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2011年10月29日 (土)

【音を読む】のばしてずらして重ねてみる~オケゲム「ミサ・プロラツィオーヌム」のKyrie

初歩の「十二音」簡単なバランス崩し同じものをつかいまわす


(音声プレイヤーの位置がバラバラですみません。)

こないだ、日本の能の例で、同じものが「有効活用」されているのを見てみました。 
譜例に掲載はしませんでしたが、能では、同じ節(メロディ)が笛で繰り返される時に、打楽器が叩くパターンを変えることでメリハリをつけていました。 
ご存知のことだろうとは思いますけれど、ヨーロッパでは、低い音で鳴る一定の旋律を何度も繰り返し、その上に乗せる高い音の旋律(メロディ)や響きを変えるものが作られていました(パッサカリア)。 
あるいは、一つの旋律をいく通りにも姿を変えさせる、変奏曲という形式も発達していきます。 
いずれにしても、ヨーロッパは高い音のほうの旋律はどんどん姿を変えさせるのが好きなようで、日本の能の舞囃子とは対照的です。 

探すと他の世界にもこれらに似た発想のものがあるのかもしれませんね。あったら面白いですね。ご存知でしたら是非ご教示下さい。 

さて、同じ一つの旋律をそのまま繰り返すのではなくて、ずらして重ねるテもあります。最近はどうか知りませんが、キャンプというとつきものだった「静かな湖畔」みたいな、「輪唱」ってやつがふつうです。カノン、と呼ばれるこの種類の音楽は、たくさんの作曲家によってたくさん作られています。(*1) 

ふつうでない、こんな例もあります。 
1497年に亡くなったフランドルの巨匠オケゲムの作曲した、とあるキリエです。 

まずこれがメロディ。


これを、ちょっと間延びさせてみます。(*2) 

で、もとのやつと、ちょっと伸ばしたりしてみたものを一緒にくっつけると・・・

 【1】+【2】

あら不思議、なんだか面白い響きが出てきました。

でもまだ何だか物足りない。 

最初のメロディに組み合わせる、もう一つのメロディを考えます(って、オイラが考えたわけじゃないですけど【爆】)。 

で、これを最初のメロディと組み合わせたら・・・ 
【1】+【3】 

う~ん、なんだかまだまだ中途半端だ! 

で、こっちも間延びさせてみます。 

こうだったのを・・・ 

Kyrieten_2

こんくらい。(*3) 

で、これも、最初のメロディみたいに、同じものどうしくっつけてみます。

【3】+【4】 

まだなんだかピンと来ません。 

で。 

全部くっつけてみちゃいます。 

即ち、(【1】+【2】)+(【3】+【4】) 

・・・すると、あら不思議!!! 

全体 

響きがすっかり充実しました。 

Kyrieall

数字があるところを区切りにして、2分音符1拍の3拍子に割り当てて線を引くと、どういうタイミングで合わせてあるのかが分かります。・・・ただし、この音楽は三拍子ではありませんから、注意が必要です。(*4) 

ちゃんとした演奏で聴いたほうが、すごさが良く伝わってきますので、それを最後に掲げます。・・・音が1全音分くらい低いのですけれど、お許し下さい。

(ヒリヤードアンサンブル)
 実際の「良い演奏」

このキリエを含む "Missa Prolationum" は、他の章もこのような組み合わせを大変に興味深い方法でやっていることで有名です。 
(楽譜はオンラインではIMSLPにあるのをご教示頂きました。同じご教示で拝読した資料に、オリジナルの指示で上声部に2/2と3/2、下声部に4/2と6/2【3/1か?】が記入されていることも確認出来ました。深く御礼申し上げます!)


*1:モーツァルトやベートーヴェンの例からは、カノンが気軽な、あるいは心のこもった挨拶代わりにやりとりされた様子が伝わってきます。

*2:【1】の最初の二単位相当分を近似的に1.5倍くらいにしています。 

*3:【3】の最初の
二単位相当分を、近似的に1.5倍くらいにしています。・・・【1】・【2】の関係と基本アイディアが同じです。 

*4:全体を組み合わせた上で旋律線を眺めると、2分の3拍子で通っているパートはありません。ソプラノ(【1】)は基本は2分の2拍子ですが計量上は2分の1拍子とでも言うべきものです。あくまで計量上のものだという点に気を付けなければならないでしょう。近代的な拍子に完全に置き換えてアクセントを考えるのは誤りのもとかと思います。アルトは一貫性のある拍子として眺めた場合には4分の6拍子ですけれども、小節を割り振ってしまうと、強弱アクセントは小節ごとにかなり変動します。とはいえ、そのアクセントのズレて行き方は、五線譜表に書かれたバロック期のものに似通っているのが興味を引きます。テノールは最初の2小節は付点四分音符を1拍とした4拍子、3小節目は4分の6拍子、以下は2分の3拍子。バスは、小節を割り振った時には、最初の3小節は付点二分音符を1拍とした3拍子、残りの6小節は付点無しの二分音符を1拍とした3拍子(2分の3拍子)となるかと思います。・・・あくまで音符の長さをはかる単位としてだけ全体を2分の3拍子と決めつけて眺めるようにすると、全体が9小節、すなわち3×3になる(歌詞の区切りとは一致していませんけれど、キリエは3回繰り返される、ということ、カトリックにとって3は聖数であることにつながります)のですが、オケゲムがそんなことを意識したかどうかは全く分かりません。オリジナルには小節線がありませんから。

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