« 「第九」ファクシミリのみどころ〜第1楽章呈示部 | トップページ | ブラームスの声(YouTube) »

2010年11月24日 (水)

モーツァルト:ヴァイオリンソナタ作品2

ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。



有名な「蹴飛ばされ」事件でコロレド卿との決裂が決定的となった1781年のモーツァルトは、みてきたように寡作でした。
ブルネッティが4月8日に演奏したと思われるヴァイオリン独奏のためのロンド楽章K.273は触れずに通り過ぎましたが、このときにはホ長調のヴァイオリンソナタK.380も前の晩に急遽1時間で、ヴァイオリンパートだけを書き上げて披露しなければならなかった逸話も有名です。ヴァイオリンソナタについては、後日まとめて触れるのが相応しかろうと思いますので、これも措きます。
4月22日に、今度はモーツァルトは大司教からザルツブルクに戻るよう指示されるのですが、8日に始まる一連の演奏会で、ますます「自立心」を煽られていたモーツァルトには肯んぜられないものになってしまっていました。
以降、モーツァルトのそんな思いを改めさせようとする父との確執が続き、それもあって、破綻は2ヶ月後の6月8日まで引き伸ばされました。

決定的な決裂の後、モーツァルトはいっぽうでクラヴィーア教師として身を立てることに奔走したと思われ、いっぽうで作品の出版によって経済を支えることを検討したのでしょう。

それらはいずれもアウエルンハンマー家との関係が成立することで、なんとか成果を上げます。
ひとつは「2台のクラヴィーアのためのソナタ」K.448(11月23日演奏)であり、これはアウエルンハンマー嬢との演奏を念頭に書かれたものと思われています。
もうひとつが、「作品2」として出版された6曲のヴァイオリンソナタ(クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ)であり、アウエルンハンマー嬢に献呈され、年末にアルタリア社から刊行されました。
ただし、モーツァルトは、積極的な性格だったらしいアウエルンハンマー嬢を、あつかましいとして敬遠していたようです。
なお、アルタリア社は、モーツァルトの生前に彼の作品を45点出版した、彼にとって重要な存在となります。(西川尚生『モーツァルト』131頁、音楽之友社 2005)

作品2の「クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ」のほうは、新旧取り混ぜての6作からなっており、制作年代順にレコーディングされているのが普通ですが、先日、阿部千春さんと大井浩明さんは、これらを出版時の曲順で演奏なさいました。モーツァルトの1781年当時の意図を考慮したときには、この演奏順の方が、作品を享受する上では正しいあり方ではないかと思います。

で、ここの作品の解説は、その演奏会に際して阿部千春さんの書かれたものが素晴らしく、素人が加えるものは無いと思われますので、共演者の大井浩明さんがそれをブログに掲載したものにリンクを貼っておきます。

http://ooipiano.exblog.jp/15255153/

以下、それに先んじて当ブログに掲載した記事と重複しますが、作品2の出版時の曲順、創作年代は次の通りです。

・ヘ長調 K376(1781、ヴィーン)
ハ長調 K296(1778、マンハイム)
・ヘ長調 K.377(1781、ヴィーン)
・変ロ長調K.378(1779/80、ザルツブルク)
・ト長調 K.379(1781、ヴィーン)
・変ホ長調K.380(1781、ヴィーン)〜4月8日にクラヴィア部白紙のまま演奏したもの

この作品群に、1783年になって高い評価を下した批評がなされることになるのも、以前と重複しますが、再掲します。

「これらのソナタは・・・作者の斬新な楽想と偉大な楽才の証跡に満ちており、まことに輝かしく、楽器にぴったりのものである」(1783年、ハンブルクでの匿名批評)

同じときに綴ったこと以上に、私に付け加えられることもありませんので、手抜きで恐縮ですが、これも再掲です。ただ、いかに掲げる印象からして、この作品が創作順ではなく初版譜への掲載順で演奏されることが何故有意義なのかも、お理解頂けるのではないかと思っております。

最初のヘ長調ソナタは晴れやかさが身上であり、活き活きした両端楽章に挟まれた下属調のAndanteも伸びやかです。

続くハ長調ソナタは力強さを備えています。

第3番に当たるヘ長調ソナタは、冒頭楽章でさらに活発さを増します。このソナタの中間楽章は、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番の有名な変奏曲楽章を予告する大人びた憂愁を湛えた名作です(大井浩明さんの作品についての発言によります)が、最終変奏はニ短調弦楽四重奏の終楽章に直結するものでもあるかと思います。メヌエットでしっとりしめくくるところが肝で、4番目に配置した変ロ長調の夢見るような旋律に円滑に繋がるようになっています。

第5番におかれたト長調ソナタがまた特異でして、冒頭のAdagio楽章が終わると、激しいト短調のAllegro楽章となります。「大ト短調」と呼ばれる有名な交響曲第40番の冒頭楽章より若々しく、おなじく「小ト短調」交響曲第25番より構成の入り組んだ、ト短調楽章の中でも際立った傑作です。

第6番におかれた変ホ長調のどっしりした作風は、曲集の最後を飾るにふさわしいものであり、このソナタの終曲となっているロンドは、彼の最後のピアノ協奏曲の終曲と同様の性質を孕みながら、調性が5度下であるために腰の据わった響きがします。

|

« 「第九」ファクシミリのみどころ〜第1楽章呈示部 | トップページ | ブラームスの声(YouTube) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: モーツァルト:ヴァイオリンソナタ作品2:

« 「第九」ファクシミリのみどころ〜第1楽章呈示部 | トップページ | ブラームスの声(YouTube) »