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2009年4月 1日 (水)

モーツァルト:パリを去る。


心臓移植への応援の願いサイト「大樹君を救う会」
http://savedm.web.fc2.com/
・・・是非、お目通し下さい。



齋藤友美賀ヴァイオリンリサイタル(2009年4月28日、市ヶ谷にて)、是非お出掛け下さい。

大井浩明さんのベートーヴェン演奏(フォルテピアノによる)、新鮮です!

ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。

「パリを去る」
などと題していながら、この年に作曲された残りの作品2つについて簡単に述べるだけですし、恐らくどちらの作品も、マンハイムからパリに移動してからさほど経たないうちの作品です。
細かいことは、またBunchouさんにチェックを受けないといけないな!(汗)

なお、注文中の洋書はまだ手元に来ておりませんので、パリ交響曲についての補足や補正はまだ出来ておりません。ご了承下さい。



1曲目は、有名かつ名作です。

フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299(297C)
I. Allegro 4/4 265小節(コンチェルトのソナタ形式。)
   オ−ケストラ呈示部1-43、ソロ呈示部第1主題44-67、第2主題68-88、
   第3主題とでも言うべきもの89-119、オーケストラ小結尾120-132
   展開部133-188(呈示部の要素と、総合的には「関係ない」かたちをしており、原初的です)
   再現部(特にハープはかなり変形)189-265
   ※ ただし、第2主題が現れません。第3主題が212から現れます。
II. Andantino 3/4 118小節(ヘ長調)
  冒頭の有名な主題をキーとして三つのセクションに別れます。
  第1部:1-57、第2部:58-102、第3部(コーダ):104-118
  第1部後半と第2部後半が違う要素なので、ロンド形式的な意識が差し挟まれているかもしれません。
III. RONDEAU (Allegro) 2/2 392小節
  Aが現れる箇所:1-27、181-206、367-最後
  他要素は入り組んでおり、何通りもの読み方を許すと思われます。
  これ以降(これに先立つものも、今思えば、なのですが)の彼のロンドは、「ロンド形式」という
  枠で見るには、多様過ぎます。ハイドンやベートーヴェンにはない作法ですね。

中身についてを先に記しましたが、この作品の誕生経緯については、伝記上はけっこうはっきりしています。
NMA記載のところとズレがありませんので、海老澤敏「モーツァルトの生涯」に沿って簡単にまとめます。
フルートの上手いド・ギーヌ公という人物の令嬢に、モーツァルトは4月頃以降、毎日2時間作曲を教えに行っていました。が、作曲の方ではメロディ一つなかなか作れないお嬢さん、意外な才能があって、200曲も曲を暗記している上に、ハープを弾くのが上手かった。で、この父娘のために作られたのが本作品だった、ということです。(CDはすぐ見つかります。下記リンクのsergejOさんのサイトをご活用頂ければ幸いです。)

このときのモーツァルトの作曲教授法がなかなか面白いので、海老澤著伝記から引用しておきます。

「和声の勉強は相当のところまで出来、低音をつけるのもなかなかのできばえだったが、三声部で書くことを始めると根気が続かなくなってしまう。まだ早すぎるのである。(中略)楽想を生み出す力がないので、なんにも出て来ない。(中略)まったく単純なメヌエットを[補:モーツァルトが]書き出し、彼女がそれに変奏曲をつけられるかどうか試みてみるのであった。それも駄目。どう始めてよいか分かっていないなと思ったので、第1小節を変奏してやって、同じ楽想で続けなさいと言う。これはかなりうまくいったので、それが終わってから、今度は何か自分でやってみたらという。第1声、つまり旋律だけもいいから。彼女は十五分考え込む。なんにも出て来ない。そこでモーツァルトは4小節メヌエットを書いて、あとを続けてくれと頼む。たいへんな苦労の末、なにやらでき上がったのだ。(後略)」(海老澤敏「モーツァルトの生涯」白水Uブックス版2-120頁、通しで392頁)

なお、この作品に対する支払いはなかなかなされず、モーツァルトはパリでの不快感にいっそう強く浸ったようです。

本作は、自筆譜の一部の写真がNMA14分冊に収録されています。



散逸したとされる協奏交響曲については触れません。


ボーマルシェの<セビリアの理髪師>のロマンス<私はランドール>による12の変奏曲 変ホ長調 K.354(299a)については、作曲の経緯は私には調べがつきませんでした。
ただ、この変奏曲を、モーツァルトはウィーンで皇帝の前で演奏する計画をしていて、ザルツブルクの大司教コロレドに阻止されたことを憤っている、父宛の書簡(1981年3月24日)があるとのことです。
用いられている主題の作者が明示されていませんが、戯曲に付けられていた、大衆音楽作曲者ボードロンという人のものだそうです。
上のエピソードからも察せられるように、モーツァルトにとっては自信作でもあったと思われ、構成がなかなか面白い作品です。(「フィガロの結婚」との繋がりも興味を引くところですが、明確には分かりません。)

・第10変奏から最後までをお聴き下さい。
<私はランドール>による12の変奏曲
Bart van Oort(Fortepiano ワルター1795年頃タイプ、2000年複製) BRILIANT 93025/3

テーマ:Allegretto 2/4 Es
第1変奏:同上、流れるような16分音符
第2変奏:同上、16分音符の動きが左手に移動
第3変奏:同上、バロック的な装飾音型への変奏
第4変奏:同上、分散和音による変奏
第5変奏:同上、右手はオクターヴ音型で、耳の錯覚を利用して主題を立体的に聞かせる
第6変奏:同上、オクターヴ音型が左手に移動
第7変奏:同上、密集した和音と音階的な動きの32分音符を軸とした変奏
第8変奏:Tempo di Menuetto 3/4、最後の6小節は自由な"Presto"
第9変奏:変ホ短調、Allegretto 2/4、ラメント的な要素を取り入れた変奏
第10変奏:Allegretto 2/4 Es、右手に、持続するB音のオクターヴを置いたもの
第11変奏:同上、左手に移動
第12変奏:Molto Adagio、モーツァルトらしいカンタービレ
テーマに回帰して終了。

ほぼ、二つずつの変奏がまとめて着想され、かつ作品の連続性を高める働きをしていることがうかがわれます。
第8変奏、第9変奏、第12変奏を挟み込むことで、作品を巧みに膨らませているのも分かります。
すなわち、第7変奏までは一気に進みますが、第8変奏にメヌエットが来、第9演奏で翳りを与えることで、いったん音楽を寸断してみせ、テンポの回帰した第10-11変奏のあとにまた思いきりのいいアダージョを置くことで、お客の溜息をさそった後に最後のテーマ再呈示をコーダにしてやんやの拍手をえる、という筋書が見て取れる作品です。
CDは様々出ていますが、フォルテピアノでいい演奏があれば、そっちで聞くのが楽しい気がします。



アルフレート・アインシュタインの頃までは、フランスの旋律に題材を求めた変奏曲は1778年に他にあと3作(K.264,265【きらきら星変奏曲】,353)つくられたと見なされていましたが、その後の用紙研究から、それらは1781年以降の作であると見られています。名前が知れ渡って来たフォルテピアノ奏者であるOortの全集ディスクに解説を付したシルビア・ベリーの記述では、K.264は1778年の作であるとしています。ですが、様式上はK.265のほうに近い気がしますので、年代の如何に関わらず、これらの変奏曲群はまた後日まとめて見てみたいと思います。

神童も大人になればただの人、扱いで苦しめられた挙げ句、母をも、そして帰路にはかつての恋人の心も失ってしまった、惨めな1年の間の作品については、これでひととおり触れ終えました。(12月の、ミュンヘンでのアロイジアへの失恋については、密着する作品はありませんので、綴らなくてもいいでしょう。)


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sergejOさんの記事の便利なインデックスも是非ご活用下さい。

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コメント

K299は協奏曲というより協奏交響曲の要素が強い作品ですね。
モーツァルトの協奏曲はもともとオケが饒舌気味ですが、
この曲ではパリでの経験が活きているのか、
ソロとオケの連携の緊密さが増しているようですね。

ド・ギーヌ公爵から「父娘で演奏できるソナタ」を
所望されたハズのモーツァルト。
こんなプロ仕様のコンチェルトを書いちゃって
大丈夫だったんだろうか。
って報酬の支払い散々渋られてましたよね。
トホホ~…。

投稿: Bunchou | 2009年6月27日 (土) 20時33分

それでも、モーツァルトはパリではこの親子にはまだ丁寧に扱ってもらった方ですよねー。

スタイルは当時のフランスの流行を良く吸収しているのではないかと思いますが、東寺のフランスの流行ってどんなのか分からんので、実は私はよー分かっておりません。(^^;

投稿: ken | 2009年7月11日 (土) 02時22分

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