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2008年8月29日 (金)

ノンヴィブラート:「必要性」の違い(ブラームス第4の例)

ブログに直接、1MBを超えるファイルを直接アップロードできる期間が限られていますので(9月8日まで延長はして下さったようです)、後日、全体像を是非きいて頂こうと考えていた、ブラームス作品の演奏例のファイルをあらかじめアップロードしておきます。
従って、それに伴って本来述べたいと思っていることについてはまだまとまっていませので、概略のみの言及に留めさせて頂きます。



ブラームスの交響曲第4番の、ノンヴィブラートで演奏された例です。

本来、この曲は私は個人的にはカルロス・クライバーの演奏が最も好きで、自分で聴くだけなら他はいらない、くらいなのです。

が、先般アーノンクールの著書を読み進めるにあたり、あらためて最近の特に日本の「モダンオーケストラ」が標榜する<古楽演奏を取り入れました>的売り込みかた、あるいはそれをモダンの演奏と「別物」と信じきっている音楽家の存在に強い疑問と危惧を新たにしました。

これまで幾つも確認を取って来ましたが、歴史的に、「モダンオーケストラ」は1930年代後半まではノンヴィブラートで演奏するのが普通でした。
ただし、1925年あたりの演奏から(ちょうどヴァイオリニストの世界でもクライスラーが「初めて」ヴァイオリン演奏にヴィブラートを恒常的に取り入れた時期です)は、例外的に、指揮者が表現上必要だと考えた場合には、主題にヴィブラートをかけさせる、ということが始まっているようです。ジークフリート・ワーグナーが父の作品を演奏した際のものに、はやくもそういう例を見出せます。

ただ、1938年段階では、フルトヴェングラーも、シューマンの交響曲第4番の演奏に際してノン・ヴィブラートを貫いていることは、以前にも申し上げたかもしれません。



ブラームスの第4については、作曲者はワインガルトナーの演奏を直接耳にしていて、気に入ったと表明している事実が知られています。
かつ、ワインガルトナーは、だいぶ後になりますが、この作品の録音を残してます。
残念ながら、その演奏の録音はまだ注文中で手元にありません。

1934年に、ブルーノ・ワルターがBBC交響楽団と第4の録音を残しています。
これがワインガルトナーのスタイルと似ているかどうかはまだ分かりませんが、これはノン・ヴィブラートを基本としてはいますが、浅めのヴィブラートをかけている箇所も既に少なくありません。ただ、実質上ノンヴィブラートに限りなく近いと思ってよいでしょう。
音質が悪くてPCでは確認しにくいのですが、まずそれをきいて頂きましょう。終楽章です。
「08_brahms_symphony_44.mp3」をダウンロード
キングインターナショナル OPK 2023

これが、19世紀から20世紀初頭までの一般的な演奏を継承した一つの例だとします。

現代の代表的なノン・ヴィブラート演出家はロジャー・ノリントンです。
続いては、こちらをお聴き頂きましょう。同じく終楽章です。
「Br4-4Nr.mp3」をダウンロード
EMI TOCE-13230

比べて頂くとはっきりするのですが、この2つはノン・ヴィブラートという点では共通するものの、
・ワルターは伝統の延長でその奏法を「無意識的に」採用している
・ノリントンは(詳しい手段は省きますが)、ノン・ヴィブラートによって作品の「線の絡み合い」がより明瞭に聞こえることを狙って「意識的に」ノンヴィブラートを採用している
という、大きな違いがあります。
つまり、ノリントンの指揮した演奏は、いわゆる<古楽奏法>と単純に言いきることは出来ません。逆に、「現代はむしろこういう風に試みた方が音楽への光のあたり具合が変わるのではないか」という強烈な意志を持った、「現代の」解釈です。

ノリントンが「現代的」だ、ということは、先に私が「好きだ」と言ったカルロス・クライバー指揮の演奏と比べてみても明らかになります。
・カルロス・クライバー/ウィーンフィル(1980)
「04_brahms__symphony_4_in_e_minor_op. 98 - 4. Allegro Energico E Passionato.mp3」をダウンロード
Deutshe Gramophone UCCG-70020

すなわち、演奏の技術、使用楽器こそ異なっていますけれど、音楽の構成全体に対する解釈では類似した点が多いのです(ノリントンは1995年に、クライバーは1980年に録音しているにもかかわらず、二者間の相違点は耳にする前に想像するほど大きくはありません。)


・・・ということで、ファイルアップだけが目的ですので、それ以上はまたの機会に譲りますが、おおむね、そのあたりをあらかじめお聞き取り頂いておけば、私の念願はとりあえず達成されます。

是非、お時間を割いて、じっくり比べてみて下さい。



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