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2009年7月12日 (日)

コレッリのヴァイオリンソナタ:蓮見さん・阿部さん・大井さん演奏曲目関係【5】

Yamatouchiharu蓮見岳人・阿部千春デュオリサイタル
(バロックリュート&バロックヴァイオリン、ケルン在住)、是非お出掛け下さい。

千歳(7月12日)・天理(7月18日)・京都(7月19日)・名古屋(7月21日)静岡(7月22日)・東京(7月23日)です。

総合連絡先:スパティウム・ハルモニエ(電話050-5539-8845、mail:duo@angel.nifty.jp

HP:http://abe.hasumi.de/



〜若き天才作曲家が世に問うた「作品1」〜

《モーツァルト:パリ・ソナタ集 作品1(全六曲)K.301-306》

(護国寺:同仁キリスト教会にて、18時開演)はリンク先(←ここをクリック!)、この演奏会への私の期待については「サヨナラ『古楽』」をご覧下さい。

連絡先:オフィス・アドック(電話:050-5532-5562、mail:office.adhoc@gmail.com

blog:http://ooipiano.exblog.jp/11686543/

吉田美里さんヴァイオリンリサイタル

・7月25日(土)ペンション・モーツァルト (山中湖) 残あり。

※8月22日(土)14:30〜  荻窪:衎芸館(かんげいかん)・・・は満席となりましたそうです!

プログラム等は、こちらをご参照下さい。

蓮見さん・阿部さんのデュオコンサートは既に初日を迎えてしまい、それには間に合わなかったのですが、いまさらと思われることを覚悟しつつ、残りを綴ってみます。ただし、やっぱりコレッリとヘンデルを一緒にまとめるのは無理でありました。次のコンサートまでは間がありますので、とりあえず今日はコレッリだけを取り上げておきます。

Corelliいま、適切な史料が手元にないので、確かなことは言えません、が、音楽におけるヴィルトォーゾ、という言葉が「超絶技巧の使い手」と等式で結ばれるようになるのは、たとえばヴァイオリンではパガニーニ、ピアノではリストなどといった人たちの登場以降のことではなかったかと記憶しています。
この語の古い由来となったラテン語の語彙virtuosusという形容詞は、そのもととなった名詞が「(良い意味で)男性的であること」を基本の意味に持ち、そこから「徳がある」様子を表わすことに繋がっていったものでした(古代から近世にかけての男性上位の道徳観の中で醸成された意味合いですので、その点はご了承下さい)。で、証拠はないのですが、それが何故パガニーニとかリストとかいった超絶技巧演奏家を通じて「名技的演奏家」に結びついたかを推し量るに、最も表面的には、彼らはその名人芸をもって高い収益を得ましたから、これは室町時代頃の日本のお金持ちを「有徳者」と呼んだのと類似の発想で、「持ち合わせた技によって、経済的な利益を勝ち得た=徳を得た」というところから意味が転化していったとも感じます。もう一方では・・・良心的に解釈すれば・・・パガニーニせよリストにせよ、その生涯をたどると一般的なイメージとは裏腹に非常に不幸な幼少年期を過ごしているのでして、そこからよくもあそこまでの名人になった、という、もっと素直な意味での「徳」を有する人たちだった側面もあるのですが、彼らの成功後は「観客」はその富にしか注目していなかったのですから、こちらの見方は成り立たないのかも知れません。

で、元来の意味での「有徳者」としてのヴィルトォ−ゾとして世の崇敬を集めた代表的なバロック期の音楽家は、アルカンジェロ・コレッリ(1653-1713)でした。(ただし、この当時でも「ヴィルトォ−ゾ」という言葉には「高い技術の持ち主」という意味合いは含まれていました。当然のことながら、平凡以下の技術しかない演奏家がヴィルトォ−ゾと呼ばれるようでは不自然でしたでしょうし、ヨーロッパに限らず、技術の修練ということは「徳」の獲得の上で大事な項目のひとつでもあったからでしょう。)

コレッリは若年時は、前回見たストラデッラやロナーティのような「悪さ」をはたらく先輩たちの薫陶を受け、老いてはドイツからやってきた有能な新進音楽家ヘンデルの書いた音楽が「理解出来なかった」こともあったという人物ですが(コレッリがヘンデルの何を理解出来なかったのかは詳しい史料を見ておらず私には分かりませんし、いくつか垣間見たゴシップ的エピソードはあまりにカリカチュアに過ぎますので取り上げますまい)、ローマに移住した前スェーデン女王クリスチナのアカデミアの庇護を受けたを皮切りに、彼女の没後、彼女のアカデミアを引き継いだアカデミア・デッラルカディアでも・・・彼の穏やかな人柄を考える時、おそらくは政争によってではなく、あくまでも周りからの信頼によって・・・やがてコンサートマスターを勤め、政情が必ずしも安定していなかった当時のイタリアで重要な、意義深い音楽の作り手であり演奏家であるとして尊敬を抱かれ続けた人物でした。

コレッリの楽譜は、今日的な目で眺めた時には非常にシンプルです。
ですが、これが
「コレッリってこの程度しかヴァイオリンが弾けなかった」
ということには絶対にならないことは、50年前ならともかく、現在のバロックファンなら誰でもご承知のことと思います。
合奏協奏曲においては、奇をてらったところのないシンプルな書法がかえって幸いして、(現代人の目から見て)書かれた音符どおりに演奏しても非常に敬虔に響きます。ヴァイオリンのソロソナタやデュオソナタにしても、見かけがシンプルであるために、アマチュアが楽しむ恰好の材料になったりします。
一方で、特に緩徐楽章においては、バロック期は演奏者が個性に応じて独自に多彩な装飾(即興)を加えて演奏することが当然だったわけでして、最近出版されている楽譜には、オリジナルの記譜の翻訳に、より複雑な奏法譜が併記されるのが当たり前になりました。
しかしながら、奏法譜も本当は装飾の仕方の一例に過ぎないのでありまして(モンテヴェルディが自作歌劇「オルフェオ」のホンの一部にそうした例を付け加えて出版していることは有名です。私の手持ちがありますけれど、図版は今回は添付せずにおきます)、コレッリ自身が、あるいはコレッリの楽譜を解釈した演奏者が実際にどのように即興を加えたのか、ということになると、おそらく本場で勉強しているプロフェッショナルは、他の作曲者のコンテクストとの比較、当時の慣例の研究などを通じて多様な演奏を展開しているはずです。

少将堅いことを綴ってしまったのは、私が以上のようなことを実は充分理解していないことの反転的な表現だと思って頂ければ宜しいかと存じます。

今回の演目ではないのですが、一例をお聴き頂きます。
コレッリのソナタ第5番冒頭楽章の演奏例2例です。(モノラル化してあります。)

Monica
Monica Hugget(vn.) etc. veritas 7243 5 62236 2 2

Daniel
Daniel Cuiller(Vn.) etc. cypres-records CYP 1629

最初の例の方は「オリジナルの記譜」はこのくらいだよ、ということを暗示的にきかせてくれた上で反復時により多様な装飾をしています。
後の例の方は、初回から装飾を加え、反復時にはさらに複雑な装飾を加えています。
いずれにせよ、このような装飾が自然に聴こえるためには、単音だけを演奏しているヴァイオリニストであっても、和声の進行や、その間に挟んでよい非和声音などの知識は豊富に持ち合わせていなければならないことは明白です。

そうは言っても、聴き手は演奏者の装飾を存分に成されるのを心ゆくまで楽しめばいいのであって、この点、享受者側としては気楽さがあります。

下地にきちんとした音楽理論への理解があり、演奏時にはそれを聴き手には「理屈」としてではなく、演奏者の持つ「色合い」として快くきかせるところに、「バロックを演奏する」醍醐味があるのでしょうし、演奏家の個性やその日の発想に由来する色合いの違いを、固定された録音としてではなく、実際に演奏する姿を目の前に、都度変化する奏者の心理と一体感を持ちながらきくところにまた、「バロックを聴く」最大の愉しみがあるものと、私なぞは思っておる次第です。

・・・なんだか宙ぶらりんなお話をしてしまって、すみません。

コレッリのヴァイオリンソナタは作品5として出版され(アーチリュートまたはチェンバロによる伴奏、と謳われていたかと記憶していますが、定かではなく、申し訳ございません・・・ただし、伴奏楽器についての表記は「通奏低音とは何か」という、日本人にはまだよく理解出来ていない【と私には思われる】大切な話が含まれていますので、そのことはまた勉強していきたいと思っております。いま、手元のCDでは「ヴァイオリンとチェンバロまたはバスのための」となっていますが、たしかチェンバロよりはアーチリュートの方が先に来ていたような記憶があって、私自身混乱しておりますが、コレッリの活躍期にはチェンバロはまだ新進の楽器だったというのは、私の大きな記憶違いでしょうか?)、12作から成っています。

今回の蓮見さん・阿部さんが取り上げるのは、その第1番です。

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