« ど素人 平曲考(6) 初重 | トップページ | 音声:Chawan-Mushi Respect(茶碗蒸しリスペクト) »

2010年11月11日 (木)

入手のチャンスです:ベートーヴェン「第九」ファクシミリ

大井浩明さん"Portraits of composer"第3回は11月13日、いつもの門仲天井ホールにて。リンク先をご覧下さい。
作品解説:
・塩見允枝子さん作品
 http://ooipiano.exblog.jp/15379131/
・伊左治直さん作品
 http://ooipiano.exblog.jp/15419774/
伊左治さんについては、野村誠さんによるドキュメントが野村さんの6日付ブログ記事に掲載されています。
 http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/20101106



Bt9ベートーヴェンの「交響曲第9番」自筆譜ファクシミリは、従来は古い出版のものが30万円程度のものでなければ買えず、手が出ませんでした。

高価であることには変わりない、とはいえ、これが4分の1程度の値段で手に入ることになりました。

アカデミア・ミュージックでの、11月末までの特価販売です。2009年にベーレンライター社が発行したものに解説の日本語訳も付いたもので、この解説は、どんな「第九」関連書籍を差し置いてでも読むべきものではないかと思います。

https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501647697

寸法がかなり大判(37 x 40 cm)ですし、重さも結構ありますので、保管場所の確保が大変ですが、とくにアマチュアオーケストラで何度も「第九」を演奏なさるチャンスがあるかたは、自分たちの演奏を研究する上でも是非入手することをお勧めします。(本来は写譜師による浄書稿も合わせて参照したいところです。)11月中は在庫が切れても優先的に取り寄せをしてくれるようです(ただし価格は変動します)。

私も少々背伸びをして入手をしました。

手に取っての第1印象・・・でかい!!!
やむを得ない事情がありまして、本作ではベートーヴェンは16段と23段の二種類の五線紙を混用しているため、全体をまとめる冊子のサイズを大きくせざるを得なかったようです。図版は最新の写真技術を用いており、良質です。
1冊にまとまっているものの、本ファクシミリ版は、現在4ヶ所に分散して保管されている15の資料(うち大部分を占める8資料はベルリン国立図書館にあり、世界遺産に指定されています)および補遺のコントラファゴットパートとトロンボーンパートをもまとめた貴重な集成でもあります。

開いてみての第2印象・・・ベートーヴェンの自筆はやっぱり読みにくい。
私の手元にあるベートーヴェンのファクシミリは、今回の「第九」の他には「月光ソナタ」・「ヴァイオリン協奏曲」・「エリーゼのために」・「ミサ・ソレムニスのスケッチ」ですが、最初の2者はそんなに読みづらいことはないのです。ですけれども、後2者はかなりの悪筆でして、「たぶんスケッチだったり、それに近い性質だったからだろう」と思い込んでおりました。

とんでもありません!

この「第九」の自筆譜(ファクシミリ)は、よっぽど読み込まないと、判読できない頁がたくさんあります。解説を参照しながら譜を読もうとしても、興味深い訂正あるいは追加・削除箇所などは、パッと見ただけでは分かりません。

それを読む楽しみを、今後にとっておくつもりでおります。・・・興味深いことを見つけたら(なによりもその時間を見つけなければなりませんが)、レポートしたいと思います。

とりあえず、関心のあった3点については確認をとりましたので、そのことだけ述べておきます。

・第1楽章の第2主題・・・従来はd'--g'|f'-b'|a'--es"|c"-- (ドイツ音名)と演奏され、ベーレンライター原典版ではd'--g'|f'-d"|a'--es"|c"-- と改められた箇所について、「再現部とは異なる進行になるから不審」と考えていましたが、これはベートーヴェン自身がオクターヴ下で重複するパートについても明らかにd--g|f-d'|a--es'|c'-- と書いており、少なくとも自筆時のベートーヴェンの意志はベーレンライター原典版通りであることを確認しました。

・第4楽章のバリトンの歌い出しは、ギュンター・ヴァント/NDRの録音では歌手が装飾を加えずダイレクトにeをのばして歌っています(O freundeのfreun-部分をAで装飾するのが従来のやり方)。これは自筆では装飾を加えておらず、ヴァント/NDR録音の通りです。解説によると、装飾は清書譜で写譜師が付け、ベートーヴェンが(暗黙のうちに?)承認したもののようです。

・同じく第4楽章、746小節には空白の小節が一つあり、サイモン・ラトル指揮の録音では、これを1小節間の休符として捉えたものがあったと思いますが、解説者の碩学デル・マーは「ベートーヴェンは小節線を1本書き込み過ぎたようだ here Beethoven seems to have drawn one barline too many」と一蹴しています。写譜師の清書譜には空白小節の痕跡がまったくないのが、デル・マーの論拠です。これは、上のバリトン独唱の装飾の有無とは全く別問題であることは言うまでもないでしょうし、自筆譜の印象も無造作ですから、休符の意図はやはりなかったものと考えるべきかと思います。

|

« ど素人 平曲考(6) 初重 | トップページ | 音声:Chawan-Mushi Respect(茶碗蒸しリスペクト) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 入手のチャンスです:ベートーヴェン「第九」ファクシミリ:

« ど素人 平曲考(6) 初重 | トップページ | 音声:Chawan-Mushi Respect(茶碗蒸しリスペクト) »