。

収録されている中で、いちばん有名なのは、アレグリの「ミゼレーレ」です。
なぜ有名なのかと言いますと、まず、この曲はヴァチカンの門外不出の秘曲だったことによります。そして、この秘曲を、1770年にローマを訪れた14歳のモーツァルトが、一度聴いただけで完全に楽譜に書き取ってしまった、と騒がれた事件があったためです。実際に聴いてもらえればわかるとおり、この作品、一度聴いて暗記するなんて、私たちにはおよそ不可能なものです! いや、イタリアに行ったモーツァルトが指導を乞うたマルティーニ師から、あらかじめ密かに教わったんだ、とかいう話もどこかにあった気がしますが、どうだったのでしょうね。

次回、ルネサンスの作品をひとつ使って、線の音楽の面白さを、少しだけ具体的に見て頂ければと思っております。

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