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2010年11月28日 (日)

【ご案内】大井浩明さんPOC第4回:平義久×杉山洋一(2010.12.15)

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大井浩明さんの第4回Portraits of Composersが近づきましたので、ご案内申し上げます。

2010年12月15日(水)19:00開演(開場18:30)
門仲天井ホールにて。

今回は杉山洋一さんと、没後5年となる平義久さんの作品です。

●平義久(1937-2005):《ソノモルフィー I》(1970)、《鐘楼》(1994)、《ピアノロジー》(1999)
●杉山洋一(1969- ):《君が微笑めば、それはより一層、澄んでゆく》(1995)、《間奏曲Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ》(2000)、《ビオンディネッタ》(2006)、《翔る》(2007)、《間奏曲V 「ブランル」》(2010、委嘱新作初演)

脇道に逸れますが、先日あるかたとお話ししていて、
「日本の演奏界はコンクール林立、優勝してもそのあとの仕事に恵まれない、で、停滞状況です」
と承りました。日本ではなく海外コンクールで優勝していまかなりご活躍の演奏家さんでも、じつは優勝して1年経ったときにはまるで仕事が無くなって、そのあと必死の営業活動をなさって今日を築いたのだ、なるお話も小耳に挟みました。
 
作曲の世界も、日本は似ているのでしょうか? いや、もっとえらい状況なのでしょうか?

これまでPOCで採り上げられた作曲家さんも、国内でどれくらい恵まれた活動をなさっているかとなると、「?」がつくかたのほうが多いかもしれません。

前回POCで採り上げられた伊左治直さんらと「冬の劇場」開始メンバーとなられており、俊英、と噂され、演奏活動面ではご活躍も伺える杉山洋一さんについては、今回下調べに録音を、と探しましたが、私ごとき狭い視野と世界の住人には、杉山さんが演奏に関わっていらっしゃるものは目に出来ても、杉山さんご自身の作品の録音にはたどりつけませんでした。POCで採り上げられる作品タイトルからして繊細な感性が窺える杉山作品をあらかじめ聴くことが出来ないのは、非常に残念なことです。
文献の方も、特別なものをとりよせなければ、通人でない者には杉山さんのアイディアが把握できない状況です。(『日本戦後音楽史』にも、その後杉山さんが弦楽合奏グループ「ミザン・ロージュ」を結成して日本人作曲家の作品も精力的に演奏したことくらいしか記述がありません。雅楽関係のご著書で知られる増本伎共子さんの作品などを手掛けていらっしゃいました。現在はイタリア【ミラノ】で教鞭をとられている由ですが、そこまでのフォローはありません。)
承るところによると、今回採り上げられる杉山さんの作品は優しさに満ちたオマージュ群とでもいうべきもので、(たいへん遺憾なことながら)おそらくは非常に豊かであろうその響きを拝聴できる希少で貴重な機会となりそうです。指揮活動がご活発のようで、イタリアの多くのオーケストラの他、東京交響楽団を振られた由。

杉山さんもまた然り、になってしまっているわけですが、優れた日本人音楽家が、どうしても活動本拠をヨーロッパにおいてしまって、海外では高い評価を得ているのに日本そのものではほとんど認識もされていない、という最右翼の例は、同時に採り上げられる平義久さんです。
彼についてはさすがに『日本戦後音楽史』もいくらか記述は詳しくなり、同時に、ここで述べたような状況が生まれた背景にも少し言及していますので、それを引いておきます。

・・・1966年にフランス政府給費留学生としてパリに渡り、そこを本拠に据えていた作曲家に平義久(1937〜2005)がいた。東京芸術大学で池内友次郎と長谷川良夫に師事していた平は、ジョリヴェやデュティユ、メシアンのもとで確実にメティエを深化させ、1971年にパリ音楽院でプルミエ・プリをとり、同年リリー・ブーランジュ賞も丹波(丹波明氏、1932〜)と同様に受賞している。/平は充実した静寂とも言うべき「間」に音楽的な生命を与え、そこに耳を傾けることを自らの日本的感性の発露とし、それを西洋的な手法に託した。しかしながら、その際になんらかの伝統音楽の要素を生の形で模すようなことはしていない。結果的に、音の余韻や音色といったものに対する繊細な嗜好や感受性が作品の中に盛り込まれることになる。(中略)しばらくパリで活動していた平の作品が日本の聴衆に紹介されたのは1974年のことであり、この年NHK交響楽団の定期公演で岩城宏之が《Chromophonie(クロモフォニー)》を取り上げてから、平は西洋の文脈で日本を見ている日本人作曲家という自らの位置を知らしめることになった。(下巻83-84頁)

・・・最後の部分に、「知らしめることになった」と綴らざるを得なかったこの部分の筆者の「苦渋」を、別の部分の記事と照合しながら感じてみると、苦笑さえ漏らしたくなります。

フランスで高く評価された平の作品が日本で演奏される機会は、80年代以降だったのであり、《室内管弦楽のための「彩層」》が水戸芸術館から委嘱、初演されたのも2002年になってからのことだった(同270頁)

以上から見て取れますように、第4回POCは、敢て日本に拠点を戻しながら、ヨーロッパをも常に視点に捉えている大井さんならではのプログラムです。

世界標準でみたときの「音楽界」とはどのようなものなのか、が、シリーズ中もっとも際立つ回になります。是非足をお運び下さい。

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