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2010年9月22日 (水)

松下眞一著「西風にのって鐘は鳴る」目次:大井浩明氏《POC》第1回関連

日本人作曲家の作品を集中的に紹介する大井浩明さん《Portraits of Composers》(POC)、第1回2010年9月23日(祝)が近づきました。以降、2010年10月16日(土)、010年11月13日(土)、2010年12月15日(水)、2011年1月23日(土)です。1回券はローチケ(ローソンチケット)で(21日(火)までの取り扱い、その後は当日券となります)・3回パスポート・5回パスポートはopus55にて入手出来ます。当日演奏される野村誠さん作品の解説こちら



ツイッタでの第1回POC関連ツイートのまとめは、http://togetter.com/li/52350

ヨーロッパ在住の非常に優れた古楽奏者阿部千春さん(Vn.コンチェルト・ケルン等で活躍)による「バロックヴァイオリンコンサート」は10月8日(金)新高円寺のスタジオSKで。

上記の阿部千春さん・大井浩明さんによる「モーツァルト:作品2」昨年大好評の作品1に続きより充実の響きです。10月13日。(リンクでは大井さんの師カニーノとアッカルドの演奏引用で曲のサワリをご承知頂けます。)

その他、10月のコンサートは日が近づいたらまたご紹介します。

大井浩明さん《Portraits of Composers》(POC)、第1回で演奏される『スペクトラ』の作曲者が著した標題の書籍、本当は内容にまで触れたかったのですが、私の時間都合で申し訳ないながら、目次のご紹介にとどめさせて頂きます(末尾に1章から少しだけ引用します)。

松下氏は、生前の著書では「真一」の字を使っています。

本書「西風にのって鐘は鳴る----ヨーロッパの中での眼・ヨーロッパからの眼」は、1975年3月〜1978年1月まで「音楽の友」誌に連載されたものを加筆訂正してまとめられたもので、古書にときどき出てくる松下眞一氏の書籍の中では唯一音楽そのものについて語られたものであり、短気だったとされるお人柄も、重ねて厳しい文化眼も、ですが、併せてしかし、松下氏の優しさ、音楽受容に対する(硬派ながらも)柔軟な姿勢までが窺え、かつ、70年代までは日本の音楽関係の有名雑誌が掲載し得る言論も今に比べてはるかに自由だったことまでもが分かり、興味深い書物です。ご一読をお勧め致します。

I 1975年3月〜12月
  春のハンブルクに帰って
  モルダウ河は春のうたたね
  ハイデとばらの花
  とりとめもない随想など
  ドーナウ河は午睡のさざ波
  オルフとストラヴィンスキーの夢
  秋でもやっぱり眠い----の巻
  海豹の歌・イルカの歌
  ドイツ民謡について

II 1976年1月〜12月
  UFOの夢・白痴の歌
  ブレッドの昼の夢・バルカン特急の夢
  春一夜の耳の宴
  正論を吐くためには、いかに勇気が要るか!
  エレクトーン・フェスティバルの宵の夢
  ミザントロープの拷問台
  暑いトタン屋根の上のチビ猫の夢
  イヤーナ・嫌な・この上なく厭な夢
  Giacomo Manzoniとの再会
  『浄められた夜』へのエッセイ
  星を眺めてみた夢は----『星たちの息吹き』
  Silvester(除夜)の晩の思索

III 1977年2月〜1978年1月
  ベートーヴェンが逆立ちをしている、というとりとめもない夢
  すこしばかり批評について
  もう一度批評について
  帰りなん、いざ
  月光とナハティガールの園
  真夏の午後の夢
  Hirsauにて----ひとりの日本人との対話
  コモ湖畔での素晴らしき休日
  キャヴィア喰う、秋風の中のキャヴィア
  カナリア諸島での休息
  アドリア海に沿っての Vita Musivale
  春を呼ぶハンブルクでの夢

・・・「睡」とか「夢」の字が目立ちますが・・・普段よっぽど寝不足だったのか、ねむいねむい、といったような文句がしょっちゅう出てくるのも面白く感じます。(^^)



印象に残る部分がいくつもあるのですが、1ヶ所だけ(「ひとりの日本人との対話」から)。松下氏がよく怒る人だったという話を小耳に挟みますが、それは彼の義憤だったということがよく物語られていると思います。

私はまず、(この文を綴るきっかけとなった日本人と会話することになって・・・本文小略・・・ドイツの)空港についただけで、そう簡単に文明評論的意見を吐く厚かましさに驚き、その無邪気ともいうべき短絡化された思考の単純さ、あるいは単細胞な考察を、むしろ可憐だと思いつつ聞いていた。(大幅略)目下の日本では研究が恐ろしいほど遅れ看過されがちであるが、あのイスラムの文化がどんな大きな影響をヨーロッパに与えてきたことか。ヨーロッパとはそういうものだ。そして、そういうヨーロッパを謙虚に学び、それに脱帽しなければまず話にならない。(大幅略)人間が感謝の念を失わないことが大事なら、ヨーロッパの音楽文化、それに(邦楽人ではない以上)その西欧楽器を使える、ということに、もっと謙虚に感謝すべきではなかろうか。



念のためですが、松下眞一は別段手放しのヨーロッパ礼賛者ではなく、別の章ではヨーロッパにも迷信で目くらましされた人が少なくないことを(日本人もまたそうだ、としながら)、こちらは怒りをあらわにした口調で述べていることを注記しておきます。

今日現在、「日本の古本屋」サイトでは2件ヒットします。

http://www.kosho.or.jp/public/book/aimaisearchresult.do


野村誠さん・片岡祐介さん「音楽ってどうやるの」「即興演奏ってどうやるの」もっと早く知っていたかった好著でした。ご一読を強くお勧め致します。

oguraooi.jpg 日本で本場のカンツォーネを聴かせて下さることにかけてこれ以上の方はいらっしゃらない、青木純さんの今後のスケジュールは、こちらをクリックしてご確認下さい。

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コメント

 「気ままに…」さん、はじめまして。小生は「日本人作曲家」の作品の掘り起こしをライフワークにしているちょっと変わったオジサンです。よろしくね。

 松下眞一は目下再評価が待たれる日本人作曲家の最右翼ですが、大井浩明さんによるスペクトラ演奏会(京都と東京)は、歴史的快挙と言って差し支えありません。HNKFM「現代の音楽」が放送して当然の演奏会なのですが、果たして・・・。

 ところで、松下眞一の「西風にのって鐘は鳴る」は、一種の自叙伝のようなもです。詳細に読み込むと、1970年代の松下のドイツでの生活ぶりや交友関係、松下自身の音楽観や作曲観まで分かる大変貴重な資料の一つです。
 ここには、松下があの前衛の時代に音楽や作曲とどう向かい合ったかが如実に語られております。

 ○私の内部に深くひそんでいる”日本人的特性”を信じられなくなったら、私は一音符も書く必然性はなくなるのだ。

 ○本物の「前衛」とは、芸術がその芸術の新しい可能性を求めて、自らが闘い勝ち取ってゆくものである限り、あるいは・・・美の新しい可能性を探り求め、生命を賭けながらそれらを追求してゆくものである限り、そのような方向に進む力学(ディナミーク)こそ「前衛」と呼ばれるのであろう。前衛とは精神であって手法でなないのだ。

 ○ベートーベン。彼は本当に「私の内部」に宿っていた。・・・自分の”内なる存在”それ自身であった。

 などなど。
 
 ちなみに「天地有楽-ある作曲家の遺言-」は晩年のものですが、かなり角がとれ、落ち着いた筆致で綴られた回想記です。

 「気ままに…」さんもおっしゃるととおり、松下眞一は、生涯日本の(音楽界・作曲界の)閉鎖性を批判し続けた人でした。松下が寄稿した「音楽の友」誌は、やはり、一般の音楽ファンを対象にした雑誌でしたが、1960年から1980年20年間に松下が専門誌「音楽芸術」に寄稿した日本作曲界批判は、徹底していました。(これは、ヨーロッパ滞在での体験をもとにしており、今から見ると、実に正鵠を得た発言であったことが分かります。)
 1960年代には、日本で最も有名な作曲家TT氏とも激しくやりあったとか。これがため、彼の息のかかる音楽祭や演奏会(全て東京)では、松下の作品が演奏されることはありませんでした。
 だからこそ、今回の大井さんの演奏会(東京)の意味は計り知れないくらい大きいのです。
 
 すみません、独り言が長くなってしまいました。

 では。

投稿: ガキデカ部長 | 2010年9月27日 (月) 01時38分

ガキデカ部長さま

貴重なコメントをありがとうございました。
「天地有楽」は残念ながら古書でまだ見つけ当てておりません。見つけたおりには是非拝読したいと存じます。

松下作品の演奏会は遺憾ながらFMの収録はなかったかと存じます。引き継がれて行きたい音楽ですが、他にもっと演奏する人が増えるようにと大井さんも願っていることと思います。・・・まだあと20年かかるでしょうか?

他の作曲家さんにつきましても、また様々ご教示頂ければ幸いに存じます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

投稿: ken | 2010年9月27日 (月) 21時53分

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