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2012年9月22日 (土)

ピノックのモーツァルト〜紀尾井シンフォニエッタ東京(2012/09/22)

紀尾井シンフォニエッタ東京の生演奏・・・家庭的な事情もあって演奏会にはなかなか足を運べませんので、たまたまひとさまから頂いたチャンスなのでしたが、やっと拝聴することが出来ました。

しかも、なんと、これまたずっと憧れていた名匠の一人、トレヴァー・ピノック氏の指揮なのでした。
クラリネットのソロに、パトリック・メッシーナ
http://www.myspace.com/patrickmessina

http://www.kioi-hall.or.jp/sinfonietta/

第86回定期演奏会でした。
曲目は、すべてモーツァルト作品。

第36交響曲「リンツ」K.425
クラリネット協奏曲K.622
第39交響曲 K.543

たいへんに感激して、帰って来ました。

私は古楽奏法でのモーツァルトを学生時代に美学の講義で初めて聴かされました。アーノンクール指揮の「ハフナー」交響曲で、当時はまだ斬新過ぎて、たいへんな衝撃を受けると同時に、拒みたい思いに駆られたものでした。

Lpict001 その後しばらくして、ピノック/イングリッシュ・コンソートの全集盤を聴くことが出来、それでやっと拒絶反応から解放されたのでした。
ただし、それは、むべなるかな、ではあったかと思います。
ピノック氏の指揮する演奏は、最近出したライヴ映像 "Flute Concertos at Sanssouci "(http://www.amazon.co.jp/dp/B008DWG0XS)で明らかになる通り、現代的な楽器で昔の奏法を復元するところに基調があり、その点では先輩世代のバロック演奏の延長線上に位置しているのではないかと思います。
映像では、一連のコンチェルト(フリードリヒ大王、クヴァンツ、フランツ・ベンダ、エマヌエル・バッハ【これは無伴奏ソナタ】)を吹くエマニュエル・パユ氏(フルート)は金属製の楽器で吹き通しています。
とはいえ、類似の試みを続けているロジャー・ノリントンと異なっているのは、ノリントンがひとつの奏法に徹底的にこだわるのだとすれば、ピノックはスタイルに古楽風なものと20世紀風なものが混在しても、響きが損なわれない限りは認容しているところではないかな、と感じます。(ズレていたらごめんなさい。)上の映像でも、弦楽のメンバーが一様にノンヴィブラートを貫いているのに対し、パユのフルートはまた一貫してヴィブラート奏法です。それでも(ソリストだけがヴィブラート奏法だから、でしょうか?)まったく違和感なく溶け合っています。こういうあたり、イギリス紳士流なのでしょうか。・・・あ、ノリントンもか!(><)

紀尾井シンフォニエッタ東京は、別段、古楽奏法をとる団体ではありません。
このオール・モーツァルトプログラムでも、最近で言うところの「モダン」奏法で一貫していました。
ピノック氏は、それをまったく拒まない。
でありながら、彼のヘンデル「水上の音楽」や「王宮の花火の音楽」の録音同様の「古楽的な印象」が、明瞭に聴き取れるのが、なんとも不思議でありました。

そう、指揮する団体がどんな奏法をとっていても、アイディアにある音の風景を実現する魔術を、この人は持っているらしいのです。
これは、実に新鮮な驚きでした。
驚いてみて、やっと、何故ピノック全集ではそれまで古楽を受け付けたことがなかった自分に拒絶反応が起こらなかったのか、を悟ったのでした。

初めて「なまおと」に出会うことの出来た紀尾井シンフォニエッタ東京は、見かけ上はいわゆるインテリ集団(こういう言い方ならば悪口になってしまうでしょう)で、絢爛な経歴をもつ錚々たるメンバーが集まっているのですけれど、実質は各人が経歴に寄り添っているようなヤワな集まりでは、決してありません。
クラリネット協奏曲が、この集まりの長所を最も発揮した伴奏ぶりだったかと思いましたが、強音でも弱音でも響き作りの意思統一が前から後まで徹底して貫かれていて、お互いの音に素朴に純に没入しているのだ、ということが、緊張感をもって、しかしながら暖かさをもって、強く伝わって来た気がします。
あるいは、39番の変ホ長調交響曲は、とくに序奏部分には、生演奏でなければ分からない、独特のアンバランスな低音のうねりがあるのですけれど、生演奏ならどれでも分かるかというとそうは行かない。今回の紀尾井シンフォニエッタ東京の演奏では、それもきっちり響いていて、内心、歓声を上げてしまっていました。

ピノック氏がプログラムに寄せているこの言葉を、きちんと体現したコンサートでした。

「モーツァルトの音楽を演奏するときは、いつも心を揺さぶられます。ことばで話すと面倒なことや、異なる文化的な背景が困難にしていることを超えて、(私たちを)ある一致点に導き、体験を共有させる、普遍的な言語を、モーツァルトは私たちに与えてくれます。」(読点等、若干改変)

貴重で幸せな体験をさせて頂けました。

紀尾井シンフォニエッタ東京のようなオーケストラがあることは、日本にとって、たいへん幸せなことであると思いました。

是非また拝聴させて頂きたいと思っております。

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