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2010年5月19日 (水)

リスト考(3)創作の様式から

上田美佐子さん(中世フィドル・ヴァイオリン)コンサート
・5月20日(木)船橋市民文化創造館
・5月22日(土)旧安田楠雄邸(千駄木)
・5月30日(日)西荻窪のサンジャック
・6月16日(水)日本福音ルーテル東京教会
・7月11日(日)絵本塾(四谷)
です。ユニークです。是非足を運んでみて下さい。詳細は上記お名前のところにリンクしてあります。



リスト考 (1)(2)・(3)


さて、他作曲家の編曲を中心にリストを観察してきましたが、自身の作品には何を念頭に取り組んでいたのか、を、少し見ておきましょう。
大規模作はさておき、単独作ないしその組み合わせからなる創作に、まず彼なりの感覚を掴む材料を求めたいと思います。

簡便を図るため、またショパンとの対比をしますが、二人に共通する事象から挙げておくと、後で見る差異の特徴もよく分かります。
共通点・・・二人とも、ソナタには、さほどの拘泥をみせなかったこと、が、それだと私は感じます。
ソナタ作品がまったくない訳ではない。ですが、先輩・師匠格のシューベルトやベートーヴェンのように、それを多作しようとは、ついにしませんでした。
まとまった作品として「技術的に高度な」練習曲の集合体を作っているあたり、似通った発想があります。このあたりに、前世代の様式から離れた創作への欲求が見られ、同じことがシューマンにも当てはまることに思いあたらせてくれもします。

ショパン「黒鍵のエチュード」

モニク・アース TELDEC WPCS-21135

リスト「MoltoVivace」

イェネ・ヤンドー NAXOS 8.553119

ところで、練習曲の性格はそれぞれの発想の違いを浮き彫りにしているのでして(ショパンのものはピアノ演奏以外に考えられませんが、リストのものはオーケストレーション出来る性格を持っています)、ショパンは本質的に「単旋律を様々に美しく飾る」スタイルに執心した曲作りをしているのに対し、リストは自由に旋律を「捻曲げて」ゆくことによる展開を目指しているようです。
この差異は、二人が手を染めた作品種類の差異に直結しています。
ショパンは舞曲に姿を借りた作品を中心に取り組んで、幻想曲は一作しか残しませんでした。
リストには、数多くの幻想曲があります。
かつ、ショパンはピアノ独奏曲にほぼ集中したと言えるほどであるのに対し、リストは幻想曲さえも管弦楽付きのものを産み出し、ついにはピアノ無しの管弦楽曲にも、手法として幻想曲に通じる「交響詩」なる領域を設けるに至り、「展開」志向を前面に打ち出します。

ショパンとリストの、この差異の背景はこうなのだ、と安易に断じることはできませんから、いまは、ショパンがピアノ教師としても明瞭なイメージをもって知己の人々に回想されているのに対し、リストにはその形跡が希薄である、ということを挙げておくに留めます。

以上から最小限リストについて言えるのは、彼は「ピアノの音楽家」だったと見なすのは妥当性に欠けるかも知れない、ということかも知れません。

彼の管弦楽作品が、ほとんどと言えるほど「レ・プレリュード」以外に演奏会の定番プログラムになっていないのは残念です。「タッソー」や「オルフェウス」の音響設計もまた、ヴァーグナーはともかくも、ドイツならばリヒャルト・シュトラウス、ロシアならばチャイコフスキーに繋がる確かなものを持っているのですから、後期ロマン派への影響がどのようにして達成されたか、を、私たちは再度確かめ直す必要に迫られるかも知れません。
リストが次世代の西欧音楽形成に果たした役割は、編曲による前人・同時代人の作品普及だけにとどまらなかった、とは、彼の管弦楽作品を耳にするとき、素直に抱く感慨です。

オーケストレーションに関しても勿論ですが、より直接的には、ピアノと管弦楽による「死の舞踏」は、怒りの日の旋律共々、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」に継承されており、二作は変奏曲形式であるところも共通しています。

後の世代に向かって云々も、なのですが、「ソナタ」によらない音楽の創造は、さて、先人からの単純な脱皮だったのかどうか、というあたりが、音楽の系譜の上でのリストを把握するための、おそらく最後のポイントではないかと思います。

それについては、またあらためましょう。


oguraooi.jpg 2台のピアノによる「モーツァルトピアノ協奏曲全曲演奏会」第2回決定しました。また掲載します。とりあえずバナーに大井さんのブログ記事をリンクしました。なお、門仲天井ホールで年9月に「松下眞一《スペクトラ》全6曲(歿後20周年)+野村誠」演奏会が行われる模様です。大井さんの新譜(ベートーヴェン:ヴァルトシュタイン・アパッショナータ)、HMVにリンクを貼ってあります。
oguraooi.jpg 日本で本場のカンツォーネを聴かせて下さることにかけてこれ以上の方はいらっしゃらない、青木純さんの今後のスケジュールは、こちらをクリックしてご確認下さい。

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