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2015年1月12日 (月)

という夢をみた。〜三輪眞弘(「いま」を聴く〜ありえたかもしれない音楽)

さあ、面白いから次は三輪さんだ、と思っていたのでしたが、いざとなったら、どう取りかかっていいものか、とても難しかったのでした。

・・・う~ん、三輪さんの作品を「面白い」と思うかそうでないか、が、『現代音楽』を標榜する響きを「面白い」と思えるかそうでないか、の、分かれ道のひとつにはなる気がします。全部、ではないのですけれどね。

著述にみる三輪さんのお話は、音楽にとって根源的なことで、読んでいると強い共感を覚えます。けれど、次のように引用してみると、どうでしょう? 読み取れるまでに少し時間がかかってしまうと感じませんか?

音楽とは、才能ある人が抱いた思想や激情や繊細な感覚の揺らめきを聴衆に伝えるためのものなのだろうか? その例をぼくは無数に知ってはいるが、そんな一方的で趣味的なものでは決してない、といつも思っている。そうではなく、人間ならば誰もが心の奥底に宿しているはずの合理的思考を超えた内なる宇宙を想起させるための儀式のようなもの、そこには自我もなく思想や感情もない、というより、そこからぼくらの思考や感情が湧き出してくる、そのありかをぼくらの前に一瞬だけ、顕わにする技法ではないか? もし、音楽がそのようなものでないのなら、J.S.バッハの音楽などに感動できるはずもないし、現代では音楽など単なるイケテナイ娯楽でしかない。(『三輪眞弘音楽藝術 全思考一九九八-二〇一〇』p.156 アルテス)

引用した文章の読み取りにくさは、三輪さんが周到に言葉を選んでいるために起こっているのであって、読み取れてみると趣旨はわりと明快です。作品も同性格で、この明快さまで聴き手の耳が素直にたどり着けるかどうか、が、三輪眞弘作品の受け止め方を決めるように思います。

Zap2_g5694073w 音楽に対する考え方の他に三輪さん自身による作品解説を集めた『三輪眞弘音楽藝術 全思考一九九八-二〇一〇』によりますと、三輪さんは21世紀にはいって「逆シュミレーション音楽」というのを編み出しています。

「逆シュミレーション音楽は地球上の古代人や未開民族が行なっていたかもしれない、あるいは行なうことが可能であったような音楽(これを『ありえたかもしれない音楽』と呼ぶ)を空想し、主にコンピュータ・シュミレーションによって検証しながら新しい音楽を生み出す試みである。」p.73

というもので、たとえばCDで聴ける「村松ギヤ」ですと次のような由緒が「逆シュミレーション」として生み出されています。

《村松ギヤ》は、明治中期まで北海道北東部一帯に居住していたと伝えられるロシア系先住民ギヤック族によって行なわれていた祭事と言われ、幕末期に北海道(当時の蝦夷地)で先住民族の現地調査を行なっていた松前藩の村松勇作(幼名、勇太)の報告によって現在に伝えられている奇習である。
・・・大幅略・・・
一見、多数の女性(この儀礼では男に対して三・四倍)の間を蝶が舞うように渡り歩く少数の男性の動きは、現代人にとってあるいは非道徳的で面白おかしくも見えるが、それは厳しい大自然に生きる少数民族の日常、部族間の抗争はもとより、後の大和民族の侵略まで続く、村の恒常的な男性不足という民族の過酷な歴史を物語るものだという。

という夢をみた。

(p.89〜91)

実演の一例です。〜別途CD収録例は下記のリストをご覧下さい。
京風 村松ギヤ

http://youtu.be/Wj4q03pXWMs

どうでしょうか?

さて、私のような傍流リスナーはCDとYouTubeしかその試みを拝聴できません。
で、CDですと今手に入るのは次のような作品群です。Zap2_g5694077w

・村松ギヤ(春の祭典) FOCD2573
 弦楽のための、369 B氏へのオマージュ
 逆シュミレーション音楽「村松ギヤ(春の祭典)」広島風
 オーケストラのための、村松ギヤ・エンジンによるボレロ

・復刻 三輪眞弘 「赤ずきんちゃん伴奏器」「東の唄」 FOCD9570/1(2枚組)
 赤ずきんちゃん伴奏器
 ディデュランプ
 夢のガラクタ市ー前奏曲とリート
 歌えよ、そしてパチャママに祈れ—ボリビアの歌に寄せるふたつの物語
 ・・・
 2台のピアノと1人のピアニストのための「東の唄」
 ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのための「私の好きなコルトレーンのもの」
 ピアノ・アンサンブルとコンピュータのための[東のクリステ]
 カウントダウン
 「東の唄」徹底解説

http://tower.jp/artist/285554/三輪眞弘

私は三輪眞弘作品として初めて出会った「東の唄」が大変気に入ったのでした。
いまは「赤ずきんちゃん伴奏器」がわりと好きです。

「赤ずきんちゃん伴奏器」は、歌手の声の高さや強弱を読み取ったコンピュータが歌を自動的にピアノ伴奏する、という作品なのですが、この伴奏がどこかヘテロフォニックで日本人としては馴染みやすい響きで、音楽の根源にちょこっと思いを馳せさせてくれる楽しさがあるように感じるのですが・・・こういうのが後年の三輪さんの「逆シュミレーション音楽」につながったのかどうかは定かではありません。

さて、三輪眞弘さんのピアノ作品が、細川俊夫さんのピアノ作品とともに、この1月25日(日)に大井浩明さんのPOCで演奏されます。どうぞお出かけ下さい。

【ポック[POC]#20】~細川俊夫/三輪眞弘全ピアノ曲
2015年1月25日(日)18時開演(17時半開場)
両国門天ホール (130-0026 東京都墨田区両国1-3-9 ムラサワビル1-1階)
JR総武線「両国」駅西口から徒歩5分、大江戸線「両国」駅A4・A5出口から徒歩10分
3000円(全自由席)

http://ooipiano.exblog.jp/22321199/

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