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2015年2月 8日 (日)

「能の学校」授業ノート〜1時限目「能面の取扱い説明書」

山中迓晶(がしょう、ガ=シンニュウ+牙)先生の「能の学校」第1時限めに出席しました。
先生お手持ちの能面を授業の題材になさって、能の面白さの入口を面白く教えて下さって、とても楽しく授業を受けてまいりました。
へえ、こんなに面白いものなのだ、と、さまざま発見も感心もし、有意義な2時間を過ごさせていただき、たいへん感謝しております!
なるべく皆勤したいと思っています。楽隊の皆様、どうぞ、大目に見てやって下さい!
きっとお役に立つことを勉強してまいります!

悪い生徒で筆記用具を持参しなかったので、思い出し思い出しノートを付けます。
・・・間違ってるところもあるかもしれません。1507737_1577131209167940_3232374954

・面=めん、ではなく、おもて。「つける」と言う。人の顔と同じ。その「人」を身につける。
・(あとからのお話だったけれど)面を上向きにすれば(てらせば)笑い、下向きにすれば(くもらせれば)泣く、と言われますけれど、上を向ければ上を向くだけ、下を向ければ下を向くだけ、というのが本当のところでしょう。面の表情はあくまで鍛錬を積んだ能楽師がどう演技するかで生まれるのです、とのこと。観世寿夫師の文章を教材で配って下さいましたが、そんな趣旨のことがきりっと綴られているのでした。
「・・・能面は無表情ではないのだ。手に取ってみればいかに無表情でも、名手によって舞台にかけられたとき、その豊かな表情に驚かされる筈である。だがその豊かな表情に関して私はこう思う。面自体がたくさんの表情を持っているわけではない。・・・面の角度と光りとの関係も勿論作用するであろうが、それだけでなく、舞台上の行為のすべてが一つに溶け合って喜びなり哀しみなりを表出するのではないかと。」

・女面=小面・小姫・孫次郎・増女
 小面は髪がすっきり三本かかる。キューティクルがしっかりあるから。丸顔だがメタボにあらず(浅田真央ちゃんだって丸顔だが太っている訳ではない)。口元が上に上がって微笑んでいる。
 増女になると口元は下がる〜歳でたるんだのではなく、年齢を少し重ねて理知的な美人になってくるのである。髪もからまってくる。
 孫次郎には金剛孫次郎が亡くなった細君の面影を映したとの伝説がある。三井記念館にある本面の裏にはカタカナで「オモカゲ」と書かれている。先の展示では裏面は見られなかったのだが

・「班女」から中ノ舞の実演。多数決で増女をつけて。使った中啓は表裏同じ絵〜次の謡にかかわらず人の心はほんとうは表裏なし、ということにしましょう!
 恋に恋してしまって、目の前に恋人がいるのに気づかないで舞う。
 恋人と交換した扇が恋の対象になってしまっている。
 〜形見の扇より なほ表裏あるものは 人心なりけるぞや
 〜あふぎ(扇・逢う儀)とは虚言や

1375981_918351838197629_439834106_3 ・男面=童子・喝食(若男とかもありましたけどとくに用いず)
 童子も神がかった感じのもの(がある)。喝食は禅寺の給仕の侍童
 翁(父の尉、白色尉があった)は切り顎の特殊な面。神様をあらわすのだがなんの神様か正体不明。宮崎駿『千と千尋』の中で川の神が綺麗さっぱりしたときに竜身の翁になって飛び去るのは翁の適切な登場の仕方であってなかなか深い!
 小鍛冶の後段で使う小飛出や猩猩の面は赤い〜六道(天・人・修羅・餓鬼・畜生・地獄)のうちの畜生をあらわす色が赤だから。ちなみに地獄の色は黒。
 修羅〜酒を水で割って売っても修羅道に落ちると言うから、いまごろは銀座のママがたくさん修羅道に落ちているはずで・・・なんか、修羅も案外いいんじゃないか? なんだそうです。いいかも知れない。

・「小鍛冶」からの実演。多数決で童子をつけて。
 草薙の剣の物語を語るうち興奮して狐=稲荷明神の正体をあらわしそうになり、また冷静に戻る面白い演技

・面をつけてみるワークショップ
 面はひもを通す穴のところのみ持つ。
 面がいい位置になるように頬と額にアテを付けますが、簡便のため額のみで。先生がやって下さいました。
 アテがうまく行っていないと面が不適切に上向きだったりしました。それを下向きにするときに先生が「もう少しくもらせなければ」とおっしゃいました。
 耳のない面は外側から面紐を通す。耳のある面は(面を破損から守るため)内側から面紐を通す。
 面は一礼して(敬意をこめて)からつける。
 ・・・面紐はかなりぎゅっと縛るのでした。ちょっと驚きと感激。
 ・・・顔が大幅にはみ出るのもいとわず女面(孫次郎)をつけさせていただいたのですが、目の穴のところからはほとんど何も見えません。視界95%カットだと事前のご説明でしたが、その通りで、足元が分かりません。写真を撮っていただくときに面の内側で無意味ににっこりしてしまいました。
 ・・・弱法師は目の見えないキャラのはずなのに、切れ長の目の穴からは女面よりはよく見えるんだそうです。
 ・・・怪異な面(獅子口というのでしょうか)だとよく見えるらしいです。でもこの面はありうべからざるものになってしまうキャラらしいです。

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・般若〜偶然の縁で見立てを頼まれた面が般若坊作のオリジナルを大変忠実に写した優れもので、それをお買い取りになった由。桃山期のもの? 毛書きはまず細く彫ったところにしているので繊細さを失わないものになった。大名家にあるオリジナルなど滅多に借り出せるものではないので、修理かなにかを依頼されたときに写して、これを次のモデルにして、後日流布した般若の面を作っていったのかもしれない、という夢のあるお話をあとで質問者の方になさっていました。
 般若はインパクトの強い面なのでずいぶん知られているけれど、使われるのは「葵上」・「安達原」・「道成寺」の三つだけ、なのだそう。これもビックリですよね!

・「葵上」の「祈リ」の実演。かの般若の面は三年前のワークショップで実演に用いたとき、突然まわりが広く見えるようになってスゴいとお思いになっていたら、あとで外そうと思っても吸い付いてとれなくなった由。そのときは被り物と併せて無理矢理脱ぎはがすようにしてやっととれたとのこと。不思議ですが真実なのでしょう。

・山姥(やまんば)〜お持ちだったより古い方のものではなく、「銀座のビルを解体したら偶然出てきた」というこれも古い(やはり桃山期? 江戸初期?)の面を用いて世阿弥作の「山姥」から実演。
「山姥」は世阿弥がキャラクターを大きく作りすぎて悩んでしまい、一休さんに相談に行って、悩んでいるその姿もまたいいんではないかい、みたいなアドヴァイスで拓けて仕上げた作品だというお話(事後『新潮日本古典集成』の解説を見ましたがこのエピソードは載っていませんでした、でもなかなか興味深い話だと思います)。
山姥は「となりのトトロ」のトトロみたいなキャラクター。季節の移り変わる空を自在に行き来する。が、それは苦しみなのだと云う。(ここで先の修羅の話。)六道輪廻から逃れられない我が身を嘆く。

・「山姥」から立回りの実演。銀地に雲の扇。
 〜春は梢に咲くかと待ちし花を尋ねて山廻り
 〜秋はさやけき影を尋ねて月見る方にと山廻り
 〜冬は冴え行く時雨の雲の雪を誘ひて山廻り
 〜廻りめぐりて輪廻を離れぬ妄執の雲のちり積もって
 〜山姥となれる鬼女がありさま 見るや見るやと峰に翔り
 〜谷に響きて今までここにあるよと見えしが
 〜山また山に山廻り 山また山に山廻りして
 〜行方も知れずなりにけり

復習がこれまた楽しゅうございました。

これからの日程を自分の備忘のために記しておきます。
・3月1日(日曜日)15時より/会場未定~「能の運動力学/型のinterpretation(解釈)」~武士の振る舞い、摺り足の呪縛
・3月22日(日曜日)15時より/会場未定~「和の発声道場」~能のあの声、出しましょうね
・3月28日(土曜日)(自分だけの謡本をつくる由)
・5時限目「大人遠足」詳細未定 6時限目~4月19日(日)先生の「鉄輪」を鑑賞!

Aoinoue

http://umewakanoh.exblog.jp/i12/

山中 迓晶(ヤマナカ ガショウ)
昭和45年1月14日生れ。父山中義滋、現梅若六郎に師事。
山中義滋(重要無形文化財総合指定)長男。
昭和47年、2歳で初舞台「老松」。幼少より子方として舞台に立ち現在に至る。
平成5年より2年間、京都造形大学の非常勤講師を務め、同大学に初めて能学部をつくり、生徒と共に学園内での公演などを行う。平成7年、梅若 六郎家に入門し4年間の修行期間を経、平成11年春、卒業する。
現在、能の公演以外にも、「能へのいざない」と題して、誰にでも解りやすく能を紹介するレクチャーを数多く催している。
また、幼稚園・小中高・大学や専門学校での講座も積極的に行っている。
緑蘭会(りょくらんかい)主宰。

重要無形文化総合指定保持者。

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