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2009年1月31日 (土)

モーツァルト:フルート協奏曲 およびオーボエ協奏曲断片

モーツァルト:フルート協奏曲 およびオーボエ協奏曲断片

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ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。

K.314(ニ長調)については、オーボエ協奏曲の編曲ということで前に記述しましたが、海老澤モーツァルト伝の読み落としが私にありまして、この作品、最初にフルート用として作られたものがオーボエ用に編曲され、さらにフルート用に直された、という見解もあるそうですので追記しておきます。申し訳ありませんでした。
なおかつ、マンハイムで加えられた特徴としてはクレッシェンド(crescendoの文字で表示)の付加があります。原稿の出版譜ではオーボエ協奏曲版のほうにも、校訂の結果、同箇所に記号としてのクレッシェンドの付加があります。

フルートとハープのための協奏曲の方は、パリでの作品ですし、パリで他に作られたものとの比較もしたいので、今回は触れません。



マンハイムで作られたフルート協奏曲は、唯一、ト長調K.313ということになりますが、この作品の、とくに第1楽章には、ちょっとと惑わされました。何べんスコアを眺めても、あるいは音の例を聴いてみても、造りが「古典派的」ではないのです。

全体を通して言えば、作風自体は第3番以降のヴァイオリン協奏曲の流れを汲んでおり、かつ、より小規模になっています。そういう意味では、本質的には新味が無いようにも感じられます。
第1楽章の主題も、ヴァイオリン協奏曲の第4番のヴァリエーションのように見受けさえします。
第3楽章はメヌエットのテンポのロンドで、同じくヴァイオリン協奏曲第5番の第3楽章の路線を踏襲し、なおかつ「トルコ風」的な奇抜さは避けていて、品を保っているようでさえあります。
耳にしたときに敢えて「これは」と思わされるのは第2楽章でして、これはザルツブルク時代の交響曲(シンフォニー)の中でフルートを用いた緩徐楽章を髣髴とさせる、弦楽器の倍音の上をフルートが補強するという豊かな響きで開始され、そのまま自然に、流れるようなフルート独奏が導入されるため、この楽章だけ抜き出して聴けば、たとえばグルックの「オルフェオとエウリディーチェ」の中の「妖精の踊り」を連想させてくれさえします。すなわち、オペラの幕間音楽のような構造と響きを持っている。・・・モーツァルトはやっぱり、マンハイムでもオペラを書きたかったんだろうな、と感じさせられます。



で、第1楽章。
普通に「第1主題」・「第2主題」を持つソナタ形式なのか、と思って眺めてみると、違うのです。
協奏曲での古典的な「ソナタ形式」は、オーケストラによる前奏部は第1主題だけの提示に留まるか、第2主題を示すとしても、それはクッキリと第1主題と対比をなしているのが通常、という、私の思い込みもありました。
・・・が、まず、このオーケストラの呈示部には、第1主題と第2主題の明確な対比は存在せず、音楽が一気果敢に前進します。
では、第2主題はフルート独奏が入ってきて始めて示されるのか、と思うと、途中短調になってみたり、さらにオーケストラのトゥッティを挟んで属調に変化したりし、都度「ここが第2主題か?」と思うのですが、独奏呈示部の最後はオーケストラ呈示部とおなじ動機で締めくくられています。
ここまで見た時点で、
「あ、これは、<ソナタ形式(教科書的な意味での)>ではない」
ということに気が付きます。
中間部も、呈示部の動機が元々豊富な要素から成り立っている上に、その動機の特定のものに依存して作曲された部分がないため、自由度が非常に高い。
再現部は、これまたオーケストラ部・独奏部がそれぞれ呈示部を忠実に再現する気配はなく、相互に入り混じっている。
この造りは、「ダ・カーポ・アリア」の器楽版とでも言うべきものです。
そう、この楽章、実は、同時期に立て続けに作られたコンサートアリアと、どうやら時期だけでなく、割く方まで機を一にしたものであるようなのです。

以上についてはもとより、この協奏曲自体についても、アインシュタインや海老澤敏先生の詳しい言及は見つけておりません。私の捉え方が間違っていないかどうかは、もしお手元にいい演奏をお持ちでしたら、是非お聴きの上ご判断いただければと思います。

・・・マンハイムのモーツァルト、滞在期間は間もなく切れようとしているときに、なお、当地でのオペラ創作と発表への夢を捨てきれずにいるのが、まさか器楽曲の中にまで反映されているとは、思いもよりませんでした。

それを感じ取るまでに、予想外に時間がかかってしまいました。

どなたも別にお待ちではなかったでしょうけれど・・・遅くなってすみません。
(昨日、私事でも「遅くなってゴメンナサイ」事件を起こしましたので、ちと胸が痛みながら綴りました。)

編成:オーボエ2、ホルン2、弦五部。第2楽章には2番フルートが加わる。)
I. Allegro maestoso ,4/4(トゥッティ呈示部1-30小節、ソロ呈示部第1部31-60小節・第2部61-80小節・終止部81-90小節、展開部91-148小節、再現部149-215小節、カデンツァ215小節、コーダ216-219小節)
II. Adagio ma non troppo, 4/4, D(A部1-10小節、B部11-26小節、小終結部27-37小節前半、A'部37小節後半-41小節、C部42-56小節、カデンツァ56小節、コーダ57-62小節)
III. RONDO, Tempo di menuetto (A:1-15小節、B:16-27小節、C:28-35小節、独奏独立部36-65小節、D:65-70(solo)-81小節、E:82-84(solo)-94小節、A':95-106小節/短調部107-164小節/ロンド再現部(D部で開始、214-282)、coda283-290小節



ト長調フルート協奏曲(K.313)第2楽章の代替楽章としては、K.315が、ト長調協奏曲と同時期(おそらく完成直後に作られています(Andante ハ長調、2/4拍子、98小節)。オリジナルで2番フルートが加わることに対して「不自然だ」という意見でもあったのか、演奏上の都合2番が入ることが不適切だと考えられたのか、いずれもだったのか、そうした理由で改作されたものでしょう。音符単位で長さを見れば、むしろ49小節に短縮された(オリジナルより13小節短い)とみなすべきです。第2フルートは当然なくなりましたし、ソロパートは見ようによってはより協奏曲にふさわしくなったかもしれませんが、曲想は単調になってしまっていて、このあたり、イ長調ヴァイオリン協奏曲(第5番)の第2楽章が改作されたときと類似したものが感じられます。


管楽器の協奏曲については、以後、ホルン協奏曲とクラリネット協奏曲について触れるまで綴る機会がありませんので、ちょっと付け加えをしておきます。

後年になりますが、モーツァルトには別にオーボエ協奏曲作曲のプランも合ったことが分かっています(1873年2月15日付書簡)。
推測ではエステルハージ家のフランツ・ヨーゼフ・チェルヴェンカという優れた奏者に頼まれ、3ドゥカーテンの報酬を得る約束をして作曲が始められたもので、二つの断片が残されていて(短いK.416gと61小節あるK.293)、いずれもヘ長調であることから同一作品のプランであると思われています。
作曲が中断した理由は明確になっていません。
K.293は50小節目まではオーケストレーションが済んでおり、冒頭をソロが一緒に演奏した後は、49小節目以降現れる独奏はK.314と類似した入りを持っています。テーマは性格的にK.314と若干違ってはいるものの、たしかに新味には欠けるかも知れず、この年あたりには既により充実した作風を持つようになっていたモーツァルトとしては(作曲に際してK.314を参照していることが明確になっていますから)、不満足だったのかもしれません。K.293についてはコンラートの作品表では1778年作となっていますけれど、以上のような事情と書簡との照合による所説(アインシュタイン)から、1783年作と見なす方が妥当かもしれません。(全集第14分冊での説明もアインシュタインの見解を支持しています。)・・・以上、オーボエ協奏曲としてのK.314について述べた際の内容への補足と致します。

以上で、マンハイム時代の協奏曲については言及を終えました。


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コメント

こんばんは。
ト長調のコンチェルトは個人的にすごく好きな作品です。
曲の規模は大きくはなく、コンパクトにまとめられていながらも
管弦楽伴奏はなかなか手が込んでいたり、
ソロとの絡みにも気が配られていたりと
モーツァルトがそれまでの協奏作品で磨いてきたスキルを
十分に発揮していることが伺えますね。
一般的にはK314の人気に及ばないようなのですが、
とってもいい曲だと思います。

第二楽章の差し替えについてはよく言われるように、
演奏難度に関わる問題があったのではないかと考えます。
二つの緩徐楽章を比べてみると
K315の方が「ソロ偏重」気味の作りになっており、
K313のアダージョにおける
繊細なオーケストレーション(下手をすると第一楽章より難物?)
にはクレームが付いたのかもしれません。
また、モーツァルトが緩徐楽章に「アダージョ」の指示を
与えることが極めて稀であり、
そのほとんどが充実した音楽であることを考慮すると、
やっぱり注文主の技量では手に負えなかったのかなあ、と
想像してしまいます。

それにしても、こういう作品を聴かされると
モーツァルトの「フルート嫌い発言」が
とても嘘臭く感じられますね。
やっぱり「父への言い訳」的な言葉だったのでしょうか。
(後のハ短調のクラヴィーア協奏曲では相当に大胆なソロ・フレーズも!)

投稿: Bunchou | 2009年2月 2日 (月) 00時50分

Bunchouさん、

>モーツァルトが緩徐楽章に「アダージョ」の指示を
>与えることが極めて稀であり、
>そのほとんどが充実した音楽であることを考慮すると、
>やっぱり注文主の技量では手に負えなかったのかなあ、と
>想像してしまいます。

とくにこのくだりに「ははあん、そういうことだったのか!」
拍手、と思っていましたら、クヴァンツの次の記述に出会いました。

「アダージョは、単なる音楽愛好家には、一般に最も親しまれないものである。・・・しかしほんとうの演奏家なら、ここで頭角を現し、識者に自分の技量を示すことができる。」(『フルート奏法』第14章§1、荒川恒子訳)。

ますます「なるほど!」でありました。

この曲が2番と比べて一般化しないのは、やはり「造り」がより高度だからなのではないかなあ、と感じております。かつ、演奏でも、第1楽章の最初の1音を、おそらくモーツァルトの理想では「カーン」と当たる音で吹いて欲しかったのではないかと思うのですが(音域的には可能です)、そうではない演奏ばかりが録音で出回っているからではないのかなあ、とも思っております。

第2楽章問題は、ご推測の通りでしょうね。

いつもご教示ありがとうございます!

投稿: ken | 2009年2月 2日 (月) 23時20分

こんばんは!
すいません、またもや返信が遅れてしまいました。
(悪い癖ですね。)


クヴァンツの記述は浅学ながら全く知りませんでしたが、
僕も「なるほど!」と膝を打ちました。
モーツァルトは「アンダンテ」や「ラルゲット」の指示でも
充実した音楽を残してはいますが、
いろいろ作品を見ていくと「アダージョ」という指示の扱いには
特に慎重を期しているように感じていたので、
これにはホント、納得です。
(そういえば「ラルゴ」とか「グラーヴェ」の指示なんて、
ほとんど無いですね。)

となると、
ハイドンの中期シンフォニーあたりでは結構目に付く
「アダージョ」系の指示記号は、
(シンフォニーというジャンルの一般的性格からして)
極めて興味深いですね。
これは、地方の宮廷とはいえハイドンの音楽の理解者であった
エステルハーヅィ候の元で作曲に勤しんでいたことと無縁では
なさそうだと勝手に妄想してしまいます。
(ハイドンがクヴァンツと同様の考えだったかどうかは
分からないという問題はありますが。)

古典派の緩徐楽章というと、十把一絡げに
「骨休めの音楽」
などと言われてしまうこともありますが、
やはり曲毎にちゃんと考えていかないといけないようですね。
これって当然のことのようですけど、
実際の演奏ではどのくらい考慮されているのか、
とても興味があります。
(実際、プロの方の演奏でも「あれ?」ってことが
残念ながら有り得るように思われます。)

投稿: Bunchou | 2009年2月12日 (木) 00時31分

こちらの方こそ遅くなって済みません。
Bunchouさんに頂いたコメントも頭に描きながら、
今日はクヴァンツとレオポルト・モーツァルトのテンポの記述、
バドゥラ=スコダによる解説からの抜き書きを記事にしてみました。

テンポと音楽イメージというのは、彼らの感覚の中で表裏一体としてありますので、
「結構難しい問題だな」
と実感しているところです。
「骨休めの音楽」ということは、少なくとも演奏者にとってはあり得ない、
とは言えそうですね。

投稿: ken | 2009年2月12日 (木) 23時47分

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