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2015年11月28日 (土)

飯森範親・山形交響楽団のモーツァルト【日本のオーケストラのCDを聞く】

日本のオーケストラのCDを探すと、案外多いのがモーツァルトなんですね。
日本人のモーツァルト好きが反映されているのかな。
それも、1970〜80年代と2000年代のが入り交じって出ている。

まだ数少ないものを聴いただけですが、新旧で演奏の仕方が大きく違う。
前世紀になってしまった演奏についてはまた別途にしますけれど、僕が子供の頃はみんなこうだったな、と感じる、どっしりとした響きです。
今世紀に入ってからの新しい方は、「古楽」の影響が大きくて、軽やかです。
オーケストラの演奏では、モーツァルトがいちばん大きな変化をとげているようです。

Mozart1bigbigthumb380xauto234 飯森範親さん指揮、山形交響楽団によるモーツァルトは、とりわけ注目すべきものでした。
2007年になされた、交響曲『パリ』・変ホ長調(39番)・初期のヘ長調交響曲のライヴ録音です。
もっと早く知るべきでした。

ここでなされている演奏の方法について、CDに寄せられた萩谷由喜子さんの文章に述べられていますので、そこから引きますと、
「楽器は基本的に現代楽器ですが、ホルンとトランペット(中略)に時代楽器が使用可能となったほか、弦も管もヴィブラートをほぼ排してピュアな音で勝負する(後略)」
もので、山響メンバーのかたの集合写真を見ると、たしかにナチュラルホルンや長管トランペットを手になさっていたり、ティンパニも革張りの小型のものだったりしています。

これで「モーツァルト存命当時の響きを可能な限り再現する」コンセプトだったそうなのですが、響いてくる音は、良い意味で・・・「良い意味で」というのは、くどいほどにでも強調しておかなければなりません!・・・ちょっと違うんじゃないか、との印象を与えてくれました。

楽器の選択やノンヴィブラートは、たしかに「モーツァルト存命当時」を彷彿とさせるものなのでしょう。けれども、この点で先駆的なホグウッドによる全集や、もう少しソフトなピノックの全集が醸し出している古雅な音色とは、飯森・山響の作り出した世界は、全然違う。あるいは、モダン楽器でノンヴィブラートの音響を徹底的に追及したノリントンの演奏の持つ緊迫感とも、一線を画している。
内容のしっかりした演奏なので、これらの差は、飯森・山響が素晴らしい個性の輝きを放つ大きな要因となっています。

古楽やノリントン方式とは、どう違うのか。

このCDの演奏が、あくまでも「基本的には現代(モダン)楽器による現代の演奏」になっている、というところかと思います。・・・これは山響が公式にうたっているコンセプトに対する素直な聞き方ではないかもしれませんけれど(そして山響の指揮者には鈴木秀美さんもいらっしゃるので仰天したのですけれど!)、こんなふうに聴くのも決して悪いことではないはずです。

なぜなら、山響の演奏では、とくに現代の弦楽器のノンヴィブラートが、古楽器に比べるといかにつやつやした響きを放つか、が、理屈抜きの素直さで十分に発散してくるのだから。
ノリントンの方法も、僕は決して嫌いではないのですが、もう少し約束事が多く聞こえるのです。
飯森・山響ペアのほうが、はるかに素直だと思います。

とくに弦楽器は、現代奏者が現代奏法のまま、ただヴィブラートをやめている。ただし、出て来る音色が美しく良く響く、ということには細心の注意を払っている。左手で言えば、どうやって指に体重を自然に乗せるか、を、奏者の方々がほんとうによく心得ていらっしゃる気がします。右手なら、弓はやはりモダン弓の長さを存分に活かした全弓たっぷりの奏法のように聞こえます。
モダンの楽器が内在させている素の美しい音が、こんなにちゃんと伝わって来るのは、珍しいことではないかと思います。

少人数の山響(モーツァルト演奏での編成をCDの写真で数えると、この場合は40人もいらっしゃらないようですね、弦楽器は20人いらっしゃらない?)では、こんな弦楽器に管楽器が古楽器であることがまた、たぶん思いがけず、優れた効果を発揮しているのです。管楽器はメカニズムが古い方が、音が柔らかいからなのでしょうね・・・違っているのでしたらご教示頂ければ有り難いですけれど、僕はそう感じました。

モダンと古楽器の入り交じった編成でありながら、演奏はけっして折衷的ではありません。
バランスがよく整った、のびのびと明るい仕上がりです。
これはCDで聴いて頂ければ絶対はっきり分かることです。

ちょっとでも多くの、同好のお友達に聴いて頂きたい、大好きになって惚れ込んでしまった1枚になりました。とりわけ「パリ」が見事です。

蛇足ですが、山形交響楽団は、たしか北日本では最も古いプロオーケストラのひとつではなかったかと思います。
ネットで見ましたら、1972年創立だそうです。
隣県に育ちながら、僕は拝聴したことがありませんでした。
今回お店でCDを発見して拝聴し、そのことがとても悔やまれました。
メンバー表に載っているかたは53人(ステマネさん、ライブラリアンさんを含む)、と、小ぶりなのですね。CDのラインナップにブルックナーも含まれていて、興味を引かれています。
いずれ幸いに実際に拝聴する機会を、なんとかもてたらいいなあ。

YSOライヴ モーツァルトシリーズ Vol.1
交響曲第31番「パリ」(第1稿のアンダンテを含む)・交響曲第39番・交響曲へ長調k>Anh.223(19a)、Ave verum corpus
(合唱は、山響アマデウスコア)
2007年8月〜10月収録 ovcx-00045
http://www.amazon.co.jp/dp/B001IVU79E/

飯森・山響のCD http://www.yamakyo.or.jp/goods/

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