« ちから | トップページ | 最近のショパン演奏会のエピソードから:バッハ・モーツァルトのフォルテピアノ問題(1) »

2010年3月14日 (日)

青木純さんと「テルマエ・ロマエ」

日本で本場のカンツォーネを聴かせて下さることにかけてこれ以上の方はいらっしゃらない、青木純さんの「おすし de イタリア」は満員御礼、しかも定員オーバーでの終了でした。
oguraooi.jpg



F9120周年記念 ナーシャムジカマンドリンコンサート(川口雅行氏を迎えて)、大好評終了です。マンドリンアンサンブルにチェロとコントラバスが入るとオーケストラみたいな響きがする、との反響もあった模様です。

oguraooi.jpg

2台のピアノによる「モーツァルトピアノ協奏曲全曲演奏会」(東京3月18日:小倉貴久子さんと大井浩明さん、京都4月3日・4日:河野美砂子さんと大井浩明さん)詳しくは記事中のリンク先をご覧下さい。バナーをクリックすると大井浩明氏のブログ記事を閲覧出来ます。2月27日の「松下眞一追悼個展」は大好評終了。音楽評論家、白石知雄さんが「はてな」でまとめていらっしゃる当日までの経緯、当日の充実ぶりが手に取るような文章で拝読できます。
なお、大井さんの新譜(ベートーヴェン:ヴァルトシュタイン・アパッショナータ)が発売予定日より遅れましたが入手容易になりました。HMVにリンクを貼ってあります。Amazonではまだ入手できないようです。



Thernae個人的な思いもあり、それがあふれちゃってまとめてのご報告が出来ませんでしたので、あらためます。・・・「思い」というのは、亡妻がイタリアの歌が大好きだった、でもホンモノのイタリア語では歌えなかった、ということでして、青木さんのお歌をきかせてやりたかったな、というものです。以下、それは交えずにお話を致します。

3月12日、明治五年創業の老舗「初音鮨」本店さんで、お寿司を食べながらカンツォーネを聴こう、という面白い企画がなされました。存じ上げませんでしたが、お寿司を食べながら音楽を聴くという企画、初音鮨さんでは、なんと21回目なのだそうでした。国立音楽大学ご出身の声楽家、佐藤とし子さんのコーディネートですが、第1回はなんとお寿司屋さんにグランドピアノを持ち込んでのオールショパンプログラムだったそうで、まーびっくり、です。

http://goloso204.exblog.jp/10860158/

で、21回目が日本随一のカンツォーネ歌いである青木純さんの出番なのでした。

青木さんは2005年にイタリア大統領から"L'Onorificenza id Cavaliere sell'Ordine della Stella Solidarieta Italiana"(イタリア連帯の星騎士勲章)叙勲をされた、日本きってのイタリア通で両国の文化交流に尽力なさっていらっしゃいました。そのいちばんのご成果はカンツォーネの精力的な発掘・ご普及活動であり、今回のプログラムの中でもご披露されましたが、カンツォーネの原点であるナポリ語での歌唱はイタリアでもおそらく高い評価を受けていらっしゃるかと存じます。サンタ・ルチアも、青木さんのお歌いになるのは普及している歌詞ではなく、ナポリの言葉によっていらっしゃるので、お聴きになると、どなたもたいへん新鮮な印象をお受けになることと存じます。

努力家でもいらっしゃり、こんな栄誉をおもちでいらっしゃるのに、青木さんの魅力は、いつでもどこにでもギター片手にカンツォーネをお歌いに出かけ、落語家もびっくりの本格的な話芸を繰り広げてお客を笑いの渦に巻き込んでおいて、歌でストンと泣き落とす、という、ちと歌舞伎の「色悪」みたいなキャラクターで、青木さんを追いかける常連さんに妙齢の美人さんが多くていらっしゃるのを目撃して、まったくもってこれまたびっくり仰天でありました。

イタリア留学からご帰国なさった当初は劇場作品(オペラ・オペレッタ・ミュージカル)でご活躍、現・松本幸四郎さんとペアを組む役どころで「ラマンチャの男」にもご出演なさったりしていましたが、ギターを弾きながらお歌いになってしまえるので、幸四郎丈や演出家さんの「陰謀」にはまり、普通は別に専門のかたが扮する楽士をも二役で引き受けさせられて
「ギャラはねえ、一人分なんですもんね〜」
だったり、と、愉快な活動ぶりでいらしたようです。
オペラの方でも、今なお、三木稔作品には、作曲家のイメージ中では欠かせないご存在でいらっしゃいます。(1983年に260回あまりも公演された三木氏の「うたよみざる」で主役をおつとめになったときのさわやかな印象が、三木氏のこころに営々と生き続けているようなのであります。)

カンツォーネ歌唱活動を本格化したのは、CDにご自身がお綴りになっているところによりますと、いまペアを組んでいらっしゃるギターの柴田杏里さんがスペインから帰国したのと出会った1985年以降だそうで、昨日も柴田さんとのペアで、そこにフルートの野口マリ子さんという華を添えての楽しい会でした。
14曲プラスアンコール1曲お歌いになるときに、どの歌の前にも豊かで温かなお話で曲の由来を分かりやすくお話しになって下さるのも嬉しいものでして、たとえばプログラム最初の「フニクリ・フニクラ」は登山鉄道の会社がお客に恵まれず窮余の策で作り上げた歌であり、この歌の大ヒットでかなり儲かった・・・これはご存知の方もいらっしゃるエピソードかも知れません・・・、なんてお話を、無能な私にはとても再現できない、志ん朝ばりの名話芸でぱぱっと繰り広げて、それでもうお客の心を掴んで話さないのです。

ウェブ上でも青木さんの歌声は聴けますし、CDだとまとめてどん、で聴き惚れられもするのですが、「なま」を拝聴すると、青木さんのお声に含まれる豊かな色合いが、どうもマイクの類いでは捉えきれないようで、ほんとうに、チャンスがおありでしたら是非、実際にお歌いになるのを聴いて頂きたいと存じます。豊かな幅を持ちながら、鋭く突き抜けるのではなくて、やわらかくしみこんでくるように響く、とても美しいテノールです。

こんな青木さんが、昨日のコンサートにお客様への景品(ある歌を使っての数当てゲーム)にお持ちになったのが、コミック「テルマエ・ロマエ」でした。

これはもう知る人ぞ知る、ヤマザキマリさんの傑作で、古代ローマの設計技師が現代日本のさまざまな風呂・・・銭湯、露天風呂、ショウルーム等々・・・にタイムスリップしては、その風呂の味わい方の多様さに舌を巻いて技術を身につけてまた古代ローマにタイムスリップで戻り、ローマの風呂の世界に新風を巻き込む、との奇想天外なストーリーにひきこまれます。このローマ人技師は、しかし、タイムスリップしていることにも気づかず、その行き先が日本という国だということも知らないままで、この先の展開が楽しみです。

この「テルマエ・ロマエ」、コミックビーム誌に不定期連載だったもの5話をまとめて単行本コミックとしては去年暮に1冊目が出ましたが、2月初旬にもう第4刷となったうえに、そのときにはもうなかなか手に入らず、増刷の上がりまで1ヶ月待ちをさせられるほどの人気を勝ち得ています。(すでに古本でも定価より高値なものあり)、で、青木さんが勧めるだけあって、話が奇想天外であるにも関わらず、話のあいだあいだに古代ローマの「正しいお風呂」知識が楽しい読み物として挟み込まれているという、1冊で2度おいしいコミックでもあります。

人気沸騰で急遽コミックビーム誌(月刊)4月号には、それを記念して巻頭カラーで掲載され、付録に「描き下ろし特製【テルマエ・ロマエ】てぬぐい」が付きました。ちと「東海道五十三次」を思わせる絵柄なのが愉快です。(こちらも昨日発売でしたのに、もう新品を超える値段の古本が出ています!)

脈絡がないようですが・・・イタリアをこよなく愛する青木さんがファンになるくらいだから、これは必読でしょう。

追加:連載化に当たってのヤマザキマリさんの「補足」

話をカンツォーネに戻しますと、このコミックを景品にしたゲームは、「ロ・グアッラチーノ」という歌を用いたものでして、これは雀鯛がお嫁さん探しに出てイワシのお嬢さんに惚れたはいいがライヴァルのマグロに喧嘩をふっかけられ、それがきっかけで海中が大戦争になる、というストーリーです。で、この中に出てくる魚の数をピッタリ当てた人に「テルマエ・ロマエ」進呈、というものでした。・・・あー、先にリンク先の記事を見つけとくんだった!!!

もうひとつ傑作だったエピソードは「帰れソレントへ」にまつわるものですが、これはWikipediaにも載っていないので青木さんのご説明をもとにちょっとだけ綴りますと、ソレントでヴァカンスを過ごしていた1902年当時のイタリア首相が滞在先のホテルのオーナーからとある陳情を受けて不愉快になっていた、で、オーナー(市長でもあった)が慌てて根回しして急遽夜会を開いてこの歌を首相に献呈、すっかりそれが気に入った首相はめでたく陳情を受け入れた、との話です。陳情の内容は、「ソレントにも郵便局を設けて欲しい」というものでして、当時ソレントの街には郵便局がなかったのだそうです。それで、ソレントのお年寄りはこの歌をいまでも「郵便局の歌」と呼んでいる由。

青木さんのCD「遥かなるサンタ・ルチア」Ufficio Goloso CVLR-0601も、是非お聴き下さいませ!

http://www.1101.com/store/bag/zampano/shop_song.html

青木さんの当面のコンサート等の予定はこちらをご覧下さい。


L4WBanner20080616a.jpg


クラシックCD・書籍検索に便利!バナーをクリックして下さい!


sergejOさんの記事の便利なインデックスも是非ご活用下さい。

|

« ちから | トップページ | 最近のショパン演奏会のエピソードから:バッハ・モーツァルトのフォルテピアノ問題(1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 青木純さんと「テルマエ・ロマエ」:

» テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX) |ヤマザキマリ [得アマゾン探検隊]
テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)ヤマザキマリエンターブレイン 刊発... [続きを読む]

受信: 2010年3月22日 (月) 12時22分

« ちから | トップページ | 最近のショパン演奏会のエピソードから:バッハ・モーツァルトのフォルテピアノ問題(1) »