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2010年5月26日 (水)

リスト考(5)寄り道2:演奏会の変遷

上田美佐子さん(中世フィドル・ヴァイオリン)コンサート
・5月30日(日)西荻窪のサンジャック
・6月16日(水)日本福音ルーテル東京教会
・7月11日(日)絵本塾(四谷)
です。ユニークです。是非足を運んでみて下さい。詳細は上記お名前のところにリンクしてあります。



oguraooi.jpg 2台のピアノによる「モーツァルトピアノ協奏曲全曲演奏会」第2回決定しました(京都7月3-4日、東京7月27日)。とりあえずバナーに大井さんのブログ記事をリンクしました。なお、門仲天井ホールで9月23日に「松下眞一《スペクトラ》全6曲(歿後20周年)+野村誠」演奏会が行われます(確定)。大井さんの新譜(ベートーヴェン:ヴァルトシュタイン・アパッショナータ)、HMVにリンクを貼ってあります。

過去の音楽史関連記事はこちらの「曲解音楽史:総合リスト」からご覧頂けましたら幸いです。

リスト考 (1)(2)(3)(4)・(5)


前回は「ソナタ」も、とくに冒頭楽章によく用いられる「ソナタ形式」は、つまるところ声楽のアリアに渕源を求め得るのではないか、なる主旨でふらふらしました。
リストは、それに拘泥しない傾向が顕著だった早い時期の創作者でしたが、背景には、音楽会の様相の変化も絡んでいるのではないか、との勘繰りから、今度は、彼の時代から百年遡ったあたりのものからの変遷の実例を、若干見ておきましょう。
素人が手に出来る書籍で、ある演奏会の全プログラムが分かるものは、当たってみましたら、意外に少ないのでした。結果的に、ヘンデルの1例を除き、ドイツ・オーストリアの例に留まり、かつ殆んどがウィーンでの例となりました。したがって、ここに挙げたサンプルで結論を出すのは早計なのですが、一応、だいたいリストのピアニストとしての活躍時期を境に、それまで必ずと言っていいほど音楽会に含まれていたアリアが、器楽のコンチェルトにとってかわられていったように見えます。
また、プログラムの短時間化・・・曲数の減少が、リストの晩年あたりから始まっているようにも思います。
シューベルトの音楽会は特殊例ですけれど(いや、こうした会は案外沢山あって、そちらのほうが主だったかもしれない気が、実はしているのですが、例を見いだせません)、彼のこの音楽会の直後にパガニーニのウィーン公演が行われて大評判をとったように、この時期は器楽ヴィルトゥオーゾのリサイタルが浸透しはじめている点は、気を付けておかなければならないかも知れません。ショパンも、あるいはヴァイオリンの伴奏を務めたブラームスも、そうしたなかで育っていくのでした。
・・・リストまた然り、だったわけです。
で、前にかかげたことのあるリストのプログラム例は、アリアを元にしたファンタジーをふんだんに取り込んでいたことを想起すべきでしょう。
今回の例からは、裏のこのような事情は見えません。ですが、音楽会の器楽化の進行には、歌が器楽へと編作されたリストのリサイタルのような動きが何か影響を持っていたことをも想像しておきたい気がします。
なお、リストと同時代の例をよく情報化してくれているシューマン「音楽と音楽家」からは、この書物がよく読まれていると考え、引用は避けました。

能書き以上。
以下、例示。

ジョージ・フレデリック・ハンデル(ヘンデル)のための顕彰演奏会(伝記【三澤寿喜】p.116)
1734年3月28日(ロンドン、ヘイマーケット劇場)
第1部:アンセム「鹿が冷たい谷川を慕いあえぐように」
第2部:オラトリオ「デボラ」のアリア
第3部:戴冠式アンセム、アリア、二重唱

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(伝記【久保田慶一】p.236)
1779年三位一体後の第二日曜日(ハンブルクの教会)
第1部〜フリーデマン・バッハ:カンタータ「地獄の罪業を我らから取り除き給え」
第2部〜テレマン:カンタータ「私につねに優しくあられますように」
第3部〜ヴァイオリンソロを伴う小曲、ドイツ語合唱楽章

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(ドキュメンタリー【ドイッチュ・アイブル】p.169)
1784年4月1日(ウィーン、帝室王室国民宮廷劇場)
1)トランペットとティンパニ付きの交響曲
2)アリア(男声)
3)フォルテピアノ協奏曲(新作)
4)交響曲(新作)
5)アリア(女声)
6)管楽器とピアノのための五重奏曲K.452
7)アリア(男声)
8)フォルテピアノによる幻想曲
9)交響曲

ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(伝記【大築邦雄】p.89)
1808年12月22日(アン・デア・ウィーン劇場)
第1部
1)「田園」交響曲
2)アリア「ああ、不実なる人よ」作品65
3)ハ長調ミサ抜粋
第2部
4)ハ短調交響曲
5)ラテン語讃歌
6)ピアノ独奏の幻想曲
7)合唱幻想曲作品80

フランツ・シューベルト(伝記【村田千尋】p.114
1828年3月26日(ウィーン、楽友教会ホール「赤い針鼠」)
1)弦楽四重奏曲
2)4つの歌曲(「十字軍」・「星」・「漁師の歌」・「アイスキュロスよりの断片」
3)グリパルツァーの詩による「セレナーデ」
4)ピアノ三重奏曲
5)歌曲「流れの上で」(ホルンとピアノにより伴奏)
6)歌曲「全能の神」
7)二重合唱「戦いの歌」

ウィーンフィルハーモニー第1回演奏会(「王たちの民主制」p.79)
1843年4月3日
1)ベートーヴェン:第7交響曲
2)ベートーヴェン:アリア「裏切り者」
3)モーツァルト:「劇場支配人」序曲
4)ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第2番
5)モーツァルト:コンサートアリア
6)ケルビーニ:「メデア」からの二重唱

ウィーンフィルハーモニー演奏会(同上p.215)
1870年11月13日
1)ウェーバー:「オイリアンテ」序曲
2)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
3)ルードルフ:「金髪のエックベルト」への序曲
4)シューマン:交響曲第3番

ウィーンフィルハーモニー「モーツァルト記念碑基金のための演奏会」(同上p。283)
1)「魔笛」序曲
2)ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲
3)Ave verum corpus
4)ピアノ協奏曲ニ短調
5)ト短調交響曲(K.550)


oguraooi.jpg 日本で本場のカンツォーネを聴かせて下さることにかけてこれ以上の方はいらっしゃらない、青木純さんの今後のスケジュールは、こちらをクリックしてご確認下さい。

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