「第九」ファクシミリのみどころ〜第1楽章展開部
ベートーヴェン「第九」ファクシミリ、アカデミア・ミュージックで特価販売中。入手のチャンスです!
大井浩明さんの第4回Portraits of Composers「平義久×杉山洋一」2010年12月15日(水)19:00開演(開場18:30)門仲天井ホールにて。
杉山作品が聴けるサイトへのリンクは、こちら。
http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-6321-1.html
「第九」自筆譜、第1楽章呈示部の見所は、こちら。
ベートーヴェン「第九」の、第1楽章展開部から、彼がどう書いたかを拾ってみました。
ケータイ写真ですので、小さくて不鮮明なのをご了承下さい。
また、電子データではやはり伝わらないものがあるとの思いを強くしています。・・・ファクシミリも良質の印刷物でないと、やはり電子データと似たことが言えます。
「第九」第1楽章展開部は、まさにそれを実感させてくれる代表例です。
・180-181小節:前の小節から、クラリネットとファゴットがあるべき段では乱暴にかき消されています。
・それが下段に書き直されています。これは189小節まで続きます。
・200-201小節:第1楽章ファーストヴァイオリンとヴィオラは消した上に書き直され、ヴァイオリンの方はそれで済まずに下段に書き直されています(判読不明になってしまったためでしょうか? 後の書き足しなのか、筆跡がまた違って細くなっています)。
・204-207小節:フルート・ヴァイオリン・ヴィオラに激しい書き直しが見られます。
・239-245小節(と読んだのですが240-247小節なのか?):このあと253小節までホルンが激しく抹消され、最下段に書き直されています。ヴィオラはちょうどこの頁だけ(ファクシミリ冊子上は48頁)消した上から新たに書かれています。
・ファクシミリ冊子の53頁目。255-258小節に当たる部分ですが、裏面はもともと音符が何も書かれておらず、長年スケッチと見なされていた紙とのことです。(裏面である54頁には他者の手になる1841年のメモ書きがあります。ファクシミリ冊子51頁には、やはり最上段に他人の鉛筆メモがある他は何も記入されていません。)この頁と全頁に配された紙にはベートーヴェンの手になるメモがあります。第53頁は、そうした性質にも関わらず、こんにちでは先ほどの荒々しくホルンをかき消した頁の墜の次(冊子50頁)で「×」で抹消された部分に挿入されるべきものの「決定稿」であることが判明しています。第53頁のメモはファクシミリ冊子付録の解説で判読されています・・・ここでは省略します。
・・・「第九」を仕上げた頃のベートーヴェンは、初演でのエピソードから推測するに、骨導音すらもどの程度聞こえたか分からない状態だったはずですから、これらの修正はピアノなどを用いて「耳で」なしたもの、とは考えにくいかと思われますが、そこは分かりません。
いずれにしても、最後の最後まで「より良い響き」を求め続けた真摯な姿勢がにじみ出る部分ばかりでして、もしそれがイマジネーションの中での改訂であったのならば(仮にピアノを使えたとしても、この点はやはり変わらないのかもしれませんけれど)、凄まじい「プロ」根性に圧倒されずにはいられません。
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