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2009年1月 4日 (日)

胃が痛くなる「調」の話(音名・固定ド・移動ド):聴き手のための楽典004

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ブラームスの「交響曲第4番 ホ短調 作品98」を素材に

001-拍子
002-速度(テンポ)
003-表情
 ※ それぞれ「基本的な考え方」の説明を試みていますので、辞典代わりにはなりません

の素人説明を試み、「次は調の話を!」と息巻いてから、はや一ヶ月が経ってしまいました。
何故なら・・・「調」の説明は、もともとかなり割り切って端折ってするつもりだったのですが、根本的な難題があることに気づき、ちとばかり長い期間、悩んでしまったからであります。

正月も三が日を過ぎ、ごちそうで胃がもたれているところでしょうから、そんな状況にはふさわしいかな、ということで、まあ仕方ない、もうそろそろタイムリミットだな、ということでおっかなびっくり
「いってみようか」
と清水の舞台の縁の上に立った次第です。



さて、この交響曲の構成は、過去三度見てきましたが、繰り返します。

第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ ソナタ形式 ホ短調 2/2拍子
第2楽章 アンダンテ・>モデラート 二部形式 ホ長調 6/8拍子
第3楽章 アレグロ・ジョコーソ ソナタ形式 ハ長調 2/4拍子
第4楽章 アレグロ・エネルジーコ・エ・パッショナート パッサカリア ホ短調 3/4拍子

今回は、色をつけた「○○調」というところがなんなのか、をお伝えするのが課題です。・・・しかも、方針として、音符を使わない。・・・音符を使って視覚的にした方が、もしかしたら平易になるかも知れないのです。そこは、ですが自分で決めてしまったこと。方針は守りましょう。



まず、「長調」と「短調」について、きわめてざっくりと行ってしまいましょう。
次のうち、どっちが「長調」で、どっちが短調か、という、簡単なクイズに答えられれば、この件はおしまいです。

1)ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ
2)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド

ヒント・・・「ドレミの歌」は、さすがにご存知ですね?
「ドはドーナツのド、レはレモンのレ・・・」
なに、ご存知ない? はい、そのかた、すみませんが、お別れしましょう! 私にはあなたに「調」を分かって頂けるだけの能力を持ち合わせていません。(T_T)

「ドレミの歌」の調べと歌詞に一致するのは1、2のどちらですか?
2)ですね。
じゃあ、「ドレミの歌」は明るい歌ですか? 暗い歌ですか? ・・・あの、この歌が流れる「サウンド・オブ・ミュージック」のストーリーからいろいろ深く詮索しないで、素直に「思って」下さい。
すると、当然「明るい」歌ですね。
明るいので、伸びやかですから、伸びのある方向の字がついた方の「調」が正解。はい、2)が「長調」です。
最近の一般的なポップや欧米音楽(およびそれに影響を受けた音楽)には・・・すなわち、ふつうにテレビやラジオに流れる音楽には、「長調」か「短調」しかありませんから、のこった1)が「短調」ということになります。
また、「長調」が「明るい」調でしたから、「短調」は「暗い」調、ということになります。
※ 厳密にはそんなに単純な話ではないのですが、これも深く考えないでおいて下さい。この楽典の話の延長(それは私自身にとっても基礎の勉強のやり直しなのです)がどこまでいけるかによって、複雑な話はこのあといつでもチャンスがありますから。



上の「ドレミの歌」のように、長調を「ドレミファソラシド」、またそれを真似して仮に短調を「ラシドレミファソラ」と歌うのでしたら、その歌い方を「階名唱」と言います。
もしあなたがイタリア人かフランス人だったら、ここまでで調の話を終わりにすることができます。
イタリア式ですと、「ドレミファソラシド」はそのまま絶対的な音の高さを表わしますので、ブラームスの交響曲第4番の調について、イタリア式の読み方をするのでしたら
・タイトルの調:「ホ」短調=「ミ」短調(・・・ああ、ミカン食いたくなって来た!)
・第1楽章:ホ短調=「ミ」短調
・第2楽章:ホ長調=「ミ」長調
・第3楽章:ハ長調=「ド」長調
・第4楽章:ホ短調=「ミ」短調
という具合になります・・・あれ?
どうやら、はなしがここから難しくなりそうです。

日本式(日)とイタリア式(伊)の対応は、ブラームスのこの作品からははっきり見えて来ないのですが、実は以下のようになっています。(ここでは日本式の方を分かり易くするために平仮名にし、加えてわざと、短調での対比をしておきます。理由はすぐにはっきりするでしょう。)


日: い ろ は に ほ へ  と
伊: ラ シ ド レ ミ ファ ソ

すなわち、またブラームスの交響曲第4番の各楽章の調を見て頂くと、日本式の「ホ」にあたるイタリア式は「ミ」であることが分かります。第3楽章の「ハ長調」がイタリア式だと何故「ド長調」になるのかは、応用問題として解いてみて下さい。

さて、ところで、「ミ」長調とか「ミ」短調、って、一体なんでしょう? これが、第1の難問として私たちの前に立ちはだかります。
かいつまんでえば、
・「ミ」長調=「ドレミファソラシド」を「ミファソラシドレミ」に置き換えて歌う
・「ミ」短調=「ラシドレミファソラ」を「ミファソラシドレミ」に置き換えて歌う
と、これだけなんですが・・・頭で考えるとこんがらがるでしょう?
要は、「ドレミの歌」を「ミはドーナツのミ」で歌い始める。以下、「ファはレモンのファ、ソはみんなのソ、ラはファイトのラ」となるんですが・・・歌えますか?
「冗談はヨシコさん(古いか)」
と言われてしまうかもしれませんが、音楽専門の高校や大学の「ソルフェージュ」という勉強では、こうした歌い方を実践しています。この歌い方を「固定ド唱法」と呼んでいます。
メリットとして、熟練すれば、音の「絶対的な」高さで楽譜を自在に読めるようになるため、現代音楽のような「無調」と呼ばれる「長調」とも「短調」ともつかない複雑な音楽でも歌ったり演奏したりすることが容易になることが上げられるかもしれません。
デメリットとしては、「調」とは何かを先に理解してしまった場合には、この唱法は実に歌いにくい、すなわち独学では熟練しにくいこと、熟練した人でも長調短調で出来た音楽については転調(曲の途中で調が変わること・・・いずれまたご説明できる・・・でしょうか?)についての感覚が鈍いケースをよく見受けること、が上げられます。



さて、上の日本式の音の名前(「音名」と呼びます)が、何で「イロハニホヘト」なのかは、イタリア・フランス式とは別に、そもそも、もっと統一的なヨーロッパ式(欧)の「音名」がありまして、その順番通りに日本語の「イロハ」を当てはめたものになっています。日本式とイタリア式を比較したものの下に、それを付け加えてみましょう。


日: い ろ は に ほ へ  と
伊: ラ シ ド レ ミ ファ ソ
欧: A B C D E F  G

ブラームスの交響曲の各楽章の調を、これに基づいて英語で標記しますと、
・第1楽章:ホ短調=E minor
・第2楽章:ホ長調=E major
・第3楽章:ハ長調=C major
・第4楽章:ホ短調=E minor
となります。輸入盤のCDでの英語の調の標記はこのようになっているはずですから、確かめてみて下さい。

で、この欧米での一般的な「音名」は、そのまま絶対的な音の高さを表わします。この音名を「固定ド唱法」に置き換えて「ドレミの歌」を歌うと、こうなります。
「CはCCレモンのC」
・・・いや、失礼しました。お宅はすきま風が入るような造りではありませんね?
・・・ちゃんとやります。
「CはドーナツのC、DはレモンのD・・・」

なんだか不合理ですね(いちおう、「音名唱」と呼ばれる歌い方なのですが)。で、この「音名」を絶対的な音の高さとして決めておいて、たとえばホ長調なら「E」の音を「ド」と読み替えてしまう歌い方をすると、「ドレミの歌」は、もとのまま
「ドはドーナツのド、レはレモンのレ・・・」
で歌えることになります。文字だけでは分かりにくいのですが、こういう歌い方を「移動ド唱法」と言います。

つまり、まずイタリア式でホ長調を歌うとなると(#は実際に長調にするために楽譜上の音が半音上がることを示すために使用される記号です。いまは頭に入らなくても結構です。)

(音名唱)EF#G#ABC#D#=(階名唱)ミファソラシドレ・・・「固定ド」

でなければならないところが、他のヨーロッパ諸国式に音名のABCと階名の「ドレミ」の二本立て路線で行きますと、ホ長調は

(音名唱)EF#G#ABC#D#=(階名唱)ドレミファソラシ・・・「移動ド」

という読み方(等式)で結び合わせられることになります。

日本では、30年ほど前までは、当時の文部省の指針で、義務教育では「移動ド唱法」を指導していました。メリットとしては、音の高さが変わっても「長調」か「短調」かの判別がし易いし、そのさいの基準となる音(相対的に「ド」となる音、その調の「主音」と呼びます)が何であるかの判別もし易い、ということが上げられます。デメリットとしては、調が変わるたびに、楽譜上で同じ位置にある音の名前を変えて階名唱をしなければならず、あらかじめ調号(これもできればあらためて説明したいと思います)についての知識を身につけておく必要があること、無調音楽、ならびに後期ロマン派あたりの楽譜を読む際には混乱をきたし易いこと、が上げられます。
ヨーロッパ各国の実情は、イタリアとフランスが「固定ド」、その他の諸国は「移動ド」で階名唱をしているようです。
日本では、先ほどちょっと触れましたように、近年は「固定ド」が主流となっていますが、長調・短調というものの感覚がもともと外来のものであり、その感覚が充分身に付いていないところへ「固定ド娼法」を導入することには異論もあり、「移動ド唱法」の重要性を訴える重鎮もいらっしゃいます。

私は、出来るだけ臨機応変に「固定ド」・「移動ド」を使い分けられることが理想だと思っております。

なお、これは読みとばして頂いていいのですが、なぜ「ハ長調」の主音ではなく、「イ短調」の主音である音の方にヨーロッパでは「A」が割り当てられたのかについては、音楽史の本の記述も意外と曖昧で、音名・階名ともその由来を確立したグイードという11世紀の理論家がそうしたからだ、とあっさり述べ、あるいはそれを自明のこととして取扱っているのですが、たとえば平凡社の「音楽大辞典」などには「9世紀頃には長調の主音にAを割り当てていた」なる記述もあり、この「長調」が「短調」の誤植でなければ、事情はそう簡単ではありません。また、11世紀当時はまだ長調や短調という「調」の捉え方はなく、自然発生的にまとめられた「教会旋法」が4種2類あっただけでして、そのなかでおそらく基本とされた旋法(=中世ヨーロッパの「調」)は正格のものはドリアでして、この調の主音はDです。この旋法の変格型であるヒポドリアの主音ならば「A」です。かつ、このA音は、ドリア・ヒポドリア両旋法の本来の呼び名である(と私が誤解しているのかな?)プロトゥスでは、正格の場合の吟唱音、すなわち聖歌が歌われる場合に最も引き延ばされる音高だったのでして、私としては、グイード云々以前に「歌い方」そのものに由来して決定されたのではないか、との疑問を持っております。
このあたりを確認できる資料があるようでしたら、ぜひご教示頂ければと存じます。
※ なお、リンクしたWikipediaのグイードの記事の内容には、異説がある部分もありますので、ご留意下さい。たとえばヨハネ讃歌に基づいて彼が考案した階名のうちのUtがDoに変換されたのは"Dominus"のDoをとったからだ、というのは、定説ではありません。



やっぱり、文字でだけでは分かりにくい説明しか出来ません。
能力の限界、とお笑い頂ければ幸いに存じます。

ただ、最後に、この音楽を「ドレミ」で歌ってみるとしたら、お読み下さったあなたにとって
「どちらがラクですか?」
という問いかけをして、本記事を締めくくりたいと存じます。

歌い方1:そ|どー、しどみソド|ドー etc.
歌い方2:ど|ふぁー、みふぁらドファ|ファー etc.

引用した音楽については、既にご存知だとは思いますが、こちらの記事をご参照下さい。同じものを使っています。

今回は、要約しませんね。ゴメンナサイ。

残るところは、とりあえず、作品番号とは何か、ということ(なんで作品98なんて番号がついているんでしょうね?)と、形式の問題ですね。そこまで進んだら、その先をどうしていくか、あらためて考えます。
長くなり、ご退屈様でした。


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