2009年7月 6日 (月)

モーツァルトのフォルテピアノ:蓮見さん・阿部さん・大井さん演奏曲目関係【2】

Yamatouchiharu蓮見岳人・阿部千春デュオリサイタル
(バロックリュート&バロックヴァイオリン、ケルン在住)、是非お出掛け下さい。
千歳(7月12日)・天理(7月18日)・京都(7月19日)・名古屋(7月21日)静岡(7月22日)・東京(7月23日)です。
総合連絡先:スパティウム・ハルモニエ(電話050-5539-8845、mail:duo@angel.nifty.jp
HP:http://abe.hasumi.de/


〜若き天才作曲家が世に問うた「作品1」〜
《モーツァルト:パリ・ソナタ集 作品1(全六曲)K.301-306》
(護国寺:同仁キリスト教会にて、18時開演)はリンク先(←ここをクリック!)、この演奏会への私の期待については「サヨナラ『古楽』」をご覧下さい。
連絡先:オフィス・アドック(電話:050-5532-5562、mail:office.adhoc@gmail.com
blog:http://ooipiano.exblog.jp/11686543/
吉田美里さんヴァイオリンリサイタル
・7月25日(土)ペンション・モーツァルト (山中湖) 残あり。
※8月22日(土)14:30〜  荻窪:衎芸館(かんげいかん)・・・は満席となりましたそうです!
プログラム等は、こちらをご参照下さい。
実は、蓮見さん阿部さんのデュオコンサートの方には「リュートだけで通奏低音を演奏することによる新鮮さ」という大きな目玉がありますし、その曲目についても、私の僅かな理解から、とくにリュートについてはもっとご紹介しなければならないことがあると思っております。 ですが、これは、あと少しだけご猶予下さい。・・・それでも残念ながら理解は仕切れないのですが。

同じく、理解しているとは到底言えないのですが、昨日、演奏者である大井さんがBS hiに出演することについてお知らせした兼ね合いもあり、阿部さんと大井さんでモーツァルトのソナタを演奏する際に使用されるフォルテピアノのほうについて、もうちょっとだけご紹介をしておきたいと思います。

何度か繰り返して来ましたが、7月25日の阿部さん大井さんの演奏会で使用されるフォルテピアノは「アンドレアス・シュタインモデル」です。

なぜそれが選択されたか、は、きわめて重要です。
なぜなら、こんにち録音で、あるいは実演で、モーツァルト時代の響きを味わってみようとする際に用いられるのは、圧倒的に「ヴァルター型」のフォルテピアノが多いのですけれど、これでは明らかに音色が違うのです。

それをお伝えしたいがために、音色が比べられるサンプルを探しておりましたが、こんなものでどうだろうか、というのを見つけましたので、ちょっとお聴き下さい。「キラキラ星変奏曲」の最初の部分です。

・先に、ヴァルターモデル(1795年原型のものの復元)の音。

Bart van Oort (Briliant 93025)現在入手不可

・上を聴いてから比べてみて下さい。シュタインモデル(1788年の晩年型の復元)の音

Jos van Immerseel (ACCENT ACC 10018)

比べてみる前はヴァルター型もモダンピアノとは違った音に聴こえたかも知れません。
シュタインモデルの音を聴いてから、もう一度ヴァルター型に耳を傾けて下さい。・・・ずいぶんと、モダンピアノと差異が少ないように聴こえてくるはずです。

ここが、ミソです。

モーツァルト自身がヴァルター型のフォルテピアノに出会ったのはウィーン時代(1782)以降であると思われ、この時期、ヴァルター型自身がまだ完成の域には達していなかったと思われます。かつ、のちにベートーヴェンが
「モーツァルトのピアノ奏法は音が切れ過ぎる」
と言ったとされている(ベートーヴェンはレガートを好んだそうです、ロビンズ・ランドン『モーツァルト』石井宏訳、中公新書1103 p.60)ことを考慮すると、ヴァルター型はシュタイン型に比べて、スタカートよりレガートに向いていることは、上の音のサンプルからも明らかです。・・・ということは、ベートーヴェンの証言を考慮すると、シュタイン型こそがモーツァルトのフォルテ作品にはふさわしい、といえるのではないでしょうか?
同じ書に、ハイドンが、ヴァルターのピアノは(値段が高すぎる上に)タッチが重過ぎる、と思っていた旨も記されています(同書p.61)。

モーツァルト自身が、シュタインのピアノを誉めて手紙に綴った文もまた、有名です。
「・・・今はシュタインの方が好きです。というのは・・・音を止めるのが速いからです。強い音を叩いたあと、鍵盤に指をつけたままでも、放しても良いのですが、放せばその瞬間に音は止まります。どんなふうなやり方で鍵に触っても、音は均等に出ます。音は軋まず、強過ぎたり、弱過ぎたり、出なかったりするようなことはありません。要するにいつも同じなのです。」(以下略、同書p.58)



アンドレアス・シュタイン(1728-1792)はアウグスブルクの優れた鍵盤楽器製作者ですが、彼はまず1748-9年頃、大バッハに鍛えられた製作者であるジルバーマンの元で修行し、1751年にオルガン製作社として独立し、以後、クラヴィコード(モーツァルトの父レオポルトはその1台を1763年に購入して7歳のヴォルフガングに弾かせています)、フォルテピアノ製作に手を染めています。彼のメカニカルな知識、それにまさるとも劣らない音楽センスは非常に定評のあるものであったらしく、彼の手になるフォルテピアノの安定した質感はモーツァルトが生涯にわたって愛し続けたものと考えて間違いなく、したがって、モーツァルトの「フォルテピアノ」作品は、ヴァルター型よりもアンドレアス・シュタイン型で演奏されることによって、よりモーツァルトの「アイディア」に近づいた音楽が私たちの耳に届くのである、と、信じて疑いません。

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大井浩明さん、BS hi 出演:8月5日・12日

Yamatouchiharu蓮見岳人・阿部千春デュオリサイタル
(バロックリュート&バロックヴァイオリン、ケルン在住)、是非お出掛け下さい。
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《モーツァルト:パリ・ソナタ集 作品1(全六曲)K.301-306》
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吉田美里さんヴァイオリンリサイタル
・7月25日(土)ペンション・モーツァルト (山中湖) 残あり。
※8月22日(土)14:30〜  荻窪:衎芸館(かんげいかん)・・・は満席となりましたそうです!
プログラム等は、こちらをご参照下さい。

上記コンサートのうち、7月25日に阿部千春さんと「モーツァルト:パリソナタ集」を演奏なさる大井浩明さんが、下記のとおり、BS hiにご出演なさいます。

・8月5日(水)6:00~6:55(BS-hi)
・8月12日(水) 13:00~13:55(BS-hi)に放映(予定)

大井さんは昨年、フォルテピアノによるベートーヴェンのソナタのシリーズ演奏という意欲的な試みをなさっており(segejOさんのブログにおもろい記事が山ほどあり!)、そこに注目されたものです。

スタジオ収録は6月中に完了なさった由。
このあと何度か再放送もされると承っております。
・・・なんと、いまどきBSの見られない我が家。(T_T)
・・・BS入れると私が寝なくなる、というので、家内が導入禁止したのでした。。。
・・・どなたか、録画してみせて下さいますよう、伏してお願い申し上げます!!!

詳しくは大井さんのブログをご参照下さい。

なお、大井さんがクラヴィコードで演奏したバッハ「フーガの技法」は、いまCDでの入手は大変難しくなっていますが、iTunesStoreで入手可能です。

http://www.apple.com/search/ipoditunes/?q=Hiroaki+Ooi+Bach

この作品は、、本来クラヴィコードで演奏されたものであろうことが、研究結果で明らかになっています。
ところが、いまのところ、クラヴィコード演奏盤の録音はまだまだ少なく、かつ、演奏の質が保障出来る点でも希少盤となっております。こちらもお聴き頂ければ幸いに存じます。

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2009年7月 3日 (金)

「運命の力」、ハイドンHob.108:200608TMF定期より

Yamatouchiharu蓮見岳人・阿部千春デュオリサイタル
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〜若き天才作曲家が世に問うた「作品1」〜
《モーツァルト:パリ・ソナタ集 作品1(全六曲)K.301-306》
(護国寺:同仁キリスト教会にて、18時開演)はリンク先(←ここをクリック!)、この演奏会への私の期待については「サヨナラ『古楽』」をご覧下さい。
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吉田美里さんヴァイオリンリサイタル
・7月25日(土)ペンション・モーツァルト (山中湖) 残あり。
※8月22日(土)14:30〜  荻窪:衎芸館(かんげいかん)・・・は満席となりましたそうです!
プログラム等は、こちらをご参照下さい。
・・・ええい! 思い切ってのっけちゃいます! (実情は、タイムスケジュールの組み方に失敗していまして、他のことが綴れません。恥。)

先に、反省点。メンバーへ、ではありましても、結局はすべて自分に返ってくることですから、メンバー各位は
「悪いのはKenだからな!」
と割り切ってお読み頂けますよう、あらかじめお願い申し上げます。(^^;


よかったと思ったところ

・弦は、管とのブレスをだいぶ共有してくれるようになり、進歩だと思っております。

グレートは1週間前の演奏の録音も頂いたので比較確認しましたが
 ※ とくにトランペットに本番なりの「ノリ」があって嬉しゅうございました。
 ※ 表情もずいぶん豊かになりましたが、それでかえって緩んでしまたっところがあります。

・「運命の力」のクラリネット、金管、オーボエ、ハープは、直前までの苦労の甲斐がありましたね!

・どの曲も、弦に関しては弾みを重視して特異な弓付けをしましたので(付点とその後の音符で返す)、私たちの技量では停滞がおきないかと心配しており、ステージリハーサルでは自分だけでも付点のほうを長めに弾くようにしてみましたが、けっこう皆さんなさってくれていたことと、ホールの響きに助けられて、なんとか「流れが止まる」箇所は最少限にとどまりました。心から御礼申し上げます。


全般的な課題(微に入り細にわたると、わけわかんなくなるので。)

・管は長い音符で速く、短い音符で(その人の、特に口の技量によって)遅くなります。
 弦はその逆で、長い音符で遅く、短い音符で速くなります。息してないから。
 カウントは、4/4拍子なら、1拍を16分音符で取る習慣を徹底しましょう。
 それだけで、だいぶしっかり揃うようになります。

・弦の16分音符の不揃いは、左手右手とも問題はありますが、
 基本は右手(弓の使い方)に起因します。
 モダン弓でスチール弦なら、弓のバネは弓先から元までだいぶ均等になっています。
 弦の摩擦の影響も最小です。
 (古い型の弓やガット弦については、私は分かりませんです、すみません。)
 弓のバネがうまく生きるよう、弓はフォルテでもピアノでも柔らかめに保持しましょう。
 で、スピッカートで弾けば、粒が揃うので、音の多少のズレは緩和されます。
 ただ、スピッカートは重め軽めの使い分けが出来ないと、フォルテの部分では音量が不足します。
 このあたりは、ご研究下さい。

・同じく弦、左手の問題。
 ディナミークがピアノになると音程が低くなるのは、無意識に指を寝せてしまうためです。
 フォルテでは同じく無意識に指を立てるので音程があがります。
 で、今程度しかディナミーク差がつけられない状況では、
 耳はフォルテのときの音程で弾いているように「思い込んで」しまいます。
 モダン楽器は保持方法(楽器の持ち方)が安定しています。
 従って、左手に充分体重が乗っていれば、ディナミークの強弱にかかわらず、
 指と弦が接する点が変化せずに済みます。

 楽器を持たないでも出来る練習があります。
 机なりテーブルなりに左腕をべたっと横にします。
 手は指を伸ばさず、指が自然に湾曲しているか、やや内向き(顔の方向)に、
 力が入らずに曲がっている程度にします。
 それを、力を入れないまま、まずはゆっくり、垂直位置まで上げてみてください。
 その間に、手のかたち・・・指のフォームが変化しないようにします。
 慣れてきたら、徐々にスピードを上げ、最後は空手程度のすばやさになるように。

・管は、変人に見えてしまうから嫌かもしれませんが・・・(^^;
 楽器を持たないときに出来る口の練習があります。
 任意の教本に、タンギングのときの「発音」が"t"とか"d"とか"l"とか"r"で書いてあるはずです。
 そのパターンを覚えて、舌突きが適切なスピードになるよう「発音練習」します。
 (アンブシュアは、その際、意識無用です。)
 これで、テンポ感がだいぶしっかりと持てるようになります。

・打楽器・・・すみません、分かりません。(T_T)



個別に「うーん・・・」だったことは、ひとつだけ申し上げます。

ハイドンみたいなものをやるとはっきりしてしまいますが、どうも、大人の音がしませんね。
各位、恋も愛も(これって別々のものヨー!・・・って、強調するまでもないか)、それぞれの型なりに波乱の人生も送ってこられたことと存じます。
技術的な云々以前に、その「心」が、音に反映するようだと、私らアマチュアでも、もーちっとばかしだけでも、深ーい響きになるんじゃないかなあ・・・

以上、余計な前説でした。

それではお待たせいたしました。


ヴェルディとハイドン、お聴き下さい。(モノラルにしてあります。団員さんはMさんから正規CDをお求めになって下さいませ。)・・・アンコール曲は、省略。

ヴェルディ:「運命の力」序曲

ハイドン:シンフォニア Hob.I-108
・第1楽章

・第2楽章

・第3楽章

・第4楽章

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2009年7月 1日 (水)

シューベルト"The Great":200608TMF定期より

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吉田美里さんヴァイオリンリサイタル
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6月28日の定期演奏会記事他にコメントを頂いておりますが、まだお返事しておりません非をお許し下さい。

取り急ぎ、速報盤で録音を頂きましたので、その中からシューベルト「ザ・グレート」のみアップしておきます。

他の曲の仕上がりに関しては言うべきことが多々ありますし、この演奏についてもそうではあろうかと存じますが、とりあえず、そんなあれこれなしに聴いて頂くのもよろしかろう、と思えたのは、当日の後半に取り上げたこの交響曲でしたので、まずはこれのみ。(モノラルにしてあります。)

第1楽章

第2楽章

第3楽章

第4楽章

・・・まあ、こんなもんでございます。
・・・ご批判は、何なりと。。。m(__)m

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2009年6月30日 (火)

ロイスナー「リュート組曲」:蓮見さん・阿部さん・大井さん演奏曲目関係【1】

Yamatouchiharu蓮見岳人・阿部千春デュオリサイタル
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吉田美里さんヴァイオリンリサイタル

・7月25日(土)ペンション・モーツァルト (山中湖)
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※8月22日(土)14:30〜  荻窪:衎芸館(かんげいかん)・・・は満席となりましたそうです!

プログラム等は、こちらをご参照下さい。


ピースフル・コンサート越谷 ’09は、8月5日です。



さて、7月に各地で蓮見岳人さん・阿部千春さんが、そして7月25日には阿部さんと大井浩明さんが演奏する作品について・・・私はキチンと知っているわけではないのですが・・・分かる限りの情報を記して参りたいと存じます。

クラシックのコンサート・リサイタルは「分かり易い曲目アナウンスがない」というクレームを受けることが多くありますが、アナウンスがないのは、クラシック音楽と呼ばれているものが昔からどう演奏されて来たか、という「おかたい」歴史的側面も背景としてあるにはあります。
ですが、よくよくお考え頂ければ、他の種類の音楽のコンサートでも、ファンが夢中になるような「音楽そのものの」コンサートでは、アナウンスなんかなしに、どんどん次の曲が演奏されるのが普通だということにお気づき頂けるでしょう。
・・・クラシックは、プログラムに曲名が書いてあるだけ、まだ親切なんじゃないかな、と、私などは思います。それはレストランのメニューと同じで、「品目」しか載っていません。注文してみて初めてどんなものだか分かる、っていうスリルを味わうのもまた楽し、だと思うのです。事前に通ぶって、同伴者にカッコつけて見せて何かを頼んだら、来たものは想像していたものとは大違いだった・・・というのはコメディの典型的なシーンであったこともありますが、最近では、知らないものを知らないままに楽しむ風潮もだいぶ定着したのではないかと思います。
そう考えると、ここでわざわざ曲のことや作曲者のことをわざわざご紹介するには及ばないのかもしれません。私自身、それぞれの作曲者、とりわけ本日ご紹介しようとしているロイスナーについては、全くと言っていいほど知らなかったし、今なお、大変に浅い事実しか把握をしておりません。

訳書を含め、日本で目に出来る西洋音楽史の書籍の中で、リュートはまだまだきちんとその存在価値や、この楽器をめぐって活躍した人たちについての情報が伝えられていないのが実情です。
最初にロイスナーを取り上げてみようか、と思うに至ったきっかけは、そこにあります。

リュートについての書籍は、古書ですといい本がありそうなのですが、いま出回っていません。
で、それを読むのは断念して、手元の最少限の資料から窺うところでは、バロック期のリュート音楽はフランスが中心地、とみなされているようです。
で、それに「いろんな弦の本数」だとか「いろんな調弦(チューニング)法」だとか、難しい話が、私の持っている薄っぺらな資料にも私の理解を超えるほど綴ってはあります。
そうしたあれこれは、ご興味があったら、日本人のかたのサイトも結構ありそうですから、お調べになって見て下さい、ということで、深入りしません。

蓮見さんご自身のページは http://hasumi.de/lute/ようこそ.html
リュートなどについて詳しく教えて下さっているページ目次は http://www.yamatohasumi.de/mokuji
です。(ご多忙などの事情で「リュート教室」が1章のみなのは残念ですが、これは「楽器を持たずに出来る練習」という部分はフルに綴られており、他の楽器を演奏する人にも大変参考になります。リュートそのものについては記載がないので、あらかじめwikipediaなどで概略を知っておいてもいいかも知れません。大きなお写真で手になさっているのはテオルボという楽器で、通常のリュートは小さい方のお写真でお持ちです。)
蓮見さんはドイツ・オランダ方面でオペラ上演の常連奏者でもあり、ここに記された情報だけでは尽くせないほど博識でもありますが、同時に非常に良識ある音楽家でもいらっしゃいます。

で、楽器そのもののことや技術面のことはさておきまして、ざっとバロック期のリュート音楽の歴史を眺めますと、嚆矢として必ず名前が出てくるのが、ゴーチエおよびムザンジョーというフランス系の音楽家たちです。とくにゴーチエという姓を有する17世紀のリュート音楽家は4人知られているそうですが、私が把握出来たのはピエール(1599〜1638以後)、エヌモン(1575頃〜1651)、ドニ(1600頃〜1672)の3人です。中でもいちばん有名なのはドニ・ゴーチエだとのことです。もうひとりがジャック・ゴーチエ(生没年不詳)というイギリスのリュート音楽家をさすのだとすれば、この人物はフランス出身らしくはあるものの、先の3人とは血縁関係にないことだけは申し上げておかなければなりません。
(なお、フランス・リュート音楽の実質的な嚆矢は、さらに先立つ世代であるアテニヤンだとのことです。)
バロック・リュート音楽の演奏でもっともCDが入手しやすいのは、このあたりの人々の作品を収録したもののようです。

彼らの作品はアルマンド(ドイツ風舞曲)やクーラント、サラバンドといった舞曲を組み合わせたものでして、もともとは吟遊詩人が歌う際に手にしていたこの楽器が、17世紀頃には舞踏の場で活躍するようになっていたことを示しています。ただ、そうしているうちに、一般的な説明では、クラヴサンがどんどん発展したことと、リュートの演奏があまりに懲り過ぎて旋律をおろそかにしたことが相乗作用を起こして、クープラン(フランソワ、1688-1733)がクラヴサン音楽を大成した頃、反比例的に衰退した、とされています。
・・・ほんとうにそうなのかどうかまでを検証するゆとりは、私にはありませんでしたが。使用する弦(ガット)の長さや調弦の自由度が高いリュートの方が、より固定された調律で扱い得るクラヴサンに比べマニアックに使われて行き、だんだんに奏者の養成が難しくなって行ったりした、ということはあったのかなあ、というのが素人推測です。

さて、そうしたフランス勢に対し、ずっと後輩の(ヘンデルの親友でもあり、ドイツの有名な音楽理論家だった)マッテゾンなどは、彼らの(恐らくは)アルペジオを多用した奏法を、音楽を損ねるものだと皮肉ったりしていました。
そんなドイツ勢の中で、光を放っていたのが、ロイスナー(エザイアス、1636〜1679)でした。

今回蓮見さんが演奏する「組曲 ハ短調」は、私は聴いたことのない作品ですが、曲の配列が「アルマンダ(アルマンド)・クーラント・サラバンド・ガヴォット・ジーガ(ジーグ)」と、(ガヴォットは含まれない場合もあるようですが)、典型的な舞曲組曲になっています。
私が耳にしたイ短調の組曲(曲の構成はちょっと異なりますが、やはり同類の組曲です)から察するに、ロイスナーの作品はたしかに、豊かな旋律性をも示していて、リュート音楽としてはより気軽にその味わいを「理解」しながら楽しめるのではないかと思います。

なお、ロイスナーはやはりリュート奏者だったお父さん(1600頃〜1676)と全く同じ名前で、没年だけみると、お父さんの死から3年後には亡くなっています。そんなところからこの人物の人生を知ってみたいという衝動に駆られるのですけれど、Wikipedia上では彼の伝記は日本語版にも英語版にもなく、ドイツ語版に簡単に記されているだけです(http://de.wikipedia.org/wiki/Esaias_Reusner)。そこから確かに分かることは、彼はライプツィヒ大学で教えていた後、残り5年の人生をブランデンブルク伯フリードリヒ・ヴィルヘルムに仕えて過ごしたということだけです。1679年5月1日没、享年43歳。

リュート音楽については、SergejOさんの検索サイトの「検索ワード」に"lute"と入力するとCDで2,000点ほど現れますが、これにはレスピーギの管弦楽曲もかなり含まれます。それでも一挙に探すには便利ですから利用なさってみて下さい。

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