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2008年11月 3日 (月)

「見よ、勇者は帰る」(ヘンデル):好きな曲001

誰でも、初めて知った(思い出に残った)クラシックがこの曲だ、などと言ったら、タイトルだけ見ると
「え?」
と思われるかもしれません。

まずはお聴きになって下さい。

・See the conquering hero coms!

SCHLIEBERBACHER MOTETTENCHOR, SCHLIEBERBACHER KAMMERORCHESTER
(CHRISTOPHORUS DIGITAL 77128, 1992)

保育園や幼稚園の運動会で、いまでも子供たちが表彰される時に流れる曲です。
・・・でも、ずいぶん趣きが違いますね。ここへ掲載したのが「オリジナル」です。


Haendel私は小学校に入ったとたん、徒競走(最近では50メートル走とか、距離で呼ぶようになって来ましたね)では順位は後から数えた方が早いくらいになりました。中学では、新聞配達をしていたおかげで、またそこそこの順位がとれるようになりましたけれど、小学校での運動会は、とにかく鈍足だったから嫌いでした。 嫌いだった運動会で何度も何度も聴かされたこの曲が「好きな曲」の最初に上がるのは変な感じがしないでもありません。ですけれど、2年を過ごした幼稚園時代は、春と秋の2回、通算で4回あった徒競走は2年とも2位でした。どうしても抜けない子が必ず一人混じっていて、仲良しでしたが、運動会のときだけは抜けないのが口惜しいのでそっぽを向いて口をきかなかった。 そんな、幼稚園のときの運動会は、記憶の中ではいつでも空はすっきりと青かった。 雲ひとつなかったような気がするのは、記憶が思い出をきれいにしているからでしょう。 そんな青空の中で朗々と鳴るこの音楽は、長い間、耳にするたび私を爽やかな気分にさせてくれました。

オリジナルを知ったのは、中学時代、「クラシック好き」になってから、ラジオのバロック特集番組を聴いていて、だと思います。
それまでの、堂々としたファンファーレ、という印象とは全く違うのに、仰天しました。
慌てて、貯めておいた小遣いを引っ掴んで、バスに乗ってレコード屋さんまで行きましたが、オリジナル版での録音は売っていませんでした。仮にあったとしても、おそらく、中学生が手を出せる値段ではなかったでしょうね。当時はちょっと大きな町でも、バロック以前の作品のレコードは「選集」がある程度で、あとはバッハの大曲が数枚組で高値で売っているくらいでした。

掲載した録音は1992年の発売から多分そう遠くない時に、CDショップの棚にたったひとつあったものを手にしたものだったと思います。子供が生まれるには持っていたのは間違いないからで、結婚したのが1992年でしたから。



曲の説明をちょっとだけします。

作曲者はゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデル、但しこのひとの生まれはドイツですから、ドイツとイタリアを行き来していた25歳まではこの名前で人にも呼ばれ、自分でもそういう名前だと思っていたことでしょうが、26歳から亡くなった74歳まで活躍した場所はイギリスですから、人生の3分の2は「ジョージ・フレデリック・ハンデル」というのがこのひとの名前になります。
『反音楽史』という面白い本でこの点を盛んに強調している石井宏さんの正論には反しますが、以下、馴染まれているヘンデルのほうで、この人を呼びます。

ヘンデルはオペラの多作家で、かつ有能な興行者でもありました。縁をつかんで乗り込んだイギリスで、43歳の年までなんと18年間、自他多くの作曲家のオペラをイギリスの舞台にかけ、王室の保護も得て、優秀な興行成績を残し続けましたが、その分ライヴァルも多く、結局は破産の憂き目に遭い、体も壊します。(詳しい伝記は、ご興味があれば、書籍Wikipediaでお調べになって見て下さい。面白い逸話にも事欠きません。)

友人たちの催してくれた慈善演奏会の収益で借金から逃れ、脳卒中で倒れながらも奇跡的な回復を遂げたヘンデルでしたが、オペラから手を引くと、演技を伴わないでコンサートが出来るオラトリオへと創作活動の軸を変えてしまいます。オラトリオだから教会向けに書いたのか、というと、そうではなくて劇場向けだったところが、またこの俗物作曲家らしいところで、1741年の初演の時「ハレルヤコーラスで聴衆が全員起立した」オラトリオ<メサイア>も、劇場用に意図された作品です。エピソードは実際にあった通りのことのようですが、劇場で宗教劇が演奏されるということには当初は聴衆のためらいがあり、<メサイア>がほんとうに成功を収めた、といえるまでにはなお十年を要した、というはなしです。

「見よ、勇者は帰る」も、そうしたオラトリオの1作、「ユダス・マカベウス(マカベアのユダ)」(1747作)の第3部の中に出てくる合唱曲および行進曲です。
「ユダス・マカベウス」の物語は旧約聖書の外典と呼ばれる一群に含まれる「マカバイ書」に沿ったものでして、この「マカバイ書」も、子供時代の私には目に出来ないシロモノでした。聖書は信者(教徒)ではないものが手に出来るものとしては協会版の旧約新約が一緒になったものだけが殆ど独占的に出回っていて(したがってカトリック版ではないのです)、外典は大学に入ってから研究者向けのものが出ているのをやっと見つけましたが、目ん玉が飛び出るような値段でした。内容は歴史物語で、周辺の大国から常に虎視眈々と狙われ続けていたイスラエルの地の独立を守り続けたマカバイ家の中でも最大の英雄と見なされているユダ・マカバイが戦争に出掛け、生死も不明となっていたところで、イスラエルの人々が遠くから生還して来た彼を目撃し、喜びを徐々に大きくしていくさまを表したのがこの合唱です。情景が目に浮かぶようです。

歌詞は、次のとおり(訳しません・・・能力不足!)。

歌詞を読みながらお聴きになれるよう、こちらにも音を再掲載しますね。

(Chorus)
See, the conquering hero comes!
Sound the trumpets, beat the drums.
Sports prerare, the laurel bring,
Songs of triumph to him sing.

(Duet)
See the godlike youth advance!
Bteathe tha flutes, and lead the dance;
Myrtle wreaths, and roses twine,
To deck the hero's brow divine.

(Chorus)
See, the conquering hero comes!
Sound the trumpets, beat the drums.
Sports prerare, the laurel bring,
Songs of triumph to him sing.


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