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2010年2月28日 (日)

DVD:山田一雄指揮/NHK交響楽団

日本で本場のカンツォーネを聴かせて下さることにかけてこれ以上の方はいらっしゃらない、青木純さんの「おすし de イタリア」は、3月12日です。
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2台のピアノによる「モーツァルトピアノ協奏曲全曲演奏会」(東京3月18日:小倉貴久子さんと大井浩明さん、京都4月3日・4日:河野美砂子さんと大井浩明さん)詳しくは記事中のリンク先をご覧下さい。バナーをクリックすると大井浩明氏のブログ記事を閲覧出来ます。なお、大井さんの直近の催し物は3月1日3日、芦屋山村サロンでの「J.S.バッハ/フランス組曲(全6曲)&イギリス組曲(全6曲)」です。2月27日の「松下眞一追悼個展」は大好評終了、「暗いとこでダイヤモンドが光ってるみたいにきれい」等の感想が寄せられています。



流行歌の世界でも、その他の音楽世界でも、とくに放送文化の変遷で、「誰でも知っている」存在、というのが少なくなってきている昨今、中堅として頑張っておられる質の高い皆さんへの注目度を上げて行くことが大変に重要だと感じております。

惜しまれつつ亡くなった河合隼雄さんのご著書の中に、こんなくだりがあります。
「『昔はよかった』と言いたくなったら、自分も『時代の変化についてゆけなくなったのか』と考えてみる必要があるだろう。」
(新潮社「こころの処方箋」39節、現在は文庫版も発刊されている由)

そんな中、第二次世界大戦後65年経ち、その間蓄えられたはずの重要な記録がなかなか一般人の手に入りにくい、という状況が生まれだして久しくもなりました。それはそれで、経験してきた世代としては、これからの「改善」のために、当時の最良のものをなるべく選りすぐって
「まだこんなものだったのよ」
と言って次世代に伝えられる直接的なメディアを呈示しておく責任はあるのではないかと思います。

戦争の焼け野原から復興していく日本は、1970年の万国博覧会誘致の際にははっきりと「進歩と調和」という言葉を打ち出しましたが、「進歩」志向が優先され、経済は成長一辺倒であると信じ込まれ、のどかな過去は切り捨てられ、「調和」のほうはあまり省みられなかったのではないかと感じております。私たちはそのことへの反発の上に、ではなく、延長線上で生きているのだ、という認識は、非常に大事なことなのかと思われます。

Yamakazu指揮者:山田一雄は、そうした時代を駆け抜けた多くの人々の中でも、とびきり面白い個性の持ち主でした。
山田一雄は、戦前の山田耕筰・近衛秀麿(戦後のオーケストラ音楽にも貢献)・信時繁、戦後の團伊玖磨・黛敏郎・芥川也寸志・八代秋雄たちの狭間をぬって生きてきた、あるいみ谷間の世代的な存在の貴重な一人でした。専業の指揮者、という点では、もしかしたら日本では最初にそういう生き方を選択した人ではなかったかと思います。自分でも創作活動をしていながら、作品リストによると、1963年の合唱曲を最後に作曲は(公には)しておらず、以後、1991年の死去の年まで指揮活動に専心しています。本人も
「作曲を断念した<・・・その分だけ>指揮者として、より光らなくてはならない」
と決意をした、なる言明をしています(音楽之友社『一音百態』p.129、1992刊)

神奈川新聞への連載を元に死後出版された『一音百態』の中に自分でも書いている通り、小柄な体で力みすぎるくらい力んで活発に動き回り、指揮台からおっこちたり、「田園」を振らなければならないときに「運命」の冒頭を振ってしまったり・・・遅刻魔でオーケストラに途中まで指揮無し演奏会をさせたり(ソリストが指揮をとって代わったり)、と、じつに話題に事欠かない生涯を送った人物でしたが、彼がいなければ現在の日本のオーケストラがマーラーやショスタコーヴィチを演奏できる水準に達しなかった可能性もあり(「千人の交響曲」日本初演者、芥川に先んじてショスタコーヴィチ第五を指揮)、創作にも新風を、という次世代をも支え、彼らの作品の初演なども手がけながら邁進してきた音楽家でした。

ポストに固執しない活動をしていたこともあったのでしょうか、残念なことに音声資料も映像資料もなかなか整わなかった期間が、死後しばらく続いていました。それがだんだんにCD化された演奏も増え始め、このたび、大変嬉しいことに、NHKエンタープライズから、2枚のDVDにまとまった映像が発行されました。

オーケストラはNHK交響楽団、収録曲は次の通りです。

・マーラー「交響曲第5番」(1985)
・黛 敏郎「曼荼羅交響曲」(1976)
・モーツァルト「プラハ」・交響曲第14番・「ジュピター」(1985・1990)

これに、NHKで1994年12月24日に放映されたドキュメント番組(約45分)が併集されていて、山田氏本人の肉声が聴けるのがうれしいところです。

さすがに日本人は日本人作品がお手の物で、黛作品がいちばん自然な演奏に仕上がっており、マーラーは天下のN響でもいまを遡ることたった四半世紀の頃にはまだ乱れ無しには演奏しきれなかったこと、モーツァルトの演奏に固さがはっきり見えること(85年にくらべると90年は柔軟さが増しています)、など、オーケストラの技術は確実に現在の方が上がっていることを知りえる点でも貴重です。が、演奏技術の上がった演奏に比べて、むしろこちらの方が面白く、胸に迫るものもあるのはなぜだろうか、というのは、「懐古趣味」をかなぐり捨てても湧いてくる疑問ではあります・・・いや、やっぱりこれは感傷なのでしょうか?

ともあれ、オーケストラメンバーが、その持てる能力をゆとりをもって発揮するよう仕向けるのは大変うまい人でありました。ドキュメントのリハーサル風景の方では、メンバーが笑いをこらえながら演奏している様子まで映し出されていて、愉快な気持ちにさせられます。
・・・本編のモーツァルトの14番では先頭席に座った女の子が熟睡しているのがカックリもんですが、クラシックを聴きにくるお客さんなんてこんなもんだったのかなあ、との視点で見るなら、これまた貴重な記録と言えるのかもしれません。

限られた資産と能力の中で、日本人がいかにクラシックのオーケストラ音楽をとりいれ、こなし始めて行ったか、そのために、いかにメンバーからのびのびした音を引き出すかの真剣勝負をした人物がいたか、の最重要映像資料です。是非、ご一見をお勧め致します。


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