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2009年9月25日 (金)

「千住家にストラディヴァリウスが来た日」

メンデルスゾーンコーア & ハインリッヒ・シュッツ合唱団によるメンデルゾーン『パウロ』演奏会は10月2日、東京カテドラルにて。


紳士的名ギタリスト増井 一友さんのリサイタル(クラシックギター)は、11/21(土)東京:近江楽堂 5時開演 、11/28(土)大阪:ザ・フェニックスホール 5時開演です。素晴らしい音色をお楽しみ下さい!


51hli4i09rl_sl500_aa240_クラシック系といえどもタレント本は読むまい、と思っておりました。
所詮、その演奏タレントさんの宣伝の延長に過ぎず、ものによっては教養の押し売りみたいなものが目立ち始めて、いやだなあ、と感じていたからです。
・・・で、これからも基本は読むまいと思っています。

で、「あら探ししてやろう!」という別の邪心から、別の種類の本を漁っていたのですけれど、そっちはそっちで
「この本にこんなにカネを払うのか!」
という値段のものばかりで、バカバカしくなってやめました。

そのついでに、結局「タレント本」に目を通してしまいました。

意外にも・・・などと言ってしまってはご著者その他ご関係各位に叱られますが(まあ、目撃もされないでしょう!)・・・、音楽作品の紹介としては、

高嶋ちさ子の名曲案内 (PHP新書)

は、作品を50に絞り、作品に即した平易で心優しい文章を綴り、紹介なさっている愛聴CDも納得の行く素直な選択で、好感を持ってしまいました。前著「ヴァイオリニストの音楽案内 クラシック名曲50選 」を手にとったときは、むしろ対照的な感触でしたので・・・私のほうの心変わり、でしょうか?

親としての気持ちに共感を抱きつつ本屋さんで斜め読みしたのが、辻井伸行さんの母いつ子さんの

のぶカンタービレ!

でしたが、これは最終部分での、子供がもはや自分の元を離れていき、自分で厳しい世界と立ち向かっていかなければならないことを親として慫慂と受け入れようとする精神に魅かれました。・・・この手には、私は弱いようです。

さらに、ある意味でお名前の売れ具合とタイトルに感じた(私の卑屈な)嫌味から、これまで手にもしようと思わなかった

千住家にストラディヴァリウスが来た日

が、文庫になって380円で買えるようになっていましたので、野次馬と冷やかし精神から、はじめて覗いてみました。

・・・恥ずかしながら、涙しながら読んでしまう結果となりました。

千住真理子、という人をどう評価するか、ということを述べようとは思いません。
その真理子さんを初めとする「芸術家兄妹」三人の「有名人の母」としての、著者、文子さんを評価する・・・などということも、読後の今はもってのほかだと思っております。

昨日この本を買って帰った私は、その文のもつ熱を移されたみたいに夢中になってしまい、読み終えるまで手元から離せず、風呂にまで持ち込んで一気に読みました。

亡父の
「人の力を借りず、ひとりでできるかい」
の言葉を守って、一生かかって返せるかどうかも分からない借金99.9%(推定・・・残りはご自身が小さいときからとっておいたお小遣いをためたものなど)でストラディヴァリウスを入手する決心に至った娘。それを「資金で」ではなく、心で援助しようと前向きに突っ走った2人のお兄さんのすがた・・・これだけでも、私にはうらやましい「兄妹」関係でした。
でも、コンサート活動に奔走する娘に代わって、最後に実際に銀行の窓口で手続きしたのは、3人の子供たちの引き起こしてくれた荒波のまっただ中で、ときに途方にくれ、ときに腹を決め、でもやっぱり迷いに迷ったおかあさんだったのでした。
「『億』という単位のお金。/話に聞いたことはあっても、見たことのないものだ。お札で、どれくらいの厚みがあるのだろう。100万円だと何センチ、1000万円だと何センチ・・・・・・おぼろげながら頭の中で測ってみる。しかし、それ以上になると、ピンとこない。」(文庫版p.5)
そんなおかあさんが、最後は銀行ですべてを終え、
「その時初めて、手や足がガタガタ震えた。七十数年の人生の中で、いちども手にしたことのない金額が、いまこの瞬間、現れて、すぐに消えたのだ。」(文庫p.179)
・・・ですが、おかあさんは、手続きを終えたこの瞬間が、娘にとっては「始まり」であることを知ってもいるのです。

そもそも試奏だけですませるはずのストラディヴァリウスを、お兄さんたちが口を酸っぱくして真理子さんに「入手する決意をさせる」経緯も想像を絶するものがありました。彼女のために資金の「借り先」を探してくれた会計士さんの熱意も印象的です。
そうした人たちの間で、たぶんご自身としては翻弄されるしかない思いだったおかあさんが、でも、足元をふらつかせることなく、子供たちの決意と、奔走してくれる周囲の人たちの(ご自身はご謙遜からそういうふうに受け止められる書きぶりはなさっていないのですが)「核」として、昔を、娘の恩師の江藤先生を、介護しながら看取った両親を、そして誰より亡夫を心の支えにしつつ踏ん張ってきた貴重な記録として・・・片親となってしまった私も、心を支えられる気がして、これから自分の子供たちとどう向きあって行くか、について、結果的に勇気をいただく本になりました。

タイトルにどういうイメージを持たれるか・・・もし先入観が私同様にマイナスイメージだった方にはとくに、
「まあいいから内容そのものを読んでみて下さい」
ということで、おすすめ申し上げます。


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