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2010年11月22日 (月)

「第九」ファクシミリのみどころ〜第1楽章呈示部

ベートーヴェン「第九」ファクシミリ、アカデミア・ミュージックで特価販売中。入手のチャンスです!



さて、入手しやすくなったおかげで目に出来たベートーヴェン「第九」の自筆譜ファクシミリですが、やはり見どころ満載です!

性能の低いケータイのカメラでの撮影ですし、スコア全面を捉えることは不可能ですので、詳細は是非、現物でご覧になって下さい。もっとたくさんのことが見えてくると同時に、既存の日本語刊行物だけで考えてよいかどうかを振り返らせてくれます。

第1楽章の呈示部から拾ってみたものをご覧頂いておきましょう。

1)冒頭部に指示されたメトロノーム速度
  ベートーヴェンは108から120としています。
  この速度については、印刷されるまでに、書簡等により指示が変遷しています。

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2)19-20小節に記譜されたスタカート記号(弦楽器部分)
  最近の印刷譜で楔形で表示されるようになったものは、このような縦長の「点」です。

1mov019

3)24-26小節のポルタート指示(ヴァイオリン〜ヴィオラ)
  20世紀中葉まで、これを「長め」に演奏した例は稀なのではないでしょうか?

1mov025026_2

4)74-75小節のホルンの訂正
  ホルンは当初はフルートと組み合わせようと考えられた模様です。
  インクの色合いから、これが消されたのと、
  フルートがクラリネット・ファゴットと組み合わされたのは同時点のことかと推測されます。

1mov074077

5)81-82小節、自筆稿での記譜は「d」。
  ベーレンライター版がこれを採用していることの是非判断には、
  他の初期資料との対比が必要です。
  なお、マインツのショット社が1826年に出したスコアでは「d」になっています。
  1863年のブライトコップフ&ヘルテル版では「b」になっています。

1mov081

6)108-109小節のフルート訂正
  いまの印刷譜にある対旋律が、訂正した上に書き直されています。
  訂正前はどんなであったか、は、校訂報告書などを参照したいところです。
  
1mov108109

7)116-117小節のsemple pp記入例〜読めません!
  この周辺は第2ヴァイオリンが第1ヴァイオリンと同じなので省略されたり、
  ヴィオラは途中から「チェロとユニゾン」と記されてまた省かれたり、と、
  それがまた強烈な書き癖で記入されているので、
  清書する人を泣かせたんじゃないかと思いやられます。
  スコア全面で見て頂きたい箇所です。

1mov116117

8)120小節ヴィオラは、当初は現行よりやや複雑な動きを考えていた
  以降、129小節まで同様の修正が施されています。
  赤のCresは浄書者に「クレッシェンドを書いてね!」の意図で強調して加筆したもの。
  この手の加筆は随所にあります。

1mov120vla

9)130-131小節ヴィオラは、先行する部分の変更により、下を消して新たに書きかえています。

1mov130131vla_2

10)132小節の、オーボエであるべきところに、
  現行の印刷譜に見られない音が書き込んであります。
  最下段に、関連する書き込みがあり、抹消されているのを目にすることも出来ます。
  以降、6小節間続きます。
  これが現行のかたちになった理由は、浄書稿等を参照しないと分かりません。
  校訂報告が読みたいところです。

1mov132woodwind_2

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