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2017年3月 3日 (金)

【音楽史読書】1.シュメルの神話のなかの音楽(2)

まずは、この前引いたシュメルの神話の中の、音楽に言い及んだ文を眺めて、そこから見えてくるもの・こないものを、簡単にまとめてみます。(文そのものは前回をご覧下さい。)

シュメルの人たちの頃から1000年あとを扱ったものになりますが、小板橋又久『古代オリエントの音楽 ウガリトの音楽文化に関する一考察』(以下、『考察』)では、分析に際して、章立てを「音楽家」・「歌唱形態」・「楽器」・「記譜法」・「歌のジャンル」・「音楽の宗教的機能」としています。
先に『集成』から拾い出した文では、材料も限られますけれども、『考察』が章立てしたようなことを、シュメルについてもある程度まとめることは出来ます。ただし、歌う人や楽器を奏した人については、「音楽家」とは言わず【演者・奏者】とし、「音楽の宗教的機能」を【奏楽の場】と捉えて、ひとまとめにします。「歌唱形態」と「記譜法」と「歌のジャンル」は、ひとまとめにして【演奏スタイル】とします。
注釈から拾った分は含めません。それらは具体的なことに立ち入るヒントになるものでもあり、今回のまとめを元にしながら、あとで考えることとします。


引用文からのまとめは、各括りでは、登場順に、以下のようになります。


【演者・奏者と奏楽の場】
・楽手[宗教儀式等の際の聖歌隊] (01)
・彼女(女神イナンナ)の使者は・玉座の間で (03) 〜女性の神官にあたるか?(ジャン・ポテロ『最古の宗教』りぶらりあ選書 を参照)—>(02)・(05)
・ガラトゥル[祭儀で聖歌を歌う人] (04)
・歌を唄う人、私のシャラ (06)
・牧人[イナンナの夫の牧神ドゥムジ]に・彼女(女神イナンナ)の前で (07)
・主 (12)
・人々 (17)
・(シュルギ王)(26)
・歌い手 (29)・(30)・(31)・(32)
・ガラ神官[儀式で聖歌を歌う神官] (32)
・フルート奏者 (32)


【楽器】
・太鼓 (02)・(03)・(16)・(17)・(25)
・ティギ太鼓 (26)
・フルート (07)
・笛 (07)
・リラ (13) ・(28)
 〜 『(シュメールの)国土のドラゴン』(あるリラの固有名詞)=大きな音を立てる有名な(楽器)=<彼とともに熟考する>[神託を与える]もの
・タンバリン (17)・(25)
・ティンパニー (17)・(25)
・サギッダ[「長い絃楽器?」] (21) 〜ただし、歌唱の様式のようなものではないか、との推測をしている記述もある(ポテロ『最古の宗教』)。
・サガルラ[絃楽器の一つ。ここでそれが演奏されたのであろう。 (23) 〜~ただし、歌唱の様式のようなものではないか、との推測をしている記述もある(ポテロ『最古の宗教』)。


【演奏スタイル】
・(葬送)曲 (01)
・讃歌 (08)
・物語を交互に歌い合う (09)
・返し歌 (10 )〜〔その〕サギッダに対する返し歌 (22)
・哀歌 (11) ・(12)
・悲歌 (14)・(15) 〜まるで浄らかな太鼓でもあるかのように、彼女は自分の胸を打ちたたき、「ああ、私の町よ!」と叫ぶ。(16)
・(楽し気な)歌 (18)
・嘆きの歌 (18) ・(19)
・ティンパニー歌 (19)・(20)
・ウルビ[サガルラを受けて内容をまとめて強調する意?] (24)〜[神々の讃歌に多い類]
・<小さな>唄 (27)
・彼の<顫音(せんおん)> (29)〜「顫音」は、トレモロもしくはトリルの意味。


各項目について、これだけで気がつくことをコメントしておきましょう。

『集成』は宗教に関わる讃歌等のみ載せているため、【演者・奏者】には神官もしくは祭儀の関係者が目立ちますし、【奏楽の場】も、唯一具体的に記されていた「玉座の間」の玉座とは女神のものですので、祭祀の場です。


【楽器】では、フルート、タンバリン、ティンパニーの訳語が当てられているものは、実際には近代その名で呼ばれるそれぞれの楽器とは機能の異なるものだったのではないかと思います。
フルートは「笛」と称しているものが縦笛なので、横笛を区別するためにあてた訳語なのではないかと推測しています。→ハズレでした(縦笛のようです)。
タンバリンは、なにかしら類似の枠太鼓だったのではないでしょうか。現在その名で呼ばれるものには枠に鈴がありますが、シュメルの枠太鼓が鈴付きだったものかどうか、分かりません。
ティンパニーは、太鼓がある程度小型のものを指しているのであれば、やはりそれとの対比で大型のものを指しているのではないかと推測しています。古代オリエント博物館編『シルクロードの響き』(山川出版社 2002年)には、「膜鳴楽器には小型の枠太鼓や大型の両面太鼓があった」と述べられています(p.7)が、この後者ではないかと思っています(シュメル語との対比が出来ない以上、確かではありません)。→これも違うようです。楽器のまとめをご覧下さいまし。
これらについては、照合できる図像を探してみたいと思います。→探してみました。
『集成』の注で絃楽器とされているサギッダ・サガルラは、楽器のことではなく歌唱の様式をさすものかもしれず、実態が分かりません。リュートの祖型を奏でる人物像は出土例がありますので、あるいはそうしたものを弾きながら歌う、等のことを指しているものでしょうか。
なお、DSRミュージックのサイトに次の記述があります。(http://dsr.nii.ac.jp/music/02persian.html
「前3千年紀の初期王朝時代のウルの王墓(前2600)から楽器の実物が発掘された。二張の弓形ハープ、八台の牛頭の飾りをもつリラ、八本の銀製の管の断片(その中には明らかに指孔をうがったものもある)、そして一台の舟底形共鳴胴をもつリラと青銅のシンバルの残欠などである。ハープとリラの一部は復元されてロンドンの大英博物館(「王妃のハープ」「王妃のリラ」と名づけられている)や、フィラデルフィアのペンシルヴァニア大学博物館、そしてバグダードのイラク博物館に展示されている。きらびやかな装飾がほどこされた見事な楽器であり、奏楽がいかに重要な役割を担っていたか想像される。楽器は単に奏楽のみならず、祭祀のための法器でもあった。王墓からは何十人もの殉死者の遺骨が発見され、その中の数人は息絶えるまで楽器を奏でつづけていた。」


【演奏スタイル】のなかで、ジャンルを指すものではない「交互に歌い合う」(09)は、後日、注部分から引いたものを考え合わせ、テキスト(訳文ではありますが)から少し具体的に見たいと考えています。読み取れる何かがあればいいなと思います。
悲歌を歌う「自分の胸を打ちたた」く姿(16)、「顫音(せんおん)」(29)が、当時の歌い方・演じ方を僅かに垣間見せてくれる点、面白いと感じています。


このあと、楽器と演奏スタイルを中心に、具体像を少し見ておくところまでやっておきたいと思います。

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