« 飯森範親・山形交響楽団のモーツァルト【日本のオーケストラのCDを聞く】 | トップページ | 【大井浩明さん】12月13日「大地の歌」・12月20日「篠原眞全ピアノ作品」(POC第24回公演) »

2015年12月 5日 (土)

山田和樹・仙台フィル:ラフマニノフ交響曲第2番【日本のオーケストラのCDを聞く】

まいどのばかばなしでございます。

山形交響楽団の名演を拝聴しましたので、あ、仙台はどうなっているだろうか、と、あいなりました。

仙台フィルハーモニー管弦楽団の前身、宮城フィルハーモニー管弦楽団がプロになったばかりの頃、高校生で入れてもらっていた地元の若もんアマチュアオーケストラで、宮フィルの初期メンバーのかた数人が教えたり手伝ったりして下さって、お世話になったのでした(ヴァイオリンの山本先生お元気かしら)。大学生になってからは、アルバイトの一人として演奏旅行についていったこともありました。・・・学生なのにバイト代がしっかり源泉徴収されて、がっかりした記憶があります(笑)。瑞々しい小山実稚恵さんによるショパンのピアノ協奏曲第1番を伴奏する端っこにいて、あとはベートーヴェンの第5をやったのだったな。序曲は覚えていません。
・・・と、個人的にそんな思い出があります。

仙台フィルと少し前に共演なさったかたから
「仙台フィルうまいですよ」
と聞かされたことがあって、元地元民として密かに狂喜していたのですが、仙台を離れて久しいので、仙台フィルになってからの音を知りませんでした。

ショップをあさったら、『つながれ心、つながれ力』(fontec FOCD9524)と銘打ったCDが出ていました。2011年の東日本大震災で自らも壊滅的な打撃を受けた仙台フィルが、震災直後の3月26日に懸命の臨時演奏会を催し、それを契機に5月15日までになんと、メンバーさんやそのお仲間で125回もの復興コンサートを行なったのだそうですが・・・噂は耳にしていたものの、そこまでとはCDのリーフレットを読むまで知りませんでした。そうやって被災地の人たちとお互いを励ましあってきた仙台フィルが、その売上を震災復興の助けに、と出したのが、この『つながれ心、つながれ力』だったようです。これも知らなかった! 元地元民失格だわ(泣)。
このCD、内容は2006年〜2010年の演奏です。
最初の収録曲、ベートーヴェンの交響曲第8番(小泉和裕さん指揮、2007年)の、初めの音がなるなり、びっくり仰天してしまいました。なんて威勢がいいんだ!
続くシューマンの交響曲第4番(山下一史さん指揮、2010年)も、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」(パスカル・ヴェロさん指揮、2006年)も、わりと情緒連綿な気がするのだけれど、なんでか聴いたあと気分がさっぱりする。

これだったら、後期ロマン派あたりが、たぶんダレたりしなくって、ぴったんこなんじゃないかなあ。
そういうのはないのかなあ、と思って探したら、これが、あったのでした。R.シュトラウスもあるんですけどね。

51nzqlrjkbl_sy355_ 選んだのは、ラフマニノフの交響曲第2番。

2013年9月のライヴで、指揮は山田和樹さん。EXTON OVCL-00532
僕らが学生の頃までは、ヤマカズと言えば山田一雄だったんですが、いまやヤマカズと言えば山田和樹なんですよね。

人気作ながら、メランコリックでムードミュージック的だ、と、渋好みのクラシックファンからは格落ち扱いされることもあるラフマニノフ作品。交響曲第2番はピアノ協奏曲第2番とともに、そう見られる代表的なものではないかと思います。交響曲第2番の演奏には、たしかに甘ったるいものが多い気もします。わりとがっちり出来た曲だと思うんだけどなあ・・・
何を隠そう、僕はこの交響曲は大好なのですが、しかし演奏の甘ったるいのはいやでした。それで、初のノーカット演奏録音として名高いアンドレ・プレヴィン−ロンドン交響楽団の、情に流されない絵画的な美しさのあるものだけを偏愛して聴いてきました。
ですから、今回、山田和樹さん指揮のものに手を出すのには、ちょっとためらいもありました。

いやいや。ためらいっぱなしでなくて、よかったのでした。

うーむ、日本人の求める、日本人らしい緻密さって、こういうものなのではないだろうか、と、国粋主義的陶酔に陥らせて頂きました。プラスの方の期待を遥かに超えて、山田さんの優れた資質もだけれど、仙台フィルの特性もまた充分に生きた、スゴい演奏なんじゃないかな。

とにかく『つながれ心、つながれ力』の各演奏がそうだったのと同じように、いや、いっそう爆発力を増して、ラフマニノフでの仙台フィルの演奏は、きっぱりとしている。それでいて、たっぷりとした情緒も供えている、という不思議さがある。
でもって、これは山田さんのしわざなんでしょうか、情緒的きっぱりの嵐の中で、とくに弦楽器の音像が細かいところまで解剖学的な浮き出しかたをしている。飯守・都響の「タンホイザー」みたいな正確さとはまた違って、なんと言いますか、音楽という肉体の動脈が浮き出している感じ・・・なんて表現だと気持ち悪いのですが、それは僕の言い方がよろしくないのであって、動脈の浮き出る運動性が、60分間もの長時間作品にイキイキさを貫かせ、聴き手を飽きさせない。

構成を主眼にしたプレヴィンの行き方は、実は高名なロンドン響盤以外にロイヤルフィルを指揮した録音でも確認出来るのですが、ああ同じプレヴィンだ、と分かっても、オーケストラの実力の差なのか、ロンドン響の演奏にあった重厚感が消えてしまっているのです。似た例はルドルフ・ケンペによるベートーヴェン「エロイカ」でもあって、ベルリンフィルとミュンヘンフィルとを比べると、指揮者のヴィジョンは確実に同じなのだけれど、仕上がってくる響きの厚みがまったく違っています。・・・ちょっと脱線なんですけど。
で、山田さんが他のオーケストラでラフマニノフの第2交響曲をやっても、同じようなことになるのではないかしらん? それが仙台フィルとのより優れた演奏になってしまったら、僕はちょっと妬けるだろうと思います。

でも、心配無用だとも思っています。
各楽章での、仙台フィルメンバーの音の勢いや色の出しかたの本気度、取り組む技術の確かさが、浮き出た動脈の各所から透けて見えるからです。
そこまで山田さんの意図なのかどうかは分かりませんが、前半の2つの楽章では、以前聴いたことのあるシベリアの民族音楽で響いてくるようなぶんぶんした音が、これでもか、これでもか、と鳴る。
そしてこれまた分かりませんが、こんな音を実現してみる奏者さんに、民族音楽じゃこんなふうに音出してるんだぜ〜、みたいな見識の深さと豊かな再現力がなければ、ここまで耳を惹き付ける音楽作りは不可能なはずです。
第3楽章はたるまない美しさですし、第4楽章は熱狂的に聞かせながら最後まで緻密さを崩さないアンサンブルが見事です。終結に向かってオクターヴで重ねた旋律が動きも音程もピッタリ寄り添ったものでありながら熱いというのは、ちょっと信じがたい離れ業だわ。

先に「日本人の求める、日本人らしい緻密さ」を演奏に感じる、と言ったのは、熱も精一杯こめるけれど、その熱をどうやったら発することが出来るか、が、ある意味数学的とも言える突き詰めかたをせずにはいられないところが日本人的なのではないか、それがここに体現されていると感じる、という、まあ独善的な素人解釈です。
そんなちっぽけな国粋主義・自民族主義は、実際には、この演奏はまったく乗り越えているのですから、僕の耳は、たぶん偏狭なのです。

この交響曲をお好きなかたにも、いままで嫌いだったかたにも、山田・仙フィルであらためてお聴きになれば、作品の評価をまた変えざるを得ないんじゃないかな。。。
聴いたご感想を是非教えて頂きたいと思います。いろんな人にこれがどう聴かれるのか、に、とても興味があります。

Amazon http://www.amazon.co.jp/dp/B00IWYMREI
公式サイトのCDページ https://www.sendaiphil.jp/goods

|

« 飯森範親・山形交響楽団のモーツァルト【日本のオーケストラのCDを聞く】 | トップページ | 【大井浩明さん】12月13日「大地の歌」・12月20日「篠原眞全ピアノ作品」(POC第24回公演) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 山田和樹・仙台フィル:ラフマニノフ交響曲第2番【日本のオーケストラのCDを聞く】:

« 飯森範親・山形交響楽団のモーツァルト【日本のオーケストラのCDを聞く】 | トップページ | 【大井浩明さん】12月13日「大地の歌」・12月20日「篠原眞全ピアノ作品」(POC第24回公演) »