« トロイメライ・・・夢・・・(シューマン):好きな曲004 | トップページ | 涙の(?)「スラヴ舞曲」(ドヴォルジャーク):好きな曲006 »

2008年11月10日 (月)

菩提樹(シューベルト):好きな曲005

心臓移植への応援の願いサイト「大樹君を救う会」
http://savedm.web.fc2.com/
・・・是非、お目通し下さい。



ファジル・サイのつくば公演もお聴き逃しなく!
http://ken-hongou2.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/in-808f.html


現在の精神上、かつ、手をつけてしまった教材の難しさから、なかなかメドが立ちませんが、従来の話題も復帰すべく怠らず勉強しておりますので、そちらはしばしご猶予下さい。


・菩提樹〜「冬の旅」第5曲(シューベルト)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ/イェルク・デムス(1965)
Deutsch Gramophone UCCG-5080


「歌ってばかりいた」話ばかりですみません。
今回あたりが、「歌う」ことからもう少し世界が広がっていく転機につながっていくところです。

2738625885歌集の中で、フォスターの歌と同じくらい好きだったのは、シューベルトの「菩提樹」でした。
ただし、歌集にある楽譜では、今日掲載した全曲が、ではなく、中間の激しい表情の部分は含まれていず、メロディも少し違うところがあります。
ただ、フォスターが「賑やか系」か「しっとり系」で感情が入り込みやすかったのに対し、「菩提樹」は、歌っていると、どことなく「大人になった」気分を味わえる、特別な雰囲気を持っていました。ですので、歌詞を忘れたたくさんの歌の中で、今でも最初のワンフレーズの歌詞を覚えている、という、貴重な存在であり続けています。

小学校でも「鑑賞曲」というのでいろいろ聴かされるようになり、シューベルトという作曲家の名前も知りました。実は、その頃は、運動音痴でもプールで長距離泳ぐのだけは得意で、当時は
「補欠でもいいから水泳の選手に仲間入りさせてもらいたい」
と思っていたのですが、音楽の先生に無理やり合唱団に入れられて、残念ながら水泳の選手になれず、授業の音楽は大嫌いになっていました。
授業が嫌いな分、「鑑賞曲」にはのめり込みはじめ、シューベルトにも「軍隊行進曲」と言うのがあるのを知りました。あとで分かってみると、この曲はピアノの連弾曲だったのですが、当時聴いたのはオーケストラでの演奏でした。
・・・人には「プラネタリウムで聴いた<新世界>の第2楽章が印象深かったから」と話して来たし、決定的だったのはたしかにそのことだったのですが、その話はまたします。
ですが、オーケストラにのめり込んだのは、なんと、オーケストラ編曲版の「軍隊行進曲」だったのでした。いま思い返すと大した編曲ではなかったのですけれど。
それから、オーケストラに入るにはどうしたらいいか・・・人数が多い楽器ほど入れてもらいやすいんじゃないか、と数を数えたら、ヴァイオリンがいちばんたくさんいるのが分かったのが、あとでヴァイオリンを始める結果となったのでしたが、同時に、別にヴァイオリンに興味があってオーケストラで弾いていたのではない、という<へんてこな>プロフィールを歩むきっかけになったのでした。

ともあれ、私の「アマチュアオーケストラ」生活のスタートを切らせてくれたのは、「菩提樹」の大人びたメロディの魅力と、編曲で聴いた「軍隊行進曲」の、いくら安っぽいとは言っても、おそらくはシューベルトという人の才能がもたらした、厚みもありながら軽やかさも兼ね備えているという、不思議な魅力でした。

「水泳が出来ないなら、学校の連中とは違うことを!」
みたいな、子供ながらの意地っ張りも合ったのかな。

でも、ヴァイオリンを手に出来るまでの道程は、子供ながらに平坦ではありませんでしたけれど。
それは、また。


歌集に載っている「菩提樹」は、おそらく今でも、シューベルトが作曲した通りのものではなく、最初の長調のメロディをすこし変形して3番までの有節歌曲(同じメロディを何回か繰り返して歌うもの。誰にでも身近な例は、学校の校歌でしょうね・・・校歌を「歌曲」と言っていいなら、ですけれど)になっています。合唱でも、そのかたちで歌われます。

なぜ、合唱では中間の激しい部分が削られたのか?

最近出た伝記に、その理由がキチンと推測されていますけれど、シューベルトの歌曲には勿論有節歌曲もありますが、名作の殆どは清らかで親しみやすいメロディで始まっていあるにもかかわらず、中間部やロンド部分に激しい表現を示しているため、そこまで含めて聴いてしまうと、清らかさとは程遠い、人間の正直な感情があまりに露わになるからです。

「冬の旅」でも、他には第11曲「春の夢」が代表的な名曲です。
一方で、ほとんど有節歌曲でありながら、繰り返されるうちに情感が深まっていく第1曲「おやすみ」、最終(第24)曲「ライエル弾き(ライアー回し)」といった魅力的な歌が揃っています。・・・それらすべてが悲哀感に溢れた美品ですけれど、私がそのことを知ったのは中学生になってからでした。

バイロイトの名ワグナー歌手だったハンス・ホッターが前線を引退したとき、この「冬の旅」をひっさげて日本にもやってきて、全曲演奏会を何度も開きました。
彼の歌で聴きたいところですが、手持ちがありません。

同じくこの歌曲集を愛したフィッシャー=ディースカウが3度目に録音したときのものでお聴き頂きます。彼は、歌詞の意味をよく捉えた歌いぶりに遺憾なく才能を発揮した人で、マーラーの「さすらう若人の歌」をこの人の歌で初めて聴いた時には仰天させられました。

Am Brunnnen vor dem Tore,              門前の泉に
Da steht ein Lindenbaum,                立てる菩提樹、
Ich träumt in seinem Schatten             陰でほの見た
So manchen süssen Traum.               夢の数々。

Ich schnit in seine Rinde                幹に刻んだ、       
So manches liebe Wort;                 愛の言葉を。
Es zog in Freud' und Leide Zu ihm mich immer fort.   嬉しきにつけ、悲しきにつけ。

Ich musst' auch heute wandern             行かずにいられぬ
Vorbei in tiefer Nacht,                  深い夜でも。 
Da hab' ich noch im Dunkeln              闇であるのに
Die Augen zugemacht.                 目を閉じたまま。

Und seine Zweige rauschten,              枝はざわめき
Als rriefen sie mir zu:                  ささやいている。
Komm her su mir Geselle,                「おいで、ここなら
Hier Findst du deine Ruh'.                 君はやすらぐ」

Die kalten Winde bliesen                頬を貫く
Mir grad' ins Angesicht,                 冷たい風。
Der Hut flog mir vom Kopfe,              帽子は飛び去った。
Ich wendete mich nicht.                でも振り返らない。

Nun bin ich manche Stunde              いまは離れた
Entfernt von jenem Ort,                あの木の側は。
Und immer hör' ich's rauschen:            でも聞こえる
Du fandest Ruhe dort!                 梢のざわめき
                            あそこならおまえは
                            憩えるのに
                            あそこならおまえは
                            やすらげるのに、と。
                            
(エスツェットのみ、手持つツールでは文字化けするので、s二つとしました。訳詞は原詩に忠実ではありません。拙くて恐縮ですが、適宜歌に併せたリズムにしてみました。)


L4WBanner20080616a.jpg


クラシックCD検索に便利!バナーをクリックして下さい!


sergjOさんの記事の便利なインデックスも是非ご活用下さい。


|

« トロイメライ・・・夢・・・(シューマン):好きな曲004 | トップページ | 涙の(?)「スラヴ舞曲」(ドヴォルジャーク):好きな曲006 »

コメント

泣いた・泣かないなどということに価値を置きたくはないのですが、何年も前に、やはり、フィッシャー=ディースカウの歌で、一曲目の『おやすみ』の歌詞を読んでいたら、泣けて泣けてしょうがなかったことを思い出しました。『菩提樹』は泣き疲れた自分を包むようでまた涙。そこで寝てしまったようです。
それ以来、この曲を聴いていないのですが、無意識に避けていたのだと思います。。。kenさんの記事で、そんな個人的体験を思い出しました。

投稿: sergejO | 2008年11月11日 (火) 00時31分

sergejOさん、おそくなってすみません。

涙の意味、人それぞれだと思います。
「おやすみ」や「菩提樹」で涙出来た、というのは、大人の心をもってから、のことでしょうね。
そのときに強い共感を呼ぶ歌は、涙させてくれるだけの理由を詩の意味以上に持っていますから、涙することがあった経験がある曲は、やはりよい曲なのだと思います。
私は中学になりたてで<冬の旅>を知った頃、「春の夢」が大好きで何度も聴きました。幼いながら・・・幼いからこそ、だったのかな、この曲のもつ起伏の激しさに、自分が重なり合った気がしたのだと思います。

投稿: ken | 2008年11月12日 (水) 07時34分

>「おやすみ」や「菩提樹」で涙出来た、というのは、大人の心をもってから、のこと
びっくりです。ほんとうにそうでした。
27,8でしたか、繊細でいいな、、、と思っても、それで良いと判ったつもりでしたが、まったく違う体験でした。

投稿: sergejO | 2008年11月15日 (土) 15時30分

おそらく、シューベルト自身にとっても「冬の旅」への作曲は特別な体験だったのではないでしょうかね。「水車小屋の娘」と比べると、質が全く違いますし。これらの歌曲集の差異を追体験できる「年齢」ってものが、どうしてもあるんですよね。もちろん、追体験できるだけのご自身の「経験」が、そのときにはとても重い役割を担うのですけれど。

投稿: ken | 2008年11月15日 (土) 23時43分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/208675/43073521

この記事へのトラックバック一覧です: 菩提樹(シューベルト):好きな曲005:

« トロイメライ・・・夢・・・(シューマン):好きな曲004 | トップページ | 涙の(?)「スラヴ舞曲」(ドヴォルジャーク):好きな曲006 »