« ロッシーニは何故オペラを書かなくなったか | トップページ | 大井浩明さんPOC第5回告知番組(ラヂオつくば) »

2011年1月25日 (火)

CD:松平頼暁「24のエッセーズ」(大井浩明さん<POC>第5回関連)

24essays 大井浩明さんPortraits of Composers(POC)最終第5回は来たる1月29日19:00〜、門仲天井ホールにて。採り上げられるのは今年傘寿、先ごろ中村和枝さんの演奏(作曲家自身も最終曲で連弾参加)によるアルバム「24のエッセーズ」を出された、流麗な作風の松平頼暁さんと、中堅作曲家として不思議な音世界を堪能させて下さる田中吉史さんの作品です。
田中吉史さんのプロフィール作品解説が大井さんのブログに掲載されました。
また、ラヂオつくばで24日(月)に紹介番組がありましたが、26日(水)深夜に再放送されます。こちらの一覧から関東のなかの「ラヂオつくば」脇にある<放送を聴く>をクリックすればパソコンで聴取出来ます(VLCが必要な場合があります。ダウンロードする場合はVLCのリンクをクリック下さい)。


「第37回スペインギター音楽コンクール入賞者によるニューイヤーコンサート」は、1月30日、台東区生涯学習センターにて。是非お出掛け下さい。


門仲天井ホールにおける、大井浩明さんのPortraits of Composers(POC)も、1月29日でいよいよその5回シリーズの最終回を迎えます。

採り上げるのは、田中吉史さん(1968-)の魅力的な作品とともに、今年80歳になる松平頼暁さんの「アルロトピー」(10曲の練習曲、全曲による世界初演)・「トランスフォーメーション〜左手のための」(2009年、世界初演)です。

松平頼暁さんは、大井さんが今回のシリーズの第2回で採り上げた松平頼則さんのご長男ですが、親子ではあっても、ご活動の軌跡を拝読すると、描いて来た音世界は(当然ではあるのでしょうが)まったくの別物なのではないかと存じます。・・・そんなことは、専門家さんのあいだでは常識なのかも知れません。ですから、こんな前文句を綴るのは大変愚かしいことでもあるのかも知れません。

松平頼暁さんの軌跡は、平凡社『日本戦後音楽史』上巻の中盤以降、下巻の全巻にまんべんなく登場するほど「多岐に渡」ります。この本、単に息が長かっただけでは、ここまでまんべんなく名前が登場するようなヤワな本ではありません。1950年代後半から今日まで、頼暁さんは、ご自身に出来る、ありとあらゆるトライアルをなさってきたことが、この書籍から垣間見るだけでも充分に伝わってきます。そのひとつひとつを「たとえばこれは・・・」と抄出するのは、あまり意味が無いように思います。

Wikipediaの頼暁さんのページにもリンクされているCD・楽譜のリストもありますが

http://www.mother-earth-publishing.com/catalog/default.php?manufacturers_id=55

いま旬なのは、これでしょう。

・「24のエッセーズ」(ピアノ:中村和枝〜アルバムの最終トラックでは作曲者も共演)

ALM RECORDS ALCD-86

平易、とは言いませんが、万事ヘタの横好きな私には、<古典的なアイディアへの「発展的」回帰っ!!!>とでも叫んでみたくなるような面白さを持つアルバムです。

なにをバカなことをのたまってるんだこのスカタンめ、と、松平さんに造詣の深いかたがたには、いや、作曲者ご自身にさえ、叱られてしまうかも知れませんが(毎度だなあ。涙)、きわめて安直に、2つの側面から、かようなキャッチフレーズを思いつくわけです。

ひとつには、総タイトルにある「24」。これはひとつには、調性音楽にある嬰・変の音階の数であり、もうひとつには明確にはコレルリ以後ロマン派までを貫いた器楽曲出版の曲数の単位(6・12・24)でもあります。
松平「エッセーズ」は当然ながら調性音楽ではないのですが、そのかわりに11〜14曲だけは音度関係を固定して、その前後は音列の最初の2音を対照的に配する方法をとっています(調性の代わりにそんな手段をとった、などとは、松平さんはひとことも言っていませんので、念のため申し添えます)。

もうひとつには、各曲の持つ具象的な小タイトル。なかには(松平さんの若かりしと関係があるんじゃないかと思いますが)第4曲の'Yesteren'のように「有名なビートルズのYesterdayの歌詞に新たに曲を書き、歌詞を取り除いた」なんて人を食ったものまでありますけれど、基本的にはそれぞれの小タイトルは、それぞれの曲の内容に即した、というより、その小タイトルありきで曲のなかで真摯な音遊びを繰り広げている展開となっており、

最初にタイトルを眺めて「どんな音世界がひろがるんだろう?」と想像してから聴いてみる」

と、これまたたいへん楽しめます。

以上2点を考慮しますと、こんなことが言えはしないでしょうか?

クラシック方面で「絶対音楽」と「標題音楽」なる区分をしたのは19世紀のヨーロッパの学者だったのか、はたまた20世紀後半の日本の音楽教師だったのか、私の関知するところではありませんが、松平さんの「24のエッセーズ」は、象徴的な数字を掲げながらも内容が「標題的」であることによって、とくにコレッリ以来の洋楽の伝統を、そんな理詰めの臭面白くもないアイディアから音楽を再び開放し得るのだよ、と、決して専門的ではない聴き手にも平易にひらめかせてくれているのではないのでしょうか?

ただし、ここで言う「標題」とは、これまたよく誤解されているように「音楽の持つ詩的なものの象徴」なのではなくて、もっと「響きに直裁に関わるものであり、響きの設計図の座標を線引きしてみせているもの」なのであって、それによって何が生み出されたのか、生み出されて溢れて行くのか、は、曲が何らかの譜面としては一旦書き上がってもなお、奏者や聴き手の享受を通じた完成に向けて飛翔し続ける類いのものなのではなかろうか、と、私は受け止めております。

大井さんの29日の演奏も、ですが、このCDも、演奏者である中村和枝さん、この作品の演奏会を共に推進して来た作曲家、山本裕之さん(やはり大井さんのPOC第2回でその作品を拝聴させて頂けました)お二人のユニットclaviarea(ピアノで遊ぶ)が、作曲者の80歳のお祝いに捧げているアルバムであることを付記します。

松平さんのプランは曲順通りでないと効果が明確に意識出来ないのですが、それはアルバムそのもので見直して頂くこととし、ここでは並べ替えた上に2列にしてリスト化しておきます(松平さんご自身がちゃんと説明して下さっていることなのですが)。なお、作曲者ご自身の解説では明示されている音列については省略します。()内は最初の2音の音程関係です。第11〜14曲については冒頭2音の音程関係ではないところにウェイトがあるので、これらについては最初2音の音程は記しません。数字は実際の曲順です。各タイトルは、先述しましたように、各曲の内容と密接な関係があります.

1.Abstraction  (短2度)    24.Ornamentation(短2度)
3.Branches    (長2度)    22.Periodicity  (長2度)
5.Codex      (短3度)    20.Quanta     (短3度)
7.Densities    (長3度)    18.Repetition   (長3度)
9.Euphony    (完全4度)   16.Separation    (完全4度)
11.Folding                14.Transition
13.Game               12.Unbalance
15.Hexagram  (完全5度)     10.Vibration    (完全5度)
17.Isolation   (短6度)       8.Wedges    (短6度)
19.Jabberwocky (長6度)     6.Xenocryst    (長6度)
21.King's X     (短7度)     4.Yestereen   (短7度)
23.Legend     (長7度)      2.Zoning    (長7度)

アルバムには、他に「ミケランジェロの子犬」・「エクササイズ」(4手連弾、松平さんが共演)も収録されています。

|

« ロッシーニは何故オペラを書かなくなったか | トップページ | 大井浩明さんPOC第5回告知番組(ラヂオつくば) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: CD:松平頼暁「24のエッセーズ」(大井浩明さん<POC>第5回関連):

« ロッシーニは何故オペラを書かなくなったか | トップページ | 大井浩明さんPOC第5回告知番組(ラヂオつくば) »