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2009年10月17日 (土)

CD本、読みますか?:音楽の愛し方14

過激なまでの名ギタリスト、森田茂さん(クラシックギター)「デ・ポンセ」は10月31日、さいたま市大宮区のバッハアカデミーホールです。ポンセは難曲ですが名曲揃い。お聴き逃しなく!



紳士的名ギタリスト増井 一友さんのリサイタル(クラシックギター)は、11/21(土)東京:近江楽堂 5時開演 、11/28(土)大阪:ザ・フェニックスホール 5時開演です。素晴らしい音色をお楽しみ下さい!

赤津眞言さん他「フランス ヴァイオリン音楽の流れ」については、複数日程につき記事にリンクを貼りましたのでそちらをご覧下さい。

3・7・8・9(7から9は当面欠番)
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番外1 番外2

この記事の後、パソコンのメンテナンスのため、ちょっとの間ブログの更新は致しません。

さて、私が自分なりのクラシックCD・DVDリストを作った種明かしです。
恣意ははさまなかったつもりなのですが、私のリスト(前半後半)は、これから上げる二つの本(書名は出しません)を意識はしてしまったかもしれません。

私のリストの内訳です。(項目数)
作品の時代別
・古代=2
・中世=5
・ルネサンス=2+1
・バロック=23
・古典派=18
・ロマン派=32
・20世紀=17

地域別を出したいところですが、ちと出来る内容ではなくなりました。
特定の作曲家で多いのは
・モンテヴェルディ=4
・モーツァルト=7
・ベートーヴェン=6
・シューベルト=4
----ドイツ圏が多そうな傾向にありますね。ただし、20世紀ものは日本2、中国(実質アメリカかなあ)1、韓国1です。演奏家では、最近自分が集中して聴いて新鮮みを覚えた点を反映しているのでしょう、ヴァントが目立ちます。他にはクリュイタンス、アーノンクールが多そうです。

ところで、最も売れているらしいCD紹介本Aは、3人の有名評論家の手になるもので、番号のふってあるページ数は470、項目数は177ほどです(コラムを含まず)が、採り上げられた作曲家数は42です。以下、カウントが少々不正確かも知れず、そこはご容赦を乞いますが、傾向は明確に分かります。
作曲者(と項目数、括弧内)の地域別内訳は、ドイツ圏=14(114)、フランス=9(17)、ロシア=7(20)、イタリア=4(6)、東欧=3(8)、イギリス=3(3)、北欧=1(5)、日本=(1)と、ドイツ圏に極端に遍していることが窺われます。
作曲家の時代別は、ルネサンス以前0、バロック4(17)、古典派3(49)、ロマン派26(92)、20世紀8(19)です。
いちおう、私の主観で、定番だろうと思われるものは、個人的な好みと一致するもの42、不一致であるもの29、どちらともいえないもの15で、総数86。項目全体の48.5%を占めます。

それにしても、古典派が28%で3人(教科書でお決まりのヨーゼフ・ハイドン、アマデウス・モーツァルト、ベートーヴェン)で49曲は、ハイドンだけが3項目だけでして、後の二人で46項目。全てドイツ圏のものですから、この本は古典派ドイツの定番を軸に据えていることが見え見えです。ロマン派(52%)の作品も作曲家によってばらつきはあるものの、平均を取れば一人当たり3.5曲です。
時代のパーセンテージで言えば、私のリストは古典派18%、ロマン派32%で、やはり高めですが、バロック以前とロマン派後は「クラシック音楽」ではない、という考え方は・・・まあ、厳密に言えばこっちのほうが正解なのかもしれません。
で、定番と考えて良さそうなものが好みを度外視すれば半分は含まれる、というのは、一見、この本が、これからクラシック音楽の録音を聴く人には適切な本のように思わせられます。
が、大きな問題があります。
文章です。
作品の解説に重点を置いた文が、全くと言っていいほど,見当たらない。演奏家についてある程度知っていて好みも明確な読者が目にして初めて
「うんうん、そうだそうだ」
と言える内容なのです。
となると、この本Aの購買層は、「クラシック音楽通」を自認している人であり、その購買目的は「自分の思考の正当性を確認するため」であろうかと推測されます。
・・・果たして、そういう本に、存在意義があるのでしょうか?

「正統なクラシック」(日本人が享受して来た、という意味で)の世界に留まる人のためにしか意味が無い・・・これから聴きたい人が何かを知ることが出来るわけではない、だのに、そういう本が売れる、というのは、日本人の国民性でしょうか?
定番がこれだけ意見の一致を見るのでしたら、購入する必要はない。別に自分も定番だ思っているというだけだし、どうして定番だと思うかの理由については、なにも権威あるご著者たちと意見が一致している必要はない。だったら、いりませんよねぇ。。。
文の主観の中で個人的には「ブラームスの、ピアノを伴わない室内楽曲に傑作はない」みたいなものは私が最もカチンと来たところの一つですが・・・彼の弦楽四重奏曲は名品です、ただしいい録音には恵まれていません・・・、そういうこまごましたことは、上のような状況だけ見て、こうした本は不要だと判断出来てしまえば、もう別にどうでもよいことです。
なおかつ、最近のクラシック好きの傾向として、バロックの裾野が30年くらい前に比べると格段に広がっているはずですのに、それが未だに取り入れられていないのも不審です(9%)。20世紀ものは評価が定まっていない現状、聴き比べるほどの録音が出回っていないことからすると、数の少なさはちょっとは理由付け出来るのでしょうし、11%という割合はそこそこ評価していいのかもしれませんが、次に上げる書籍Bは20世紀作品の占める割合が36%なのです。・・・それにしても、わざわざ20世紀のクラシック音楽、みたいなタイトルを付した新書も出ているのに、けっこう厚手なこの本の内容も、20世紀中葉までの作曲家のなかで目立つ存在だけを採り上げているのは、同様に不審だと言わざるを得ません。・・・まあ、それくらいでよしましょう。

で、20世紀作品を積極的に掲載している、もうひとつの書籍Bは、215ページの本ですが、同様の集計をしてみると次のようになります。
地域別は、ドイツ圏12(36)、ロシア9(19)、フランス8(9)、北アメリカ6(6)、イタリア4(6)、イギリス3(3)、チェコ2(5)、ハンガリー2(3)、アルゼンチン2(2)、エストニア1(1)、フィンランド1(1)、日本9(9)。
時代別は、ルネサンス以前1、バロック5、古典派16(ロッシーニを古典派と見なす)、ロマン派42、20世紀36です。
バロックの作曲家はモンテヴェルディ1、ヴィヴァルディ1にバッハ2で作曲家の人数は同じです。実はAはバッハばかりで占められているに等しい(他の作曲家の作品は1曲のみ)のですが、ここはBのほうが割合も小さいですけれど、同傾向を見せています。古典派も、ロッシーニ2作を除けば、ハイドン1で、残りをモーツァルトとベートーヴェンで分け合っていて、これもAとBには同じ傾向が見られます。
決定的な違いは、Bはロマン派以降に大きなウェイトをおいている点でして、日本人作曲家を9人採り上げているところに「日本人だって音楽作ってるんだぜー」と意気込むご著者の姿勢が見て取れます。
文章の記述も、いくつかの例外を除いて、半分から3分の2を作品の成立事情などの平易な説明に充て、残りで、紹介する録音の、演奏や演奏家の特徴を記すというスタンスをとっています。
・・・このほうがまだ、「そうか、ちょっとクラシックでも聴いてみんべえか」という意欲を、「クラシック」を初めて聴く人にも抱いてもらえる可能性は高まるのではないでしょうか。かつ、このジャンルの中で日本人は何をして来たか、を日本人として確認し得る入口を用意していることは、大切なポイントになるのではないかと思います。(私のリストでは日本人の作品は二つしか採り上げていません。)

対比して、私の作ってみたリストではバロック以前が結構な量を占める、というのは、私がその時代の音楽にちょっと強めの好奇心を抱いたことの反映に過ぎないのかも知れず、他に何冊か覗いてみたクラシックCD紹介本でも、あまりないことでした。モーツァルト・ベートーヴェンを多く選んでしまう、というのは、私も同じでして、これはやっぱり日本人としての一つの特徴になるのでしょうか。

かつて石井宏さんが「反音楽史」なるご本を書かれて、強烈に「ドイツ偏重」を皮肉ったのでしたが、その影響はクラシックCDを紹介しようとする人たちにはどうも及んでいないらしいことも分かります。・・・これは、私の選んでみたリストでもドイツ圏系の音楽がやはり多めになることから、過去の「クラシック音楽享受法」は、けっこう変化していないのかなあ、と、自分自身首をひねってしまっています。

以上のような次第で、クラシックCD紹介本は日本のクラシックファンの現状を単に鏡のように移す傾向がまだまだ残っていて、それは個々人がリストを作ってみても、出回っている著作と似た傾向になる割合が未だに高いことを物語っていると言ってよろしいかと思います。

そこいらへんを打破してみたい、とお考えになる場合は、ですから、普及本を参考にすることは出来ず、聴き手である「私自身」が好奇心を持ち、切り開いていくしかないのです。

いかがでしょうか?


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コメント

>作品の解説に重点を置いた文が、~見当たらない

これは僕も気になっているところです。
特にモーツァルトでは酷いものがあります。
この作曲家の作品についての一流(?)の研究家の著作でさえ、
感傷的な印象論の羅列が大半であることがどれだけ多いか…。
(しかもそれらは世間受けの良いモーツァルト像の域を
出ないことがほとんどでしょう。)
作品そのものには語るべきところが無いかのように、
単なる感想文になってしまっているケースもあります。
僕ならば作品そのものについて、いくらでも語りたいことが
あったりするのですが(笑)
まあ、マニアックすぎるかもですが…(汗)

モーツァルトのクラヴィーア協奏曲の演奏を語るときに
ピアニストのことばかりが話題に上り、オケについては
「オケもよく合わせている」
程度で済まされているのを目にしたりすると、
軽く凹んでしまいます。
モーツァルト自身の作曲上の努力を全く無視とは…!!

すいません、個人的な不満を書き連ねました。

投稿: Bunchou | 2009年11月 6日 (金) 13時37分

Bunchouさん

モーツァルトに限らず、たとえば最近出たハイドンの交響曲全曲を羅列しただけの本なんていうのも、ひどいもんだとはお思いになりませんか?

あんな程度の中身で本になること自体が、ちゃんちゃらおかしいですよね。。。

ひどいのはCD紹介本ばかりでは無くなってしまって、ちとむかっ腹も立っておりまする。

・・・短気は損気ですけれどねー。

投稿: ken | 2009年11月21日 (土) 00時12分

>ハイドンの交響曲全曲を羅列しただけの本

ありましたねえ。
でもハイドンの交響曲は世間的には未知のモノが多いでしょうから、
あの程度の感想文でも、ある意味では有益だとも言えなくもない…かな?
でも既にハイドンの交響曲が好きな人でないと興味を持ちにくいですよね。
それにネット上には非常にいいサイトがありますから、
やっぱり感心できない本だと思います。

対照的に、最近出たヴィオッティの本はなかなか素晴らしい物でした。
是非、一読をオススメします。

投稿: Bunchou | 2009年11月27日 (金) 22時10分

ヴィオッティの本は、仰る通り、なかなかに優れものです。
これを機会にヴィオッティがもっと聴かれると嬉しいですね!

それにしても・・・日本語で読めるハイドンのまともな本があまりに少なく、かつ包括的でないのは残念でなりません。
(問題の本は論外です。買った人は大損ですよ!)

投稿: ken | 2009年11月27日 (金) 22時58分

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