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2008年7月 9日 (水)

ベルリンフィル時代のチェリビダッケ(2)

しばらく、順番に聴き続けてみましょう。
1枚目は古典派作品でしたが、2枚目は(ベートーヴェンを広義にそう捉えてしまえば)、いわゆる前期ロマン派の作品です。

1)ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第3番
2)ベルリオーズ:「海賊」序曲
3)メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」

すべて、ベルリンフィルとの演奏です。
古典派に比べて、3つの演奏とも、ずっと伸びやかになってはいますが、特筆すべきなのはメンデルスゾーンかもしれません。・・・それは最後に述べます。

「レオノーレ」序曲第3は、1枚目に収録されたハイドンの演奏の延長線上にあるのが明らかです。従って、やはり個性的とは言えません。加えて、序奏部から主部に移る際、主題を非常にゆっくり始め、クレッシェンドの頂点に達したところで同じテーマを倍の早さにまでテンポアップするのですが、これはフルトヴェングラーとクナッパーツブッシュ両方を足して2で割ったような、亜流っぽさを感じさせます。ただ、残りの2曲に通じる「明確な起伏」があります。(なお、マスターの関係ででしょうか、終結部になるとピッチが下がった録音になっています。マスターが新鮮な当時からの技術ミスなのか、長くお蔵入りしていたために伸びてしまったせいなのか、は分かりかねますが・・・おそらく後者でしょう。)

ベルリオーズになると、「おや?」という感触が、少し出て来ます。
チェリビダッケがフランス音楽を案外得意としていたことはDVDに収録されたラヴェルとドビュッシーでの、極めて艶のある演奏からはっきりしますけれど、ベルリオーズの音楽は、同じフランスでも異質です。いや、ベルリオーズ作品は国籍不明だ、と言った方がふさわしいものばかりかもしれません。
これが、イタリア音楽に聞こえるのが、ベルリンフィルを指揮した演奏の面白いところです。R.シュトラウスの「ティル」を指揮した際のリハーサル映像が残っていますが、それを見ていると、この指揮者はルーマニア生まれでドイツべったりの修行をしたにも関わらず、本質的には「イタリアンなんだなあ」という印象を強く受けます。「ティル」の演奏は円熟の境地に達したはじめのころのものと言えるでしょうが、その片鱗が、すでに、ずっと古い「ベルリンフィルとのベルリオーズ」の音に刻印されています。
「あ・かるい」。
およそ、チェリビダッケらしくない。
後年の彼と違うのは、硬質で、輪郭のはっきりした演奏である点で、これは2枚目の3曲中でも異色です。ムーティの青年期の演奏に似ています(ただし、ムーティはチェリビダッケの路線では進みませんでしたし、彼は全く別のかたちで円熟を迎えるでしょう)。

メンデルスゾーンは、これも「室内楽的」な演奏を後年に比べると、メンデルスゾーン作品演奏の常識に比べた時には、そのあまりの分厚さに仰天させられてしまうようなシロモノです。クレンペラーに類似した路線だと言えます。
ですが、骨太で渋いクレンペラーに対して、若いチェリビダッケのメンデルスゾーンは、深い森の緑を思わせてさえくれます。彼の初期演奏の中でも屈指の名演ではないかと思います。
音の幅という面では老成してからほどの広さはありませんが、各声部の線が明確である上に、溶け合うべきところは溶け合う、という、いかにもチェリビダッケらしい特徴は、ここまで聴いて来た6曲のうちでは最も良く出ています。結果として、誰のものでもない、チェリビダッケが監修をし、責任を持ち、成功させた、独自の・・・しかも決して不自然さが無く、想像を絶する圧倒的なチカラで迫ってくる音楽が、この録音には刻印されています。ベルリンフィルとの関係が良好な状態で記録し得た演奏なのではなかろうか、と想像します。

・・・なんだか、こうやって「評論家」みたいに無責任に綴れるっていうのは、一種の快感です。。。
その分、客観的かどうかは自分でも分かりかねて、後ろめたくもあるのですが。

3枚目は、なんと、ブラームスの交響曲が2曲です。4枚目にまでまたがります。
・・・さて、どんなふうでしょうか・・・


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コメント

復活おめでとうございます!旧記事の案内から参りました。

チェリビダッケのベルリオーズそうなんですね。。。トリノのDVDで出ている『幻想交響曲』は50歳頃の録音ですが、「目覚ましく艶やかな」ものを期待していたら、全然そんなことはなくて、「あれ〜」って感じだったのを覚えて居ります。

投稿: sergejO | 2008年7月12日 (土) 13時48分

このあとチャイコフスキーを取り上げますが、特徴こそ違うものの、「スタンス」はベルリオーズに対するものと似ています。このあたり、やはり、彼の「こだわり」がありそうですね。

投稿: ken | 2008年7月13日 (日) 08時20分

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