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2010年1月21日 (木)

ヴァーグナー「ローエングリン」第3幕への前奏曲:好きな曲029

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コンサート「麿と素敵で愉快な音楽家さん」は2月7日、新宿オペラシティ内の近江楽堂で。顔ぶれも曲目も魅力的です。是非お出かけ下さい。画像クリックでご案内記事をご覧頂けます。



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2台のピアノによる「モーツァルトピアノ協奏曲全曲演奏会」(東京3月18日:小倉貴久子さんと大井浩明さん、京都4月3日・4日:河野美砂子さんと大井浩明さん)詳しくは記事中のリンク先をご覧下さい。バナーをクリックすると大井浩明氏のブログ記事を閲覧出来ます。



Wakasugi運営が不安定だったローカルなジュニアオーケストラ、悪い癖を指摘されては揉みに揉まれ泣きべそをかいた学生オーケストラ、つかのまの社会人アマチュアオーケストラを経て再び母校のオーケストラに戻してもらった、というのが私の大まかな合奏経験でしたが、その間、高校時代には有名バロック作曲家の作品を主体に勉強していた弦楽合奏団、大学を通じての地方市民オーケストラ、発足したてのプロオーケストラなどでも少しずつ勉強させて頂きました。その他にはクラブでシャンソンの伴奏に加えて頂いたり、ホテルのレストランでカルテットでカントリー調のものを弾かせて頂いたり、高校生の歌うモーツァルトやシューベルトのミサ、フォーレのレクイエム、メサイアのバックも経験させて頂きました。
都度の思いはいろいろでしたが、この歳になっても結局たいした進歩がないのを自覚しているいま、それぞれが非常にありがたい出会いだったと感謝をしています。

ただ、母校以外の学生オーケストラは聴くことも少なく、共演経験も稀でした。
学生であったあいだは、最後の年に、東京のK大のかたたちとジョイントをするのに参加させて頂きました。東北という限定された世界しか知らなかった自分にとって、他地方のかたとの初めての交流でもありましたが、演奏した曲は忘れてしまい、楽しかったことだけをなんとなく記憶している程度です。

社会人となって3年後に幸運にも母校のオーケストラでの勉強に復帰させてもらえたあいだに、今度は関西の某国立大学の人たちとのジョイントを迎えました。
大阪にも京都にも親戚がいましたので、関西の気風はそれなりに知っているつもりになっていました。大阪の親戚のところから帰って友人に土産話をすると、必ず笑われたのは、
「おまえ、大阪弁のアクセントで東北弁しゃべっとる!」
ことでした。それくらい、関西は強烈なんだ、という程度は認識していたわけです。
で、大阪のいとことは、夏の天気のいい夜に、布団を持ち出して淀川の河原で寝たこともありました。
そんな次第で、関西の(大阪ではなかったのですが)大学と共演できるのには、非常にわくわくしておりました。

東京の若い人たちとご一緒したときは、みなさん、私と違って豊かな家庭にお育ちなんで、そういう人でなければオーケストラで演奏するだなんて、もしかしたら大間違いなのかもしれない、と思っていたのでした。
が、テキが国立となれば、貧乏地方大学の、そんな中でもとりわけ外れまくった自分のようなものでも、なんだか太刀打ちできるような「プライド」がありました。

・・・大間違いでした。

長い歴史に培われた土地で勉強している彼らは、もしかしたら私が初めて巡り会った、エリートの卵野中でも最も良質な人たちでした。

とにかく、演奏以前に、楽器に対する知識も豊富で、物を見ただけで「これは何年頃の、多分この作者のもの」とか分かっちゃう人もいましたし、演奏する作品については遠慮無しにバンバン音を出しながらも、楽隊全体が揃うと巧みに調和するのです。その当時だったかもう少し後だったかに海外公演もし、大手レーベルからCDまで出しちゃった、東京の某私立大学・・・学生オーケストラの中では一番うまい、と、もっぱらの評判でした・・・なんか、まったく目じゃない、という感じを受けました。(CD出された学校さん、すみません。)

ジョイントでは相手さんはR.シュトラウスのドン・ファンをやり、当方はベートーヴェンのエロイカをやりました。大音響ながら調和のとれたR.シュトラウスは、過去に同作品を演奏した経験のある私たちには非常に新鮮かつ衝撃的に響きました。あちらには、私たちのエロイカはどんなふうに聞こえたでしょうか?

両校で共演したのは、定番のヴァーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕へ前奏曲でしたが、おそらく当方の誰もが、それまでの自分たちの「規律」(それを重んじることが私たちには非常に大切でしたし、これ自体はよいことだったと、いまでも信じております)から逸脱する「自由」を発見する思いだったのではないでしょうか?

私にとっては、ある理由で母校のオーケストラと訣別することになる直前の、最良の思い出でもあります。



このとき演奏した作品ではありませんで、ヴァーグナーの楽劇の中では一番好きな「ローエングリン」から、最も有名な第3幕への前奏曲をお聴き頂きます。
「ローエングリン」は、その後のヴァーグナーが完全に放棄する「ナンバー方式」で書かれた楽劇ですから、厳密には彼の定義する「楽劇」にではなく、伝統オペラの延長線上にあります。
ですが、音楽は前奏曲から独唱・合唱のいっさいが連綿と続き、すでに仕上げていた「タンホイザー」、本作の初演(1850)翌年に構想を始めた「指輪」シリーズのあいだにあって、構成は完全に「楽劇」として確立されていた、と言ってよろしいかと思います。

私が二十代の頃には、この「第3幕への前奏曲」が、オーケストラのアンコールの定番でもありました。成熟後の「パルジファル」にも通ずる音響を持つ「第1幕への前奏曲」に比べて、にぎやかにやってごまかしてしまえる、という演奏効果上のメリットもあったのではないかと思っております。
「ローエングリン」は前奏曲2つ以外にも、ヴァーグナー作品の中ではもしかしたら最も親しみやすい美しさを持っているのではないかと感じられる旋律が随所にちりばめられており、ブラスバンドですと「エルザの大聖堂への行進」(原曲は合唱を伴い、弦楽も大切な役割を果たす)が定番プログラムになっていますし、続く「結婚行進曲」は簡単に演奏できるピアノ編曲も存在するほどにポピュラーです。

日本人としてはヨーロッパを主要拠点として活躍した数少ない存在であり、昨年7月74歳でお亡くなりになった若杉弘さんが、名門シュターツカペレ・ドレスデンと残した録音をお聴き下さい。

「ローエングリン」3幕前奏曲

若杉さんは1977年にケルン放送交響楽団主席指揮者となって以後、ダルムシュタット歌劇場、ドルムント歌劇場での実績が認められ、シュターツカペレ・ドレスデンの常任指揮者に就任したのでした。この他、バイエルン国立歌劇場やチューリヒ・トンハレでも重要ポストを得ていました。


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コメント

「ローエングリン」第3幕への前奏曲、好きですねえ。私も子供の頃から大好きです。
血湧き肉躍るとは、この曲を聴いたときの気分を表現するための慣用句ではないか、と
おもわれるほどです。繰り返し奏される、三連符で始まる旋律は「カッコイイ」という他に
なく、ワーグナーがまた上手く盛り上げますね。最初はホルンだけ。繰り返しでトロンボーンが
加わり、再現部では更にテューバが加わり次第に響きが厚くなる。こればかりはトロンボーン奏者
が羨ましいです。しかし、金管がこの旋律を吹いている間、相当な音量な筈ですが、三連符を刻み
続けているヴァイオリン他、弦の方は合わせるご苦労はないのでしょうか?愚問でしたらごめんなさい。

投稿: JIRO | 2010年1月23日 (土) 21時40分

技術的なことは、本職さんがどうお考えかをお尋ね下さい、私の身にはあまります・・・(^^;

一般に、この前奏曲のように構成が簡単ですと、リズムを取るのは難しくありません。個々人の技量だけの問題です。管楽器が大音量でも問題になりません。

投稿: ken | 2010年1月24日 (日) 00時46分

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