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2013年2月23日 (土)

【実験工房】大井浩明さん「POC」第15回紹介:聞き書きつくばタイムス・ドッピオ

演奏会そのものを私は拝聴出来ず残念でした。たいへん充実した会になった様子がツイートから確認でき、よかったなぁ、と思っております。

http://ooipiano.exblog.jp/19277696/

先日(19日)つくばタイムス・ドッピオでのインタヴューは拝聴出来、その場でツイッタに打ち込みをしたのでしたが、不十分でした。
そうしたら、毎度のご好意で、録音したものを聞かせて下さった方がいらっしゃいました。
まいど、貴重なお話なので、ツイートの時より少し細かく聴き取りをさせて頂きました。
録音を聴かせて頂いたことに、心から感謝申し上げます。

ラヂオつくばのネットでの聴取方法
http://radio-tsukuba.net/modules/tinyd0/index.php?id=21


POC第15回は「実験工房」の特集。(2月22日金曜日、代々木上原 けやきホール 18時開演)
鈴木博義、佐藤慶次郎、武満徹、福島和夫、湯浅譲二の作品。

電話でのインタヴュー

1年目は日本人作曲家ばかり、2年目はいわゆる戦後前衛の主立った方に韓国人作曲家4人。3年目の本年も外国人ばかりだったので、日本人をとりあげようとなると実験工房。

彼等はアカデミズムから遠く離れ、作曲をほぼ全員独学。長く独学だった大井さんも個人的にある種の共感をもっている。てさぐりでいろいろなことを試みた。戦後かつアカデミズムに縁がなかったので情報も資料もない状況だった。大井さんも地方で図書館に行ってもLPを貸してもらえなかった。

日本の作曲家でジョン・ケージに対応するならば50年代の実験工房がふさわしいということでもあった。多摩美大で行なわれた佐藤慶次郎さんの展覧会「ものみな光る」はもとはケージのEvery thing is expressiveからきている。佐藤さんは「ケージに聴取の方法、作曲とはなんぞを教わった」と仰っているが、教わったとたんに作曲活動をやめたようなものだった(以後も続けていた・・・今回とりあげる「如何是」〜シーケンサに打ち込まれた、目印に過ぎない楽譜、1泊ごとにテンポが変わる非常に複雑な作品。生演奏でやると、この人は30年経ってこんなふうになったのか、という面白い感じ)。

実験工房の活動期間は比較的短期間だったが、集まった独学者たちが手探りでメシアンを写譜したりしながら作曲を始め、何人かは50年代、60年代、70年代に世界的成功をおさめるかたわら、おさめたあとで作曲をやめ違うことで実験を始めたりする面白いグループだった。

鈴木博義さんは劇判音楽を除くと25歳以降は何も作らなかった。
佐藤慶次郎さんも40歳前でやめ、福島和夫さんも40歳を過ぎて作曲をやめて違う分野で探求。
一方、武満徹さんと湯浅譲二さんは半世紀以上作曲を作曲を続けた。

それぞれのトピックスと大井さんの個人的な出会いについて。

冒頭に演奏する鈴木博義さん以外の4人は直接おはなししたことがある。同人の園田高弘さんにもお世話になり、実験工房に親しみを覚えている。

鈴木博義さんは早くに作曲をやめたが、22歳の時に書いた2つのピアノ曲の譜面の所在を遺族に伺ったら、70歳過ぎた鈴木さんがFinaleを使って書き直した最終版の提供を受けたので、これを使う。理系出身者でもなかなか使いこなせないFinaleを使ったことに「さすが実験工房」との感慨。

佐藤慶次郎さんとは亡くなる3年前にあう機会があった。「ピアノのためのカリグラフィ」のリハーサルをことこまかにして頂き、公開演奏に臨席していただいて、カリグラフィの自筆譜や、出版譜幾つかのヴァージョンの差異についての質問を聴いて頂いたりした。作曲家を早々にやめた結果、半世紀前の息吹きを鮮明に記憶していて、直話をきける貴重な体験をした。ひとつの強弱を決めるのにいかに苦しんだか(「そこは悩ましいところだ」)、ヨーロッパ前衛の人なら「忘れた」とかセリー表のマトリクスを持ち出して「理論通りに書いている」というだろうところを、非常に正直に言って下さった。彼が非公開で作り続けていたコンピュータ音楽を生演奏で弾く。(「如何是」第9番)

武満徹さんは、大井さんが90年代に個展を3回やった。そのときに文通。直接会った時に、図形楽譜の「コロナ」をどう弾くのかを伺ったりした。40年前のことで、「コロナ」については武満さんは忘れていた。初演者の高橋悠治さんはけっこうはっきりした答えを言っていた。人は忘れるものだ。武満さんはその後作風がたくさん発展して行った。武満作品は2月あたまに京都でチェンバロ作品を含め全部弾いたが、いまみて大きな展望をもてるようになり、同時代のいろいろな作曲家の位置から、武満氏はここでこういう影響を受けたのでこういうオリジナルも出来た、と分かって来た。

福島和夫さんと湯浅譲二さんは(ご高齢になられて)「たいへんに」お元気。
福島さんは上野学園在職。お会いして、バッハのクラヴィコードのCDをお見せしたら、「このクラヴィコードはどのモデルを使っているか」と最初に聞かれ、クラヴィコード話で1時間盛り上がった。1960年代初頭(古楽黎明期)にすでにクラヴィコードに大変興味を持っていたが、実験工房や現代作曲界ではその興味は一切共有されないままで来た。上野学園や桐朋の古楽器科の創設には大きく関わっておられた。作曲を70年代後半でやめ、以後、東洋・日本音楽史の探求をしてきた(論文百数十本)。「ここにクラヴィコードがありますよ!」と研究所の3階まで階段を駆け上がる、ビックリ元気な83歳。彼の作品を沢山初演したマデルナ、ガッツェローニ、カニーノ(大井さんのピアノの師)の話題(ウラ話含む)でも盛り上がった。今回はヴァイオリン音ために書かれた「途絶えない詩(うた)」、アルトフルートとピアノのための「エカーグラ」を福島先生の許可を得てオンドマルトノで演奏。ストラヴィンスキーが1959年に来日した時、音源を聞いて誉めたのが、武満「弦楽のためのレクイエム」と福島さんの「エカーグラ」だけだった。ストラヴィンスキー自ら「エカーグラ」アメリカでの初演を手配、国際的デビュー。福島さんはダルムシュタットの夏の講師に招かれ、現代音楽と能についてのレクチャーをした。大井さんは、ヨーロッパでは福島作品は確実にずっと演奏され続けていると実感している。

湯浅譲二さんは今年84歳。今回は最初期(デヴュー第2作)の「スリースコアセット」、ピアノの代表作(ピアノと電子音響のための)「「夜半日頭」に向かいて -世阿弥頌-」を演奏し締めくくりとする。大井さんが東京で初めてピアノを弾いたとき客席にいらして下さり、オーケストラのインスペクターが大井さんに「現代音楽をやるなら君も武満さんや高橋さんのように痩せていなければならないのでは」と言ったら、真横にいた湯浅さんが「僕もずっとそう思っていたんだけど、でも、フェルドマンがいるから」と言ったのが忘れられない。(今回の演奏では)湯浅さんの作風が5年ごとに激変する感じが分かってもらえると思う。

オンドマルトノはこのころの実験工房のモデルであった初期中期のメシアンが非常に愛した楽器で、福島さんや湯浅さんに伺うと「憧れの楽器であった」。鈴木博義さんがオンドマルトノとオーケストラのための「モノクロームとポリクローム」を書いたが、当時日本にオンドマルトノがなかったので、別の楽器(クラヴィオニ?)で代用された。福島さんは「エカーグラ」でのフルート部オンドマルトノ代用を快諾。「コロナ」も複数の鍵盤楽器推奨なのでここでも使える。佐藤慶次郎さんの「如何是」のずっと強いすさまじい高音フルート音はずっとフォルテでピッコロでも無理なのでオンドマルトノの出番。当時はなかったが、あったら使っただろうオンドマルトノをイマジナリーにしてみる。

今回オンドマルトノを提供頂く尾茂直之さんは浅草に工房とカフェをもっているが、数奇な人生を送っている(笑)のでカフェを訪ねてみてほしい。「オンドマルトノ カフェ」で検索すれば出て来る。オンドマルトノに人生を賭けている。2年前にシュトックハウゼンのクラヴィア曲を初演したときもオンドマルトノを使わせて下さった。

大井さんの現代音楽活動の原点、京大のピアノ・室内楽サークルの音楽研究会に大井さんが1年で入った時経済学部6年でいたのが河合拓治さん。彼が大量に現代音楽の譜面と音源をもっていて、クセナキス「エヴァリエリ」の楽譜を見せてもらった時に大井さんは虫酸が走ったのをよく覚えている。河合さんはその後東京芸大大学院楽理科に。大井さんもオルガン独奏作品、歌とピアノの曲を頼んで来た。共演は今回初めて。河合さんはここ数年現代音楽の演奏も活発。佐藤慶次郎さん「如何是」の強度を言わなくても出せたり、「コロナ」の図形楽譜を平然と弾ける人は限られてくるので、やはり河合さんにお願いしたいということだった。
「如何是」ではフルートのパートをオンドマルトノで大井さんが、ピアノパートを河合さんが弾く。

このPOCシリーズは、京大の音楽研究会の創始者でもある松下眞一を2年前にとりあげたが、実験工房の同人である佐藤慶次郎さんや福島和夫さんは国内国内の同じ場で作品を発表していた。

この3年15回やってきたPOCは今回でひとくぎりで、ひとまず休止。来年度は違うことをやる。そのあとまた続けるかもしれない。

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