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2012年12月 3日 (月)

【狂言】「遊兎の会」を拝見出来ました。

2012年12月1日、表参道の銕仙会能楽研究所 で、狂言の名手、石田幸雄師のお弟子さんたちの会であるという「遊兎の会」を拝見出来ました。

豊富な演目で、ほんとうは全部拝見したかったのですが、午前中の所用が延びて、残念ながら最後の3つと小舞を鑑賞出来るにとどまりました。で、せっかくお声をかけて下さった I 様ご夫妻の演じられた番組には間に合わず、残念な思いをしました。

ずぶの素人ですので、緊張して入って行きましたが、古典の言葉でありながら分かりやすく、見ている方のくすくす笑いが絶えず聞こえて、とても楽しく拝見出来ました。後見なさっていた石田先生は、ずっと厳しいお顔をしていらしたけれど。

あとで知って驚いたのですが、お出になったかたがたは各方面でご活躍で、たとえば拝見出来なかった昼頃の「咲嘩」には井出真理さん(脚本家、若松孝二監督の『千年の愉楽』の脚本を執筆なさった由)、これは拝見出来た「萩大名」には高島由紀子さん(アナウンサー)などがいらしたのでした。「内沙汰」でとても愉快なご表情で楽しませて下さった中野三樹さんは仙台にいらっしゃる大先輩(とは言っても出身校は違うのですが)ようで、仙台出身の私にはとても嬉しいことでした。

まぁ、そんなことを根掘り葉掘りしても、なんの意味もありません。

ただ、あちらこちらでぞれぞれ多様に立派に頑張っていらっしゃる方が、このような充実した会で、お互いが日ごろを(たぶん)忘れ、狂言をなさるその場所で、一心に、一体になって演じることに打ち込んでいらっしゃるお姿には、楽しい中にも、背筋がピンと延びる清々しさを、強く感じさせて頂け、たいへん感謝しております。

拝見出来た3つから、印象に残ったことを、少し。

「内沙汰(うちさた)」は女狂言(婿女之類)という分類で、最後にオカアちゃんが夫君を打ちのめすのです。こういうのを見ると、中世も女は強かったんだなぁ、と額に汗が浮く思いがします。
途中の夫君のセリフに
「胸がだくだくする」
というのがあったのが、また面白かったのでした。
べつに、夫君は牛丼のつゆだくを胸にこぼしてしまったわけではありません。
だくだく、は、今の表現だと「どきどき」なのです。
・・・ただし、このセリフ、古い岩波文庫(昭和18年第1刷の『能狂言』中巻、「おこさこ(右近左近)」として収録)には出て来ません。

「萩大名」は、物知らずで記憶力の悪い田舎大名が、賢い従者の太郎冠者の案内で、清水寺の茶屋に萩がいっぱいに咲く庭を見に行き、亭主に和歌を所望されて、事前の太郎冠者のレクチャーにも関わらず上手く読むことが出来なくて大失態を演じるお話なのですけれど、途中、庭の白砂や、離れたところにある岩や、咲き誇る花を眺めるときの、役者サンたちの目線が、ほんとうに広々した庭をうっとり眺め渡す風情で、のびやかな思いをさせて頂きました。

最後の「雷」は、雷さんが天から落ちて来て、通りがかりのヤブ医者に治療をしてもらうのです。
雷さんは赤頭に面をかぶって、鞨鼓を胸に下げ、撥を手にして登場します。面は武悪か専用の雷さんのものをかぶるのだそうですが、私には、どっちだか分かりませんでした。雷さんは、登場するとき、
「ぴかっ、ガラガラガラ~」
と跳ね回る。「ぴかっ」は現代的だなぁと感じましたが、あとで調べたら、ひっかりひっかり、とか、ぴかりぴかり、というのが、元のかたちらしい。して みると、「ぴかり」という言い方は、「ひかり」そのものであって、「ひかり」という言葉は、もしかしたら擬音語なのかも知れない。
雷さんの登場前の雷鳴はヤブ医者さんが床に激しく足踏みして出すのです。なさったかたがとても上手くて、雷鳴が突然なるたんび、心臓が止まりそうになりました。

最後に石田先生が舞ったのは何の舞だか私なんかには分からないのですが、締まって素晴らしいものでした。(コメントをいただけ、「大原木」という、頭に木を担いで売る女のヒトの舞だとわかりました。ありがとうございます!)

能舞台のいいところは、どこから見ても、演じる人と見る人が近いことではないかと思います。歌舞伎になると、舞台の幅が長くなるので、かぶりつきで見ていても役者さんが遠くなってしまうこともありますし、離れてみると、やはり「絵」なのですよね。伝わってくる気のようなものも、いったんどこかで反響したものが届くようです。
その点、能舞台だと、演じる人の放つ空気がじかに伝わってくるようで、じかであるが故に「胸をだくだく」させられる魅力が強くて、またよいものだなぁ、と、あらためて感じました。

得難い機会でした。
また是非チャンスがあれば嬉しいと思っております。

お勧め下さったI 様、ほんとうにありがとうございました。

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コメント

お忙しい中、ありがとうございました! 
師匠の舞は「大原木」でした。 頭に木を担いで売る女のヒトの舞。

ああ!ぜひ我々の素人舞台もご覧頂き、辛辣なコメントをいただきたかった!と心より切望いたします。来年もきっとあるかと存じますので、ぜひいらしてください!

雷のおもては武悪だったと思います。(ちがったらごめんなさい) 
「気がまくまくする」という台詞があるのですが、どうやら秋田でも「まくまく」というそうです。「まくまくで」という御菓子もあるそうです?(笑

ぜひぜひ、また!

投稿: しのぶ | 2012年12月 4日 (火) 05時36分

うわ、コメントいただけて、びっくりです!
ありがとうございます!

すばらしい会で、とちゅうからなのがほんとうに悔やまれました。
取り込みで取り急ぎで恐縮です。ご教示にも感謝申し上げます。
またあらためてご挨拶できましたらと存じます!

投稿: ken | 2012年12月 4日 (火) 09時39分

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