« 東京ムジークフロー第45回定期演奏会(お聴き下さい) | トップページ | シューマンの「訓戒」 »

2008年7月20日 (日)

モーツァルト:ミサ・ブレヴィス変ロ長調K.275

L4WBanner20080616a.jpg

クラシックCD検索に便利!バナーをクリックして下さい!
昨日、私の所属します東京ムジークフローの第45回定期演奏会の演奏をアップしました。忌憚なくご批評頂き、少しでもよい演奏をするヒントを頂ければ幸いに存じます。
ここまで読んできたモーツァルト作品の個々へのリンクを作成し直しました。ご利用下さい。
2年後、完全にザルツブルクから飛び出すことになる前に、モーツァルトは完成されたものとしては後2つのミサを書くことになるのですが、このK.275が、実質的にはモーツァルトの「ザルツブルク時代からの卒業」作品となります。 作曲された日付は、モーツァルトが母と二人でミュンヘンへ(ついでマンハイム、パリへ)長い旅に出発した1777年9月23日の、ほんの少し前だったと思われています。このことは、父、レオポルトが、このミサがザルツブルクで初演された旨を、旅立った息子に12月に入ってから出した手紙(この時期にはモーツァルト母子は既にマンハイムにいました)の中で述べていることから、推測されているとのことです。(それによると、初演の日付は12月21日ですから、ずいぶん間があいていますけれど、楽譜を旅先からザルツブルクに送ったという可能性は、そかからは考えられないのでしょうか? なお、レオポルトの該当書簡はベーレンライター版のモーツァルト書簡全集第2巻395の、12月22日付で記されたもので、同書の220頁19行目で演奏された日について言及されています。この言及から、ソプラノの、少なくとも独唱パートはカストラート歌手によって歌われた事実も確認出来ます。また、おなじときに演奏された、恐らくは別の作曲家の手になる晩祷の演奏に際し、オルガンにトラブルがあって、レオポルトの同僚たちがそれをどう乗り切ったかが「悲しいことがあった」と言いながらも面白おかしく描かれており、77年末時点ではまだ、父子間に緊張状態が生まれていないことも、確認出来ます。) 作曲が本当に上記の推測通りの時期になされたのかどうかは、自筆譜が失われてしまっているこんにちでは、検証不可能です。

このミサ曲、「コスト削減」にばかり熱意を注いだ(財政上は間違いなく、当時のザルツブルクでは最重要事だったのですが、やりかたが・・・どこの政治家さんや運営の首脳陣にもありがちですけれど、表面的で小手先にだけ走りがちだったのだと思っていいのでしょうね)ヒエロニムス大司教(コロレド)への皮肉を露骨に示すように、短いミサの中でもとりわけ短い。演奏時間にして20-25分、総小節数484小節足らずです。
で、こんな短い中で、さらに2つの皮肉を演じています。
まずは、本来最長になるはずの"Credo"は、"Gloria"の112小節よりもさらに短い「90小節」。
「どうせ、聴いたって違いが分かるまい」
ってとこだったのでしょうか? 聴いただけでは、確かに気づきにくい。中間部でテンポが落ちるので、演奏時間上はGloriaとさほど変わらないからです。でも、ちゃんと聞くと、この中間部(イエスが十字架に架けられるために生まれたのだということを語る部分)が、いままで作ったミサ曲に比べるとあまりにもアッサリしていることに「何故?」と首をかしげることになるはずです。Allegroに復帰して、フーガで始めるのか、と見せかけながら、それもたった3小節というトリック!
ついで、だめ押しの、もしきちんと「ミサ曲」という物が分かっているなら、明らかにヘンテコなバランスの"Agnus Dei"。これが最長の175小節で、ト短調の25小節の序奏部で "Dona nobis pacem"まで歌い終えてしまっているのに、テンポアップした主部で150小節、延々と"Dona nobis pacem"を繰り返し続ける。コロレドがまともな耳の持ち主だったら、この若造が「コロレドのアホ、バカ、間抜け」
と舌を出しているのを感じ取って、表は役職上平然としていざるを得なかったとしても、胸は怒りに燃えていたことでしょう。
父の方は、そんな息子の皮肉に気づいていたのでしょうか?
先の書簡で直接触れはしていませんが、オルガンのトラブルにまつわる滑稽話を先の書簡で延々と繰り広げているあたりを見ると
「勘づいてたんだろうな」
という気がします。

そんなわけで、編成もヴィオラ抜きの弦楽合奏に通奏低音、アドリブでアルト以下の合唱の補強にトロンボーン、という、編成も曲の長さも非常にコンパクトながら、かつ、耳に聞こえるかぎりでは結構地味でもありながら、非常に「楽しめる」ミサ曲でもあります(不遜ないい方ですけれど)。

Kyrie : 4/4 Allegro 38
Gloria : 3/4 Allegro 112
Credo : 4/4 allegro 90小節、但し28〜40小節の間はAdagio (Et incarnatus est...sepultus est)
Sanctus : 3/4 Allegro comodo 39 (24小節"hosanna"からテンポアップしてpiu allegro)
 ※冒頭部はフーガであることも着目点です。
 ※Benedictusと併せ、Comodoという標語も珍しいものです。
Benedictus : 3/4 Comodo 変ホ長調 54小節"hosanna"からpiu allegro
Agnus Deiは本文中で触れたとおり、序奏部25小節はト短調です(Andante 4/4)。
主部は変ロ長調に復帰、Allegro 2/2

スコアはCarus 40.629/07を参照しました。NMA(新モーツァルト全集)では第1巻に収録されていて、4葉ほどのパート譜(筆者譜)の写真を見ることが出来ます。

CDは、私は昔の全集に入っているケーゲル指揮のもので聴いてみたのですが、時々聞かれる、スコアにないルバートなどはモーツァルトの意図にはそぐわないものだと思いますので、お勧めではありません。Bunchouさんかランスロットさんあたりが、いいものをご存知ではないかしら・・・(人様にふってしまってどうする!)

|

« 東京ムジークフロー第45回定期演奏会(お聴き下さい) | トップページ | シューマンの「訓戒」 »

コメント

こんにちは。
最近はあまりにも暑いので何をするにも億劫になりがちですが、Kenさんはお元気でしょうか。

このミサ曲、あまりにも短すぎですよね。
Credoの短さは確かに皮肉なのかも、と思えなくもないです。
でも音楽的にはとても楽しめる独特なミサ曲だったりするのが
これも皮肉な感じがして面白い!(ちょっとひねくれすぎ?)
何はともあれ、
モーツァルトはこのミサ曲で自分のやりたいように振舞ってみたのだろうと思います。
詳しいことは分かりませんが、一瞬の音色の変化や転調が
このジャンルの他の作品とは一線を画しているように聴こえます。
もしかすると、このあたりの時期のオペラアリアでおける深化と関係があるのかも?

演奏はもちろんペーター・ノイマン!
と言いたいところなのですが、持っていないのです(泣
どうにかして再発売してほしいのですが…。
僕が所有しているのはコレギウム・アウレウムのヘタウマな演奏のみです。

投稿: Bunchou | 2008年7月20日 (日) 11時58分

Bunchouさんにコメントをいただくのは、いつも楽しみです!
またもや、楽しませて頂きました!

そうか、ペーター・ノイマン。。。

中古だと高いだろうなあ。

投稿: ken | 2008年7月20日 (日) 22時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/208675/41912355

この記事へのトラックバック一覧です: モーツァルト:ミサ・ブレヴィス変ロ長調K.275:

« 東京ムジークフロー第45回定期演奏会(お聴き下さい) | トップページ | シューマンの「訓戒」 »