« 山本裕之のまぢめないたずら(3) | トップページ | 松平頼則の「近代和声学」(『音楽芸術』誌連載第3回の文から) »

2010年10月12日 (火)

モーツァルト、完成。(阿部千春×大井浩明、2010.10.13)

いよいよ明10月13日です。・・・ちと直前に過ぎたかな??? (汗)

「阿部千春×大井浩明 モーツァルト:アウエルンハンマーソナタ作品2」(全6曲)

場所:近江楽堂(東京オペラシティ3F)京王新線・初台駅から直接行けます(歩5分ほど)。
開演:18:30〜(開場18:00)
料金:3,000円(全席自由)

Operacity_2

コンチェルトケルンを始めとするドイツ古楽界で本格的に活躍する阿部千春さんのヴァイオリン、作品の時代を超え、多様な鍵盤楽器を自在に操る大井浩明さんのフォルテピアノで、昨年の作品1に続き、モーツァルトが本当に自己を確立したと言える作品2(アウエルンハンマーソナタ)全6曲を演奏する、聴き逃せないコンサートです。

ヴァイオリンはYsayeをモデルとして古典期の内部状態に合わせたChristian Sager2003年制作のもの。
フォルテピアノはJohan Lodewijk Dulcken 1795のレプリカ使用、大田垣至さん2010年制作のものです。

楽器は時代を忠実に映しながら、いわゆる「古楽」とは一線を画す新鮮な響きがします。

お気軽にお越し下さい。



文献にも詳しい阿部千春さんによる作品解説は大井さんのブログに掲載されていますので、是非ご一読頂ければと存じます。

http://ooipiano.exblog.jp/15255153/

ここには、フォルテピアノを演奏する大井浩明さんがツイートしたものを引かせて頂きます。<言い得て妙>な言葉ばかりです。

「アウエルンハンマー・ソナタ集の完成度から察するに、1781年(25歳)の時点で、魔笛やドン・ジョヴァンニの『有名な』部分は、十分書けたと思われる。」

「アウエルンハンマー第3番第2楽章変奏曲を聴いて、ブラームスの六重奏を連想しない人がいるであろうか・・・ その間にベー七第2楽章と「死と乙女」があるにせよ。」

「アウエルンハンマー第1番第2楽章、コジ・ファン・トゥッテ。同第4番第1楽章、魔笛(第2主題等)。同第5番第1楽章、完全にドン・ジョヴァンニ、続くロマネスカによるパルティータ。同第6番第3楽章、初期ベートーヴェンと見紛う。全6曲を一度に弾くのは大変だけど、続けて弾くと見える風景も。」

「初期ベートーヴェン、つーか、チェロ・ソナタ第1番第2楽章(特に第2主題へ持って行き方)を連想する、っつー話か。アルタリア、デュポールつながり。。」



直前なのに慌てて概略を綴りますが、モーツァルトのこの作品2は、
・ヘ長調 K376(1781、ヴィーン)
・ハ長調 K296(1778、マンハイム)
・ヘ長調 K.377(1781、ヴィーン)
・変ロ長調K.378(1779/80、ザルツブルク)
・ト長調 K.379(1781、ヴィーン)
・変ホ長調K.380(1781、ヴィーン)
からなり、年代は括弧の中に記した通りの成立ですが、出版はこの曲順です。
今回は出版時の曲順で演奏されますが、それこそモーツァルトの意図を正しく追いかける姿勢であろうかと思います。
K379,376,377,380はモーツァルトがヴィーンに居を定める決心をして最初に書かれた室内楽作品としても重要です。
出版は1781年夏ですが、1783年にハンブルクでの匿名批評で
「これらのソナタは・・・作者の斬新な楽想と偉大な楽才の証跡に満ちており、まことに輝かしく、楽器にぴったりのものである」
と賞賛された曲集です。(『モーツァルト全作品事典』364-5頁、音楽之友社 2006)

最初のヘ長調ソナタは晴れやかさが身上であり、活き活きした両端楽章に挟まれた下属調のAndanteも伸びやかです。先の大井さんの言葉を参照下さい。

続くハ長調ソナタは力強さを備えています。

第3番に当たるヘ長調ソナタは、冒頭楽章でさらに活発さを増します。このソナタの中間楽章は、これもまた大井さんの言葉にあるように、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番の有名な変奏曲楽章を予告する大人びた憂愁を湛えた名作ですが、最終変奏はニ短調弦楽四重奏の終楽章に直結するものでもあるかと思います。メヌエットでしっとりしめくくるところが肝で、4番目に配置した変ロ長調の夢見るような旋律に円滑に繋がるようになっています。

第5番におかれたト長調ソナタがまた特異でして、冒頭のAdagio楽章が終わると、激しいト短調のAllegro楽章となります。「大ト短調」と呼ばれる有名な交響曲第40番の冒頭楽章より若々しく、おなじく「小ト短調」交響曲第25番より構成の入り組んだ、ト短調楽章の中でも際立った傑作です。

第6番におかれた変ホ長調のどっしりした作風は、曲集の最後を飾るにふさわしいものであり、このソナタの終曲となっているロンドは、彼の最後のピアノ協奏曲の終曲と同様の性質を孕みながら、調性が5度下であるために腰の据わった響きがします。

そのあたりの構成感を耳でお確かめ頂くことに、大変な意義があるかと存じます。

|

« 山本裕之のまぢめないたずら(3) | トップページ | 松平頼則の「近代和声学」(『音楽芸術』誌連載第3回の文から) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: モーツァルト、完成。(阿部千春×大井浩明、2010.10.13):

« 山本裕之のまぢめないたずら(3) | トップページ | 松平頼則の「近代和声学」(『音楽芸術』誌連載第3回の文から) »