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2009年7月13日 (月)

ヘンデル「ヴァイオリンソナタニ短調」:蓮見さん・阿部さん・大井さん演奏曲目関係【6】

Yamatouchiharu蓮見岳人・阿部千春デュオリサイタル
(バロックリュート&バロックヴァイオリン、ケルン在住)、是非お出掛け下さい。

千歳(7月12日)・天理(7月18日)・京都(7月19日)・名古屋(7月21日)静岡(7月22日)・東京(7月23日)です。

総合連絡先:スパティウム・ハルモニエ(電話050-5539-8845、mail:duo@angel.nifty.jp

HP:http://abe.hasumi.de/



〜若き天才作曲家が世に問うた「作品1」〜

《モーツァルト:パリ・ソナタ集 作品1(全六曲)K.301-306》

(護国寺:同仁キリスト教会にて、18時開演)はリンク先(←ここをクリック!)、この演奏会への私の期待については「サヨナラ『古楽』」をご覧下さい。

連絡先:オフィス・アドック(電話:050-5532-5562、mail:office.adhoc@gmail.com

blog:http://ooipiano.exblog.jp/11686543/

吉田美里さんヴァイオリンリサイタル

・7月25日(土)ペンション・モーツァルト (山中湖) 残あり。

※8月22日(土)14:30〜  荻窪:衎芸館(かんげいかん)・・・は満席となりましたそうです!

プログラム等は、こちらをご参照下さい。

Haendel阿部さん蓮見さんのプログラムの中で、最も新しい時期に作られた作品です(1724年頃)。

ヘンデルの伝記を読んで最も興味深いのは、音楽家の伝記には珍しく、彼ををめぐる、それ故に当然同時代をめぐる経済情勢や金銭・興行・著作権意識の萌芽などの社会情勢が、極めて明確に語られていることです。
お金をめぐる話は、音楽家の伝記の中で比較的頻出するのはモーツァルトやベートーヴェンのものであって、それ以前の人物でもそれ以後の人物でも、案外よくわかりません(かろうじてワーグナーあたりでしょうか?)。しかも、モーツァルトにしてもベートーヴェンにしても、「金に困った」とはあっても、何が原因で困窮したのか、それによってどれくらいしんどい思いをしたのか、それはいかように解決し、または解決しなかったのか、は、おもいのほか、キチンとフォローされていません。

ただし、それは伝記作者たちの落ち度ではなく、ヘンデルという音楽家がいかに特殊だったか、の反映だと見た方が良いのではないかと思います。

ヘンデルはかなり若年の時から自立のための金策を練ったり(イタリアに渡るまでには、その土地の治安の悪さなども考慮して、かなり慎重に出発準備期間をおいています)、イギリスに渡るにあたっても、近い将来イギリス王位を継ぐことがほぼ決定していたハノーファー家に仕えるなど、世間を見る目を養いながら最初の成功への道を探りました。イギリスに渡ってからは、それまでの慎重さが一気に開花するように、最初は雇われリーダーではあったのが、環境が自立にふさわしいものになると、迷わず自ら興行主となる度胸も見せています。
そうした人生の経緯もあって、とくに渡英後の彼の懐具合については史料が豊富に存在するのだろう、と推測することができます。

ヘンデルと同じような経歴をもったクリスチャン・バッハについても、彼のおおよその生計の立て方が分かるのは、当時のイギリスがヨーロッパ社会のなかでも市場の独立がいちはやく進んだ証拠なのかも知れません。が、クリスチャン・バッハの生涯(残念ながら万全な日本語版伝記は存在しません)ではヘンデルほどまでに素直に経済事情が分からないのは、人格的・性格的な差に由来するものかも知れません。クリスチャン・バッハはアル中仲間に囲まれて体を害しましたが、ヘンデルは大食漢かつたびたびの大病にも関わらず、独立不覊の精神はクリスチャン・バッハより強靭に持ち合わせていたのでしょうか、結局のところ、18世紀前半としては長寿を全うしさえしました(74歳で没)。

生前は劇場音楽を中心に活躍したうえ、作風が表面上は「明解過ぎる」ため、ドイツでの19世紀の大バッハ復興以降は、ドイツ中心の音楽世界から眺めた時には影が薄くなっていましたが、その間も声楽曲の大作「メサイア」などいくつかのオラトリオ、大規模な管弦楽曲である「水上の音楽」・「王宮の花火の音楽」はずっと愛され続けましたし、合奏協奏曲を始めとする室内楽も経緯を持って演奏され続けて来ました。そうして20世紀後半以降、ふたたびそのオペラ作品が大々的に見直されて来ています。(実際には、彼の作風は、対位法と和声的音楽を効果的に交えている点で先進的だったと言えます。)

ヘンデル音楽がやや隠れた存在になっていた時期にも変わらず愛奏されて来たもののなかに、「作品1」に含まれる6つのヴァイオリンソナタがあります。
これが、由来をたどっていくと、ヘンデル当時の「著作権意識」を知る上で興味深い作品群であり、この「作品1」はヘンデルが知らないあいだに勝手に出版され、流通したものでした。
名曲ぞろいなのですけれど、6つのヴァイオリンソナタのうち4曲(ト短調・ヘ長調・イ長調・ホ長調)が偽作であることが、ここ50年の間に明確になりました(真の作曲者が誰か、ということについては私の手持ち資料には現れず、分かりません)。

で、これらとは別に、同じく作品1に含まれていたフルートソナタホ短調が、実はオリジナルはニ短調のヴァイオリンソナタであることが分かりました。

フルートの方はご存知ながら、オリジナルのヴァイオリンでの演奏は日本ではまだ珍しいかと思います。

どうぞお聴き逃しなく!


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