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2010年10月28日 (木)

ど素人 平曲考(2)曲節の初歩的概観

(1)入口(2)曲節概観(3)琵琶の手(4)平曲の構成(5)口説(6)初重(7)三重(8)中音(9)拾等(10)折声、差声、歌



さて、ど素人が平曲勉強を始めます。
平曲の特徴が把握出来れば御の字、というくらいのつもりでおりますので、あしからずご了承下さい。

「平曲」については優れたご研究がいくつもあるようなのですが、素人にとって残念なことに、ほとんどが高価な本ですので、あまりたくさん手元で読むことが出来ません。

手近に聞き所を耳にし、分かりやすい説明を読むことも出来るのは、

鈴木まどか著「CD-BOOK 声で楽しむ『平家物語』名場面」(講談社2004年)

で、ご著者による懇切丁寧なwebサイトやブログも開設されています。

HP:http://heikyoku.at.infoseek.co.jp/

ブログへはこちらから入れるようです。

「平曲」を録音でいちばんまとめて聴くことが出来るのは、名古屋の今井勉検校(昭和33年生まれ、前田流)による2009年発行の

「琵琶法師の世界 平家物語」7枚組+DVD1枚、コジマ録音 EBISU-13~19

です。リンクしたアマゾン以外でも入手が容易で、ついている薦田治子さんの解説も分かりやすい素晴らしいもので、これさえあれば、ここでこんな素人勉強なんか目にしていなくてもよろしいのではないかと思います。

という次第なのですが、私は洋楽(クラシック)愛好者としての目や耳から「どんなものか」を知りたいので、「平曲」を五線譜と関連づけて著された2冊の本から、大まかなところをまとめたり、それをもとに鑑賞したりして行きたいと思います。

音声は勉強に必要な範囲で短い引用をすることがあるくらいになっていくかと思います(鑑賞目標はひとつでして、そこには出て来ない曲節のサンプルまで少しはみ出て勉強はしたいと思っております)ので、是非、上記のCD等、あるいは実演の場に接してみて頂けましたらと存じます。



私の勉強のテキストは

・藤井制心 「採譜本 平曲」(S41、名古屋市教育委員会・平曲保存会)
・金田一春彦「平曲考」(1997、三省堂)

です。「平曲」そのものの譜を読んで勉強するとなると「平家正節(へいけまぶし)」を手にしなければなりませんが、そこまでは致しません。前記今井さんののCDについた解説に平易な説明がありますから、専門的なことへの入口は、そちらをご覧頂ければよろしいかと存じます。



さて、金田一春彦氏によりますと、
「平曲の一曲一曲はすべて『曲節』と呼ばれる部分の集合といえる。」(『平曲考』23頁)
とのことですから、音楽そのものとしての「平曲」の成り立ちを理解するためには、この「曲節」とはどんなものなのか、を知らなければならない、ということになります。
(藤井著では「固定した原楽型と”語句”を、接合組合わせた」ものと表現しており、同趣旨です。)
これは「平曲」についてまとめた著述には必ず載っていますが、代表的な曲節を、譜例として単純化しているのは、私のテキストにすることにした二著が代表的なものではないかと思います。

藤井著のほうは、それらを基本となる音の並び(旋法)として記していますが、金田一著では音階として記しています。今回はそれを対比してみます。なお、それぞれの「曲節」がどういう場合に使われるのか、については、今回は今井CD添付の薦田解説を参考にしつつ、金田一著によって簡単に記すに留めます。音列は藤井著のものを基本とし、それを金田一著により音階化したものは括弧の中に記します。金田一著の姿勢は移動ドをとっていますし、そのほうが分かりやすいのですが、音の芯の問題がありますので、藤井著の五線譜に従って固定ドとします。カタカナを中心の部分の音とし、その脇に「 ' 」をつけたものはオクターヴ高いことを、ひらがなで表わした音はオクターヴ低いことをあらあすものとします。

(蛇足【無視して下さって結構です】:藤井著の記す旋法には装飾的に加わることのある例外音までが含まれていると疑われ、それは併記する金田一著の音階には含まれない音になるのですが、それは藤井音列と金田一音階を比べてご覧になって推測下されば今回は充分であると思います。逆に、金田一音階には、その曲節に直接現れないものが推測で補足されているとみなせます。ただし、以上のことはまだ断定は出来ません。金田一著の著述にも錯綜が見られますが、体験によるものですので軽んじられません。作例で検証するのが最終的には妥当かと思っております。・・・読み誤りの点は、どうぞご指摘・ご指導下さい。)

<口説>くどき
最も多く出てくる基本的な曲節。

ミ・ラ・シ・ミ・レ:(レミ【ソ】ラシ~民謡音階:移動ドで「ソラドレミ」)


<初重>しょじゅう
代表的で平均的な曲節。【薦田】仏教音楽の講式の地の語りの曲節が取り入れられたもの。

レ・ミ・ラ・ファ・ミ・シ・ミ・し・ら:(ミファラシ【ド】~都節音階)


<中音>
細かい節回しが多い。【薦田】仏教音楽の講式の「二重」が取り入れられたもの。

ファ#・ラ・シ・ファ'・シ・ラ・ファ#・ミ・し・ら:(ミファ#ラシ【ド】~古今調音階)


<三重>さんじゅう
【薦田】情景描写・語句の説明などに用いられる。仏教音楽の講式の曲節が取り入れられたもの。

ミ’・ラ’・ファ’・ミ’・シ・ラ・ミ・し:(ミファラシ【ド】~都節音階)


<拾>
活発なリズムで戦闘場面を表わすのに多く用いられる。

ラ・レ’・ミ’・ラ・ソ・ミ・ら:(レミソラシ~民謡音階)


<指【差・刺】声>さしこえ
【薦田】ことばに近いリズムで速いテンポで「折声」の前後で段落を作る。

ラ・シ・ファ・ミ・レ・ド・し・ら・み:(【そ】らドレミソ~律音階)


<折声>おりこえ
【薦田】感嘆・詠嘆・宗教的な内容を歌う時に用いられる。

シ・ミ’・シ・ラ・ファ#・ミ・し:(ミファ#ラシ【ド】~古今調音階)


<強(甲)ノ声>こうのこえ
無精の雄叫びのセリフにワンセンテンス用いられ、以降、素声(しらこえ・・・ことばそのものになるのが原則

ラ・シ・ド・レ・ラ・ミ’・ド・シ・ラ・ミ:複合した音階か? 金田一著に断定的なまとめ無し。レミラシド。


<下音>げおん
(単純化された説明は、藤井著・金田一著・薦田解説のいずれにも無し)

し・レ・ラ・ミ・レ:(レミ【ソ】ラシ~民謡音階)


<歌>うた
和歌に付けられる曲節。一首のみなら上歌(かみうた)、二首続く時は二首目は低い下歌(しもうた)で歌われる。三首続く時は三首目は曲歌(きょくうた)と称されるが2例しかないとのこと。

シ・ミ’・ファ#’・ラ・ファ#・ミ・レ・ド・し・ら:(ミファ#ラシ【ド】~古今調音階)


今回は以上です。重ねてお願いですが、誤りは是非ご指導下さい。

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