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2010年1月23日 (土)

おぼれないひと

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コンサート「麿と素敵で愉快な音楽家さん」は2月7日、新宿オペラシティ内の近江楽堂で。顔ぶれも曲目も魅力的です。是非お出かけ下さい。画像クリックでご案内記事をご覧頂けます。



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2台のピアノによる「モーツァルトピアノ協奏曲全曲演奏会」(東京3月18日:小倉貴久子さんと大井浩明さん、京都4月3日・4日:河野美砂子さんと大井浩明さん)詳しくは記事中のリンク先をご覧下さい。バナーをクリックすると大井浩明氏のブログ記事を閲覧出来ます。



Makihandel1月17日に行なわれた上尾直毅さんの「C.P.E. バッハ・プログラム」演奏会(クラヴィコードによる演奏)が大変に素晴らしかった、との感想を小耳にはさみ、上尾さんを存じ上げなかったことを大変残念に思って、急遽上尾さんのサイト「宮廷のミュゼット」を拝見しはじめております。

で、上尾さんの演奏も、せめて録音だけでも拝聴したい、と思って急遽仕入れにかかりましたら、本当に食指がのびるものはAMAZONでは在庫切れだったし、それ以上売り先を探すゆとりもない日のことでしたので、手早く手に入る二種類を買いました。

上尾さんのそれとない存在感も非常に魅力的でしたが、結果として若手から中堅にさしかかる、優れた演奏家さんおふたりの存在にも強く印象づけられることになりました。

お一人めの相曽堅一朗さん(CD "BACH SONATAS FOR VIOLIN AND HARPSICHORD" ART-3115/3116、サイト www.kenaiso.net)はイギリス在住でご活躍中のようで、リーフレットにはエリオット・ガーディナーの推薦の言葉が添えられていましたけれど、なかなかに良いバッハを演奏なさっていました。このかたについては、あらためてフォローし直したいと存じます。もうひとつの推薦の言葉であるスティーブン・イッサーリス氏の次の表現が、この演奏についてはぴったりで、いまのところそれ以上申し上げる必要も私の見識もありません。

もうひとつ入手したのは、森麻季さんが昨年録音したヘンデルのアリア集でした。(「麗しき瞳よ」AVCD-25477

森さんのCDは、これまでに3枚聴きました。美声と、日本人としては確実なほうに属するイタリア歌唱(と美貌)で売り出したかたでしたが、最初の2枚の率直な印象は、「まだ高音の発声に無理があるんじゃないのかなあ」というものでした。
で、事前情報では、今回のヘンデルでは音程を半音下げて歌っている、とのことでしたので、
「それって声帯が緩んじゃったせいなんじゃないの?」
と陰口を叩いておった次第です。

非常な勘違いでありました。

音程が下がっているのは当然で・・・これはどんな人がバックをやっているのかを調べず勝手な推測をした私もよろしくなかったのですけれど・・・お名前を敬称略で列挙すると、寺神戸亮・大内山薫(Violin)・成田寛(Viola)・山本徹(Violoncello)、西澤誠治(Contrabass)・上尾直毅(Chenballo and Organ)・・・現状のジャンル分けで言いますと「古楽」のかたたちです。ピッチの設定には森さんの声帯云々には全く関わりがありません。
それを了解していようがいまいが、ちゃんと自分の耳で全部聴かせて頂くと、高音域から低音域まで、彼女の歌唱に非常にゆとりが生まれたのが歴然とします。
ためしに2007年にアンサンブル金沢のバックで歌った録音を聴き比べさせて頂きましたら、(非常に僭越で失礼な申し方であるのをお許し頂くこととしまして)アンサンブルに付きましてはオーケストラの人たちに「合わせてもらっている」、歌唱についてもデビュー時からのまだやや無理な発声が聞こえるのでした。
今回のヘンデルアリア集に戻って聴き直しますと、まず、発声については見事なほど非常な伸びやかさを獲得なさっていることがはっきり分かります。
アンサンブル、という面でも、共演器楽奏者の皆さんのセンスの良さ、編成の小規模さもプラスになっているのでしょう、表情・表現とも伴奏との連携がたいへんすぐれて自然です。

大々的に名前が売れてしまった人で、そのまま順調に能力をお伸ばしになる方というのは、日本という国では非常に稀なのではないか、せっかく親しみやすかった人も周りのガードが厳しくなってどんどん偶像化されると言うマイナス要因がかなり大きいのではないか、と、私はそんな先入観を日常的に持っていますし、この思いから完全に解放される日はたぶんないだろう、と思っております。

そんな中での、貴重で見事な例に、はからずも巡り会えたことは、いまの私にたいへんな幸福感をもたらしてくれています。


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コメント

Kenさんの太鼓判で大いに安心しました。取り上げて下さってありがとうございます。
ただ、見目麗しい為、森麻季さんのリサイタルを始め、先日見損ねた「リナルド」他のオペラ、
また森さんがソリストとして出演するコンサートは、即日完売になり、しかもかなり高額です。
どうしても、こういうことになるのが残念です。

投稿: JIRO | 2010年1月23日 (土) 21時29分

代金設定はプロモータさんの経営の苦しさにも由来しますが・・・「文化」国家のすることではありませんね。プロモータさんを必ずしも責められない、とは思っているのですが。。。

投稿: ken | 2010年1月24日 (日) 00時44分

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» 【音楽】ソプラノ、森麻季さんの新譜、「麗しき瞳よ-ヘンデル・アリア集」素晴らしいです。 [JIROの独断的日記ココログ版]
◆毎回素晴らしいけれども、今回も全く文句の付けようがありません。 いきなり、音楽 [続きを読む]

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