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2010年8月28日 (土)

曲解音楽史72)先日の答え~音楽世界の十字路、バルカン

大宮光陵高等学校管弦楽団第24回定期演奏会、本日8月28日(土)です。横山幸雄さんと共演です。



同じく今日ですが、御殿場で小川隆さん他による「古楽器によるフルート演奏会」があります。

日本人作曲家の作品を集中的に紹介する大井浩明さん《Portraits of Composers》(POC)は、2010年9月23日(祝)、2010年10月16日(土)、010年11月13日(土)、2010年12月15日(水)、2011年1月23日(土)です。

阿部千春さん(Vn.コンチェルト・ケルン等で活躍)・大井浩明さんによる「モーツァルト:作品2」昨年大好評の作品1に続きより充実の響きです。10月13日。(リンクでは大井さんの師カニーノとアッカルドの演奏引用で曲のサワリをご承知頂けます。)


過去の音楽史関連記事はこちらの「曲解音楽史:総合リスト」からご覧頂けましたら幸いです。

先日の5つの音楽、答えはすべて、「その他」でした。(引用元CD:WDR WORLD NETWORK 28.300)
しかも、収録された場所は、国で言えばすべて、ただ一国、ルーマニアです。

この「国」とやらが、とはいえ曲者です。

ルーマニアや周辺地域(旧ユーゴなど)はバルカンの呼称でまとめられ、ウクライナ共和国を挟んで、黒海の向こう側のコーカサス諸国と向き合っていて、南はトルコと、北はロシアと接しています。
政治経済では、バルカンも、またコーカサス諸国も、支配していたオスマン・トルコが、必要から各地に分散配置したイェニチェリをもはや制御出来なくなった近代以降、今に至るまで混迷を続けており、私たちの目には「争いの絶えない地域」としての側面しか目についていないかと思います。
日本では少ない文献を探して読んでみますと(結局、最良かと思って買うに至ったのは、柴宣弘『バルカンの民族主義』山川出版社世界史リブレット45、1996年)、紛争はこの地域の錯綜した民族の威信が互いにバランスしきっていないことに起因し、誰しもがそのままの状態を望んでいるわけではなく、互いに互いを尊重する解決をまだまだ模索中であることが分かります。ただし、この地域がシルクロードの昔から流通上の要綱でありつづけているため、そこに周辺大国などがまた複雑に絡んでくるので、なかなか容易にはことがすすまず、苦悶の中にあるようです。
・・・今後取り上げる様々な世界の音楽についても、政治経済には概略の概略以上に触れるつもりはありませんので、今回も、この話はここまでにします。
ただ、これほど多様な音楽は、こうした苦難のなかから蓮の花が開くように浮かんで見えて来ている風景なのだ、と、私たちは宜しく承知しておくべきでしょう。

ルーマニアで採集されたこれらの音楽について、文字情報をご覧になったかたが
「ジプシー音楽ではないか?」
と仰って下さいました。
バルカンのジプシーは、現在では他地域のジプシーと同一民族だとの近世以来の(西欧側による)見方を自ら否定し、ロマを自称している模様です。近年では政党も結成しているとのことです。ごく最近、フランスから「ロマ」が強制退去させられたニュースはご存知のかたも少なくないかと思いますが、その送還先はルーマニアでしたね。果たして彼らは本当に「ロマ」なのでしょうか?まだ曖昧なのではないでしょうか?

いずれにせよ、「ロマ」を含む(?)ジプシー民族は、移動生活者であるが故に、さまざまな音楽の伝播に大きな役割は果たしてきたかとは思います。ただし、ルーマニア採集の音楽サンプルを、「ジプシー音楽」なる呼び名で一区切りにしてしまうのは、彼らが媒介してきた音楽の多様性を見失わせる危険をはらんだ行為になってしまうでしょう。

ジプシーと言えば、定番は激しく旋回するヴァイオリンの調べ、ということになるのでしょうが、ヴァイオリン以外にクラリネットやトランペットなども活躍します。では、それはジプシーと呼ばれた人たちが編み出したのか、となると、技巧的な節回しはその可能性が高いかと(主観的に)推測はするものの、素朴な原型と思われるものはマケドニア方面で収録された演奏で聴くことができます。
ヴァイオリンのほうは、ルーマニアの例ほどではないにしても、ヨーロッパやアメリカに広がったフィドルの奏法に似ています。クラリネットを含む響きは中ヨーロッパに伝播したのではないでしょうか?

「私はぶどう畑に行く」
私はぶどう畑に行く

角笛は古代からの流れを勘案すると中東からの伝承が想像され、バルカンから西はアルプス山麓、東は遠くチベットまで流れて行った、とも考えたくなります。
歌唱もチベット、モンゴルに似た要素を豊かに持ちます。
とりあえずこれも、他地域のものではなく、ブルガリアンポリフォニーに結びついたであろう(アルバニア国境に近い)北ギリシャの例でお聴き頂いておきましょう。~こうした様式はグルジアにもあるそうです。

「ポゴニアニの歌」
ポゴニアニの歌

元にしたルーマニア音源のCDでは、残念ながら、それぞれどの民族による演奏なのかが明確ではなかったのですが、いずれにせよ、ユーラシアを横断する音楽が、少なくともルーマニアでまとめて聴かれたこと、さらに北ギリシャでも同様であることから、これらバルカンは近年なお、ロマの人々に限らなかっただろう多くの移動の民が行き交いあい、彩りにあふれた精神を交換しあった文明の十字路でありつづけていたこと、したがって、もしかしたら現在一般化している「国家」の常識で線引きすることには馴染まないのかも知れないことを、はっきり物語っているかと思います。(ほんらい、「文明の十字路」はNHKの《シルクロード》でコーカサスを採り上げたときに使用された言葉だったと思いますし、この地域について書かれた新書でも用いられています。)

ただ、これらの録音は主に1970年代(ルーマニアではチャウシスク政権時代)のもので、現在も同様に耳に出来るかどうかは分かりません。
二十世紀中葉に、これほど多様な音楽がバルカンで展開されていたことは奇跡だったのだ、とは思います。
この奇跡が、なお残ってくれていることを、いまは切に祈るのみです。

今回の音源は「ギリシア北部の音楽」KING RECORDS KICC5757(原盤アウバトロス)によります。あといくつか上げたかったところでした。


oguraooi.jpg 日本で本場のカンツォーネを聴かせて下さることにかけてこれ以上の方はいらっしゃらない、青木純さんの今後のスケジュールは、こちらをクリックしてご確認下さい。

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