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2008年7月16日 (水)

ベルリンフィル時代のチェリビダッケ(7)

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旧ブログも復旧しました。一部音声ファイルが聞けませんが、記事は全部残っております(いくつか、障害を起こしやすいものだけ削除したり改変を行ないましたが)。大変ご心配をおかけしました。

チェリビダッケのベルリンフィル時代の録音を楽しむのも、とうとう最後の9・10枚目です。

収録作品は、全てロシア作曲家のものです。

9枚目。
1)ショスタコーヴィチ:交響曲第7番

10枚目
2)ショスタコーヴィチ:交響曲第9番
3)プロコフィエフ:「古典交響曲」
4)ストラヴィンスキー:バレエ音楽「カルタ遊び」

プロコフィエフはロシア革命時に亡命してアメリカとフランスを行き来し、ストラヴィンスキーはもともとロシア革命以前から主要な活躍の場はフランス(40年以降はアメリカ)でした。
とくに、ストラヴィンスキーはナチスにあまり好感を持たれていなかった作曲家です。
とはいえ、「カルタ遊び」を作曲した当時は、第1期の前衛的な作風から一転し、「新古典主義」と称する作風に徹した平明な曲作りをしています。
この二人の作曲家については、チェリビダッケは「古典的」な作品を取り上げて録音をしているわけですが、それはヒンデミットの「ドイツに於ける復活」ほどにはインパクトが強くないから、という計算も働いているような印象も与えますし、演奏が伸びやかなことからも、チェリビダッケにとっては「理解しやすい」作品だった、ということもあったのではないかと思います。

こうしたなかで興味深いのは、ショスタコーヴィチの交響曲の選曲です。

まず、第7番は、第二次世界大戦中に、明らかに「反ナチス・反ドイツ・反侵略」の意図をもって書かれた作品で、終戦まではドイツでは絶対に演奏されるはずがなかったものです。これを、ドイツ敗戦の翌1946年には、ベルリンフィルに演奏させ、録音までしている。・・・これには、8枚目に収録したヒンデミット作品に対するのと同じ、チェリビダッケの「ドイツ人に対する内省の強要」的な、悪く言えば「傲慢」とも受け止められかねない頑固さを感じます。演奏自体は、普通のショスタコーヴィチファンなら「なんでこんなに・・・」と思うほど、どちらかというとドイツロマン派風な響きを引き出した、幾分柔らかめの音色で貫かれています。これをどう評価するかは、私の密かに尊敬する、ショスタコーヴィチファン中のファンであるふるたこさんに、ぜひ評価をして頂きたいところです。私はせいぜい、ここに述べたようなことしか言えませんから。

もうひとつが、なお興味深い。
なんと、スターリンに対する強烈な皮肉(ベートーヴェンに匹敵する壮大な第九を政府筋に期待されていたにも関わらず、一見愛想のいい、でもちょっと聴き進めればすぐにわかるほどの<俗っぽすぎるほど俗っぽく、非権威的な>音楽にあふれ、そのうえベートーヴェンの第九が1時間以上かかるのに対して20分ちょっとで終わってしまうという極端な短さ!)が込められた作品なのです。
このショスタコーヴィチの「第九」は、1945年に作曲されたばかりでした。
チェリビダッケは、47年の8月に、この作品を録音しています。
しかも、「諧謔」の特徴を極端に表現するのは、チェリビダッケの得意技でした。
・・・ベルリンが49年に東西分裂したことを考え合わせますと、まさに怖いもの知らずの所行だったことが分かります。



以上で、ベルリンフィル時代のチェリビダッケの録音でCD化され、売り出された10枚を、ひととおり聴いて(みて)来ましたが、まとめると、おおむね次のようなことは言えるのかな、と感じております。

・フルトヴェングラーとカラヤンの確執の犠牲者としてのチェリビダッケ、というのは、ある意味では虚像である。
・人格/性格的な問題は考慮しないまでも、音楽面では以下のことがいえる。
---古典派は、直前の世代のドイツ流を受け継ぎきれず、音楽自体も未消化だった
---ロマン派作品については、しかし、鋭敏な感覚をもっていた。
---ただし、ロマン派作品でも、先人の亜流であることから逃れたいと思っていたのではないか
---結果的に、得意なロマン派でも、まだ自分の感性のオーケストラへの伝達には成功しきっていない
---第二次世界大戦前のドイツでは歓迎されなかったであろう作品を取り上げ、当時の政治情勢に非従順。
---したがって、音楽的未成熟の割に自立心が強すぎたことが、ベルリンでの地位の安定を不可能にした

だいたい、このような具合でしょうか。

それでも、素晴らしいもの、興味深いものを、久しぶりにじっくり聴けて、幸いでした。



明日からはまた、音楽史や、モーツァルトのようなトピックを勉強していきたいと思っております。


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